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リモートワークは"働きすぎ改革"になるのか

元PlayStation Worldwide Studiosの会長Shawn Laydenがゲーム産業の"働きすぎ問題"について、今後は改善されなければならないと発言。

毎日オフィスに出勤し、週に80~90時間も働かないとダメ、という働き方は終わった。コロナ禍をきっかけにリモートワークが普及したことで、みんなが自宅でゆっくりとしたペースで働く時代がやってきた、とのこと。

AAAタイトルの「The Last of Us 2」をリモートワークで完成させたのだ。他のゲームスタジオもきっとできるはずとLayden元会長は言う。

いや、ちょっとまって。ラスアスのノーティー・ドックはクランチ文化(ゲーム産業の過酷な追い込み作業)でジャーナリストのJason Schreierにすっぱ抜かれていた企業じゃなかったっけ…。ゆっくりしたペースで働く企業とは真逆の、ハイパー優秀な社員が死ぬまで働いて傑作ゲームを創り出すことが評判だったでしょう…。

"我々は仕事との向き合い方を見直さなければならない。どうすれば長時間労働に陥ることなく、もっとスマートに仕事を終わらせられるのか。様々な産業に共通の課題だが、ゲーム産業は特に"

と言うコメントに至っては、Layden元会長によるWorld Studio社員たちに向けた「正直今まですまんかった」という自省にも見えてくる。


リモートワークが生産性をあげるわけではない


CEDECが毎年行っているゲーム開発者調査で、在宅勤務(リモートワーク)に関するアンケートが行われた。

その結果を見ると、開発者の多くが在宅勤務に満足しているという結果になった(大いに満足しているは29.5%、満足しているは47.4%) 。従業員目線では、リモートワークは大いに受け入れられている。

エンターテイメント産業でいえば、ドワンゴでは2020年7月から原則在宅勤務となるそうだ。リモートワークになって業務も効率化したとのこと。Slackがあれだけ浸透している企業であれば、オフィスだろうがリモートだろうが業務もあまり変わらないだろうなと思う。

とはいえ、企業目線だとリモートワークは生産性が落ちるという結論に至る企業が多く、サイコネの松山さんもリモートワークはやっぱり難しいという結論をnoteに書いていた。社員の満足度と客観的にみた評価が違うというのは往々にしてあるだろう。

細かい雑談ができないので会話の往復に時間がかかる」、「みんなで集まってアイデアを出そうみたいなことがしづらい」、「従業員の中でチャットで会話するという能力に差異があり、それは短時間では補えない」といったところが生産性を阻害している原因だろうか。

リモートワークでは必須になるグループチャットについても、慣れれば慣れるほどこれってそんなに良いものでもないな…とも思う。

Basecampが公開しているポリシーを読むと、いかにグループチャットが面倒であるかを思い知らされるのだ。グループチャットの良いところは4個しかなくて、悪いところは17個もある。

疲れる」「すぐ返信しろの強要が疲れる」「何か見逃していないか不安になる」「読んでない奴が悪いという空気」「改行毎に送信するやつの通知がうざい」など。

さらにSlack、LINE、ディスコ、Chatworkなど複数のサービスを併用するとなったら地獄度は幾何級数的に上がる。


リモートワークは働きすぎを改善はしない


個人的に会社をやめてフリーランスになり、オフィスがないので完全な自宅勤務。コロナ禍によって会議もリモートになり、完全引きこもり生活ができるようになった。

引きこもり体質で、仕事が全然嫌いじゃない、という身からすればリモートワークな自宅勤務は全く苦ではない。朝何時まで寝ていても問題ないし、疲れたら遊べばいいし、好きな時間にメシを食べて、寝て、また仕事をすれば良い。

そもそも自分がお金をもらってやっていることが仕事という自覚があまりない。自分はエンターテイメント産業で仕事がしたいと思って転職して今そこで働けているので、好きなことで飯を食べているタイプの人間である。

しかし、世の中の大半の人にとってはやりたい仕事をやっているわけではなく、仕事は金のためと割り切っている人がほとんどだろう

そういう人にとっては、自宅というプライベート空間で仕事をするのは苦痛でしかない(たぶん)

仕事とプライベートを一体化する働き方、というのは令和時代の先進的な考え方かもしれないが、それはイコール、プライベートをなくしていつ何時でも仕事ができるような生活スタイルに切り替えるということでもある。

そしていつでも仕事ができるということは、仕事の量は減るのではなく増えるのだ。そもそもリモートワークができるホワイトカラーの仕事に明確な終わりなんてものがないのだから。

リモートワークは働きかたを変えるものではあるけれど、働きすぎを変えるものではない。リモートワークをやらざるを得ないという状況(家族のこととか、身体的なこととか、外部要因を含め)は別として、ホワイトカラーは全員リモートワーク!っていうことにはならないだろう。

やむを得ない人と、仕事がやりたくて仕方ない人はリモートワークで、くらいが丁度良い。

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ノーティードックの社員は果たしてリモートワークになってクランチ文化から解放されるのだろうか。

ゲーマーがSNSで声を上げる度にアップデート対応しないといけないという文化が無くならない限りは、ゆっくりとしたペースで働く時代が来るのは先になりそうだけれど。

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