見出し画像

数学や理科を勉強する理由

解答用紙はあなたのこれからの人生。

正解

突然ですが、RADWIMPSの正解という曲をご存知でしょうか?

あぁ 答えがある問いばかりを
教わってきたよ そのせいだろうか
僕たちが知りたかったのは
いつも正解などまだ銀河にもない

一番大切な君と 仲直りの仕方
大好きなあの子の 心の振り向かせ方
なに一つ見えない 僕らの未来だから
答えがすでにある 問いなんかに用などはない

RADWIMPS『正解』

卒業式で歌われることが多いでしょうか。とても素敵な歌ですよね。

ところで、なせ私たちは答えがある問いばかりを教わってきたのでしょうか。生きていくのに必要なのはせいぜい四則演算程度で、多くの人は微積分など必要ないはずです。『こんなこと何の役に立つんだ』と思いながら高校時代を過ごした方も少なくないと思います。一体、大人たちは答えがある問いを通して私たちに何を身につけさせたかったのでしょうか。

なぜかわいい女の子だけが先生に贔屓されるのか

中学生のとき、怖い体育の先生に贔屓されている女の子がいました。私は『なぜあの子だけ、、、どうせかわいいからだろう』と思っていたのですが、ふと周りを見ると、顔はかわいいにも関わらず、先生に気に入られていない女の子がいました。そこで、私は「顔がかわいいから先生に気に入られるわけではない」ということに気づきます。そして次に仲のいい、いつも笑顔でいる男友達が先生に気に入られているところを目にしました。そこで私は初めて「愛想が良いから気に入られていたんだ」ということに気がついたのでした。

正解を見つける方法とは

経済学や哲学、政治などの分野で多岐にわたる功績を残したJ.S. ミル(1806-73)は、セント・アンドルーズ大学長に就任したときのスピーチで次のように述べています。

真理が発見される筋道は二通りしかありません。つまり、観察と推論です。

(J.S. ミル 1867, p.64)

私が「愛想が良いから気に入られる」ということに気がつけたのは、仮説を立てて推論したからです。その仮説は間違っていましたが、最終的には恐らく正しいであろう結論を得ています。このように、仮説を立てて推論を行うことで初めてそこにある本質が分かります。

かつて『地球にあるものは落ち、宇宙にあるものは浮く。そしてその境界が地球と宇宙とのあいだに存在する』と考えられていました。それに意義を唱えたのがニュートンです。ニュートンは『リンゴに働いている力と同じ力が月にも働いている』と考えました。それが実際に正しいのは、皆さんも既に知っている通りです。ニュートンは、月が落ちているということだけでなく、推論によって真理を発見する方法があるということを私たちに教えてくれました。

科学教育の意義

ミルは科学教育について次のように述べています。

観察と推論の仕方を学ぶ最善の方法とは一体何でしょうか。それは、過去において観察と推論が真理発見の成功を修めた事例を示すことです。推論と観察という、真理が獲得されるこれら二つの過程が、我々の知りうる最高度の完成の域にまで到達したのは、自然科学の領域においてです。(中略)自然科学は、もっとも完成された思考形式をわれわれに与えてくれます。

(J.S. ミル 1867, p.64)

科学は思考法です。したがって、科学を学ぶということは、思考法を学ぶということです。大人たちは、私たちに微積分ができるようになって欲しかったのではなく、答えを導き出すための考え方を、数学や理科を通して学んで欲しかったのです。量子力学や相対性理論を知ることは、科学教育の効用のほんの一部に過ぎません。

私は自分なりの正解を見つけていきたいと願っています。おそらく皆さんも同じ考えなのではないでしょうか。効率のいい勉強法は何か。選挙で誰に投票すればいいのか。理想の結婚相手はどんな人なのか。自分が本当にしたいこととは何か。そのようなとき、科学はきっと私たちを助けてくれるはずです。是非liberal arts(一般教養)として科学を勉強されてみてください。科学がきっと皆さんを自由にしてくれるはずです。


参考文献
J.S. ミル(2011)『大学教育について』. 竹内一誠(訳). 岩波文庫.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?