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THE FIRSTの育成プログラムには、人事担当者が学ぶべき4つのポイントがあった(理論や具体事例を交えながら)

「THE FIRST」とは、AAA(トリプル・エー)の日高 光啓さん(ソロのアーティストネームは「SKY-HI」)が代表取締役社長を務めるマネジメント/レーベル「BMSG」が主催をする、ボーイズグループオーディションです。

8/13(金)にメンバーが発表され、7人組ボーイズグループ「BE:FIRST」としてデビューが決まりました。

先日以下の記事を書いたところ、たくさんの元ザスト民・現BESTYの方々に読んでいただきました。

noteに300以上のいいねをいただけたのは嬉しいものの、まだTHE FIRST/BE:FIRSTの素晴らしさを知らない人たちまでは届いていない感があります。NiZi Project以上の社会現象になって欲しいし、絶対になるべきプロジェクトなので、違った角度の記事を書いて、自分なりに応援していきます。

と言うことで、今回はビジネスマンに刺しにいくために、「人事」の観点から、ガチガチの考察をしてみようと思います。

THE FIRSTの育成プログラムには、人事担当者が学ぶべき4つのポイントがあった(理論や具体事例を交えながら)

BE:FIRSTのデビューメンバー発表時に、日高さんより以下のような発言がありました。

ずっと育成プログラムだって言い続けてきたけど、あなたのおかげで俺は胸を張って言えると思います。THE FIRSTという育成プログラムを俺は成功させたということを・・・
引用:hulu THE FIRST -BMSG Audition 2021- #20より

この発言は、ダンス/歌唱未経験でデビューが決まったジュノンくんという方に向けた日高さんの発言です。

ジュノンくんは、歌唱こそオーディション初期から素晴らしい歌声だったものの、ダンスについてはまったくの初心者で、その時点では、少なくとも僕は、プロとしてデビューしている姿はイメージできませんでした。

他にも、同じくダンス/歌唱未経験で最終審査まで残り驚異的なパフォーマンスを発揮し続けたレイちゃん、異なる価値観を持った人との関わり方を学んでいった14歳のリュウヘイくん、他者との衝突を経て他者・チームを尊重するスタンスを持つようになったリョウキくんなど、オーディションを通じて目覚ましい変化を遂げていった方々がいます。

多くの企業では、主に研修を用いて「人材育成」の取り組みを行なっています。しかし、数ヶ月の間に「人が変わる」ような価値提供ができるような育成プログラムはなかなかありません

もちろん、対象者が未成年を含む若年層だったこと、育成プログラムに参加した方々の元々のモチベーションの高さ、育成だけに振り切ったリソース配分(一般的な企業の場合、育成もしつつ、通常業務も行うため)、テレビや動画サイトに配信されるという特異なシチュエーションなど、いくつか異なった前提条件がありますが、それでも依然として、THE FIRSTの育成プログラムから学ぶべきものはとても多かったです。

今回は、人事コンサルタントとして働いている人間視点から、人材育成に関わる理論や、人事界隈のトレンドであるトピックなど4つの観点で、THE FIRSTという育成プログラムについて考えてみます。

1. 経験学習モデル

経験学習モデルとは、経験を学びに変換するプロセスとして、具体的経験・内省的観察・抽象的概念化・能動的実験の4つのプロセスをサイクル化したものです。僕の大好きな料理を例にとって図でまとめるとこんな感じ。

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経験学習のサイクルをより効率的に回していくためには、一緒にサイクルを回してくれる「人」が重要です。

具体的な経験の機会を与えてくれる
内省(振り返り)を促してくれる
教訓(気づき)を引き出すサポートをしてくれる
実験(次のアクション)を応援/伴走してくれる

こんな人がそばにいることで、人は学び、成長をしていくことができます。

このプログラムでは、この役割をまさに日高さんが担っていました。

具体的経験:各審査で課題/基礎トレーニング/専門トレーニングの機会を与える

内省的観察:メンバー同士/メンバーと日高さんで課題曲の制作を通じて話し合いの機会を多く取る

抽象的概念化:日高さんがそれぞれの参加者と個別で面談を行い、気づきや個人の課題を引き出す

能動的実験:次の審査でそれぞれにとって少し難易度の高い課題を与える

日高さんが常にメンバーに敬意を持ち、彼らの成長を誰よりも、本人たちよりも、信じて伴走し続けたことが、この育成プログラムが成功した一番の要因だと考えています。

そして、このサイクルを回していくことができたその他の要素3つを以下で詳しく説明していきます。

2. コーチング

コーチングには、以下のようにいろんな定義があります。

コーチングを「目標達成に必要な知識、スキル、ツールが何であるかを棚卸しし、それをテーラーメイド(個別対応)で備えさせるプロセスである」と定義しています。つまり、コーチングとは「自発的行動を促進するコミュニケーション」です。
ー 株式会社コーチ・エイ
「答えはその人の中にある」という原則のもと、相手が状況に応じて自ら考え、行動した実感から学ぶことを支援し、相手が本来持っている力や可能性を最大限に発揮できるようサポートするためのコミュニケーション技術
ー  一般社団法人日本コーチ連盟

一般的には、スポーツにおける「コーチ」がイメージしやすいですが、「ティーチング」「カウンセリング」「コンサルティング」と対比して、以下のように整理してみます。

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コーチングとは、誰かが抱えている課題に対して、「問い(質問)」をベースに解決のお手伝いをする会話技術、と思っていただけると良いと思います。

以下の動画は、「合宿擬似プロ審査」という、6名ずつ2つのチームに分かれ、プロが作ったそれぞれ異なる2つの楽曲と振り付けをプロフェッショナルに歌いこなし、配信リリースまでおこなう審査の1シーンです。

12名のうち2名はどちらの楽曲を担当するかは指定されていたものの、他の10名に関しては、まずは本人たちにどちらの楽曲をやりたいかを聞くところからスタートしました。

日高さんは、主に以下3つの質問を投げかけます。

・どちらの曲をやりたいのか?
・曲のどのパートを歌いたいのか?
・なぜやりたいのか?

