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ベンチから見た景色。

私は高校時代、野球部のマネージャーという傍から見ると青春の模範解答のようなことをしていた。

しかし現実はそんなに優しくない。キラキラしたイメージのマネージャー、実際は汗くさく泥まみれな仕事が多い。ボールの修繕、アイシングの準備、球出し、試合のスコアつけに球場アナウンス。汗まみれの洗濯物にご飯40合を1時間でおむすびにしていく食トレの準備。お礼を言ってくれる部員なんて限られていて、大半はやってもらって当たり前、といった態度でものを申し付けてくる。

部員とは喧嘩もしたし、何度もやめようと思った。土日は無く、放課後もない。3年前までそんな日々を平然と送っていた自分が今では信じられない。

でも何だかんだ私は3年間マネージャーを続けた。

キラキラなんてしてなかったし、きついことの方が多かった気もするけど、私はマネージャーを続けた。

性に合っていたのだろうか。

ただ、部員が成長していく姿を見るのは確実に楽しかった。

1年が初めてバッティングをさせてもらった日、バットにボールが一球も当たらなかった奴が3年の夏、4番を打っていた。1年の時、細すぎて疲労骨折をしまくってた奴が必死に体を作って、いつの間にかファーストのレギュラーを勝ち取っていた。最初の頃は人に感謝の気持ちも伝えられないような奴が、最後の夏に私を号泣させるほどの言葉をくれた。

マネージャーは、そんな彼らの青春を1番近くで見ることが出来る最高のポジションだった。

3年間、彼らの事を私は、ずっとベンチから見てきた。マネージャーの私が彼らの隣に立つことは無い。少し後ろに立って支えることしか出来ない。挫けている奴の隣でプレーでそいつを励ますことも無い。焦るピッチャーを自分の一振で安心させてあげることも出来ない。

少し後ろから馬鹿みたいに大きな声で応援して、夢を託して、最後の夏、少し後ろで一緒に泣く事しか出来なかった。

それでも、私にとってあの3年間で見続けたベンチからの景色は、一生の宝物だ。

きついことが多かったけど、何だかんだ耐えられたくらい素敵なポジションだった。

あっ、あいつ落ち込んでるやん。あっ、あいつめっちゃ嬉しそうやん。隣には立てなかったけどその分みんなの顔を見てきたから、誰より彼らの変化に気づけた。まるで私だけの劇場だった。

そんな素敵な景色の存在に気づくことができる人が、これからもっと増えて欲しいと思う。

もちろん野球だけではなく、他のスポーツでもそれを支える人、応援する人には、その人たちにだけ見える景色があることをもっともっと色んな人に気づいて欲しい。

そしてその景色を大切にして欲しい。

今、新型コロナウイルスの影響で様々な大会が中止になっている。最後の大会が中止になり、やり場の無い気持ちを抱えたままフィールドを去ることになった人もいるだろう。高校野球もこれから、どうなっていくのかとても心配である。少しでも早く事態が収束しする事を願いながら私は今日、初めてこのnoteに文字を綴った。

これから先、あの最高の景色を見られない人が増えませんように。

#応援したいスポーツ