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山を見る

ぼくが今住んでいる町には「山見」という習慣があるらしい。
(正確に言うと「あった」。残念ながら今は廃れてしまったそうだけど)

この町は山あいにある。
町のすぐ裏手にはそれほど高くはないけれど、たくさんの山がある。

旧暦の2月末、今の暦だと4月の半ばから下旬あたり。
その頃になると「山見」というのをするらしい。
「花見」ではなく、「山見」。
4月というと全国的には春で花が咲いているころだけれど、この東北の町で花が咲くのはもう数週間後だ。
山に登っても花は咲いていないし、まだ草も芽吹いていない。
けれどその時がくると、平日であっても家族総出で「山見」に出かけるのだそうだ。

面白いのは、この地区はあの山、あの地区はこの山、と地区ごとで登る山が決まっていること。
時期はちょうど農作業が始まる直前で、冬のたくわえを尽くした頃。
その「山見」の日は、町のほとんどの人がご馳走を仕立ててそれぞれの地区の山に登り、どんちゃん騒ぎをするらしい。
それはただ宴会をするためではない。
その年の五穀豊穣を願う神事なのだそう。
たぶん、ご馳走も人が飲み食いするというより神に捧げる、というものだったのではないか。

長かった冬が明け、農作業が始まる前。
地区の人みながそれぞれの地域の山に登り、その年の恵みを祈る。
本当に自然とともに生きていることがわかる行事だ。

皆さまのご厚意が宇宙開発の促進につながることはたぶんないでしょうが、私の記事作成意欲促進に一助をいただけますと幸いでございます。