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無料で遊べるゲームが当たり前にならないように

コンサル会社Deloitteが毎年「Digital Media Trends report」というレポートを出していて、そこでコロナ流行後にアメリカのエンターテイメント消費がどのように変化したのかということを分析している

暇つぶしにサブスクを始める人と、経済的に苦しくなってキャンセルする人の両極に分かれたそうだ。とりあえず試してみる→辞めるというプロセスの速度が速まり、「本当に継続する価値があるの?」というシビアな評価が行われるようになった。

あらゆるエンターテイメント消費が増加傾向にある中で、ビデオゲームのプレイ時間、またゲーム関連コンテンツの視聴時間も大幅に伸びた。若い年代ほどその傾向が強い。

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引用元: 同レポート

コロナ禍の自粛によって娯楽の選択肢が限られた人々が家でも遊べるゲームに手を出し始めたという事実は想像に難くない。今年1年を見通せば、次世代コンソール機発売を控えており、ハード・ソフトの売上共に大幅に伸びるだろうし、その余波はしばらく続く。Switchの生産が8月に回復するというニュースもあって、コンソール市場はしばらく元気だろう。

少し気になっているのはモバイルゲームプレイヤーの伸びだ。Newzooは2020年モバイルゲーム市場規模は770億ドルと予測していて、昨対で13.3%の伸びを見せている。これまでは中国がモバイルゲーム市場をけん引してきたが、成長エンジンは南米や東南アジアといった新規スマホ保有者の獲得が見込める地域へと移りつつある。

これ自体は全く悪い話ではないし、デバイスを問わずゲームプレイヤーが増えることは望ましい。ただ、コロナ禍で経済的に苦しくなった結果、多くの人がF2Pゲームやハイパーカジュアルゲームのように完全無料のゲームを遊ぶようになり、「ゲームは無料で遊ぶもの」という商習慣が常態化すると危険だと思う。

無料のゲームは、多額のマーケティング予算と膨大なユーザーベースに占める数パーセントの課金者によって支えられているわけで、小さなゲーム企業では無料型のビジネスモデルでは充分な収益を得られない。(ハイパーカジュアルゲームも今では初期のマーケティング予算の規模に依存するようになってきた)

小さなゲーム企業が少ない人数で何年もかけた作った有料ゲームが、大企業がつくる無料ゲームと戦うとなれば、ユーザーは大企業の無料ゲームを遊ぶに決まっているわけだ。無料の力は絶大である。

モバイルゲームの多く、そしてAAA規模のタイトルがF2Pに軸足をうつすと、少ない予算でも面白いゲームを作りたいという企業が生態系から駆逐されていくのではないだろうか。ユーザーが悪気なく、コストパフォーマンスによってゲームを選ぶようになれば、みんなが無料ゲームに行きついてしまう。

ビデオゲームはエンターテイメントであり、文化である。多様なジャンルのゲームがあってしかるべきだ。大資本によってサービス化したゲームがユーザーを根こそぎとっていき、文化が枯れていくのは忍びない

大資本がつくったAAAゲーム、F2Pゲームは文句なく面白い。でも、それだけじゃないゲーム業界がこれからも続きますように。

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