「審査」だけが目的なのであれば、選考する側が見たいポイントから逆算して楽曲を決めた方が効率的ですが、「育成」という観点で見ると、本人に考えさせる機会と意思決定する機会を与えることはとてもインパクトがあります。しかも、10〜20歳年下で、経験値もバラバラな参加者に対して、漏れなく本人たちの希望を聞くことからスタートしていたことに、日高さんがいかに参加者一人ひとりを信じているかが伝わりました。

コーチングの基礎は「信頼」です。日高さんが、一人ひとりを信頼しているからこそ、参加者はその信頼に答えようと、自ら考えて、自ら行動をしていく様子が見受けられました。

3. 対話

対話に関しては、上記二つと比べると分かりやすいと思いますが、話すことに関連した言葉である「議論」と「雑談」と比較して整理してみます。

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対話とは、何かしらのテーマについて、自由な雰囲気での話し合いを通じて、相互理解を深める時間のことを言います。

THE FIRSTでは、日高さんとボーイズ、または、ボーイズ同士で「対話」の時間が多く取られます。

以下の動画は、「合宿クリエイティブ審査」という、オーディション参加者が5人チームを組み、自分たちで作詞・作曲・振り付けを行う審査の1シーンです。

A、B、Cの3チームに別れましたが、Team AとTeam Cは、それぞれ途中で多少の波はあったものの、素晴らしいチームワークで順調に進んで行きました。しかし、Team Bは、なかなかうまくチームワークが発揮できず、発表直前もチームメンバー同士で言い争いになってしまうようなチームでした。

審査の途中で、その時点での制作物を日高さんに発表&フィードバックをもらう機会(プリプロ)がありました。Team Bは二度目のプリプロで、日高さんから「チーム全員で良いものを作る意識が欠けており、期日までに課題を発表することが目的になっている」という趣旨の指摘を受けます。

最年少のリュウヘイくんが楽曲制作に関わり切れていなかったり、楽曲制作経験のあるシュンスケくんがリーダーシップを発揮できていなかったりと、各々の良さが発揮できていないことを制作物を見て見抜きました。(これ、すごい笑)

ここで、各メンバーと個別で面談を行います。現状に対して思っていること、問題に対する解決方法のアドバイスについて対話を行いました。この対話を通じて、Team Bの関係性に変化が生まれました。(が、この後、もう一山あるんですが・・・笑)

また、合宿最終審査の課題曲「To The First」の練習過程のおいて、全体のダンスを考えているソウタくんという参加者から、メンバーの一人ひとりの想いを作品に落とし込むことを目的にした対話の機会も、ぜひ見て欲しいです。これを提案したソウタくん、本当に素晴らしい。(ザスト民的な勘では、レオくんあたりも企画の段階から関わってる気がする)

4. ストレッチアサインメント

ストレッチアサインメントは、現在の本人の力量より難易度の高い仕事を割り当てることを指し、能力開発のひとつの手法として人材育成の分野で広く知られています。

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育成対象者に対して、「ちょうど良い」ところから、ちょっと厳しめの仕事や課題にチャレンジしてもらうことで、徐々にレベルアップしてもらう取り組みと考えてもらうと良いと思います。

THE FIRSTでは、三次審査以降では、各選考ステップで特定の課題が出され、決められた期日までに制作・練習を行い、最終日にダンス・歌唱のパフォーマンスを行う、という流れで進んでいきます。どの審査も各々にとっては難易度の高いものになっているのですが、徐々にレベルが上がっていきます。(もし歌が好きな人であれば、合宿審査で使用された「Be Free」「Move On」を歌った後に、最終審査で使用されたプレデビュー曲「Shining One」を歌ってみていただければ、難易度が上がってることがよく分かるはず)

以下の動画は、「Move On」という楽曲のパフォーマンスを、プロの振付師の方々が踊っている動画を見ているシーンです。日高さんより、難易度を上げて欲しい、とのオーダーが入ります。

また、この振り付けを作った方(s**t kingzのkazukiさん)のYoutubeでも、この振り付けがいかに難しいものだったか、という話をしています。

別の審査では、「このような課題を出すのは非人道的なのではないか?」と日高さんが自身の葛藤を吐露しているシーンもありましたが、成長をするためにちょうど良い難易度(と、言っても本人たちからしたら激ムズ)の課題を出すのは、主催者としてはずっと頭を悩ませていたはずです。

それができたのは、日高さんが「対話」の機会を多く取り、参加者一人ひとりの特性を理解してたからだと思います。

最後に・・・

最近車を買ったんですが、THE FIRSTで使われてた音楽一覧プレイリスト(Beatiful Now、BACK TO BACK、もうええわ、ナナイロホリデーとか)を作成して、車中で奥さんと歌いまくってるくらいにはTHE FIRST好きです笑

冒頭にも記載しましたが、所感として、まだファン層の爆発的な広がりが感じられていないのが個人的にはとても悲しいです。(NiZi Projectと比較して)

一本書くのにかなりエネルギー使うので量産できない気がしますが笑、この記事でもし反響があったら他の切り口でTHE FIRSTをプッシュする記事を書いてみよう!

(おまけ)自己紹介

私の本業ですが、人事まわりの様々な支援をする仕事をしています。

最近は未経験から人事を目指したい方のキャリアサポートに関わっていることが多く、LINEで転職相談にのったり、このnoteでは、人事の方々にインタビューする記事を書いたりしています。


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