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怖い話 ※実話

これは実際にあった話。


それまでにも、奇妙な現象というのは身の回りで起こってはいたが、全て幻想だと言われてしまえば、“そうかもしれない”の一言で終わってしまう程度の出来事ばかり。

例えば、夜中に目が覚めると足元にぼやっと白い女性が立っていて、その翌日の夜中も息苦しくて目を開けると、今度は私の首元にその女性が立ってこちらを見下ろしていた事があった。
あの時は、一瞬驚きはしたけど、眠気が勝っていた上に、白いから大丈夫だという考えでまたすぐに眠りについた。


また、8月のお盆に、親族で集まって夕食をしながら亡くなった曽祖母の話をしていた時。
23時を過ぎたあたりで、誰もいないはずの廊下から、こちらへ近寄ってくる3歩の足音を聞いたこともあった。
これに関しては、同い年のいとこと私だけが耳にして、後の親族は気づかなかったらしい。
その後すぐお盆用の飾りが落ちた事には、まぁまぁ驚いたりもした。


で、今回話したいのは、まぁまぁ怖さに耐久のある私が、背筋の凍る思いをした出来事。




あの日は、5.6年程前の4月半ば。


仲のいい友人と、夜桜を見に行こうという話になり、桜が見所にもなっていた温泉街へ車で向かった。
現地に着いたのは、21時半を過ぎたころ。


ライトアップされた桜がとても綺麗で、ひらひらと落ちる花びらに、2人で夢中になっていた。
あたりには人がたくさんいて、みんなもその情景を楽しんでいる様子だった。


美しい温泉街を一周し終え、23時半頃だったか、他の場所の夜桜を見に行こうという話になった。
車を走らせて向かった、とある土手の桜並木道。
近くに車を止めて、徒歩で土手を登った。

着いた時にはライトアップが終了していたが、月明かりだけで十分辺りは見えていた。


歩く道の両サイドに桜の木があり、その光景を、桜のトンネルのようだと友人とはしゃいだ。

人気のないその1本道を、まっすぐ歩いていた時。
初めに気づいたのは私の方だった。

前方の少し遠くに、一定間隔に揺れるものを見つけた。同じ振り幅で、揺れ続けるもの。


…ブランコ?

遠くてよく見えない上に、この場所にくるのは初めてだったから、そこに何があるのかはわからなかった。


ただ、風は全く吹いていない。
考えれば考える程、ブランコとしか思えなかった。


そっか、誰か遊んでるんだ。
私達みたいに。


友人に誰かいる事を伝え、声のボリュームを落とすように伝えた。
私が指差す先のブランコのように揺れるものを見て、なんだろうね、と友人も不思議に思ったみたいだが、それよりも桜の方が気になるようだった。


そのまま夜桜の鑑賞を歩きながら続け、ブランコのようなものを気にしていた私。
注目していたその場所が、だんだんはっきり見えてきた。


あ、小さい女の子が座ってる。
やっぱりブランコなんだ。

女の子は、私からみて左側(土手の川側)へ顔を向けてブランコに座っていた。

視力検査で1番下の列まで当てられるから、視力には自信がある。

推定、6.7歳くらい。小学1.2年生くらいの印象だった。
女の子はおかっぱの髪型で、下半身が赤く見えるから赤いズボンを履いているのだろう。まるでまるこちゃんだ、って呑気にそう思った。



ただ、あんなに小さな子が1人でいるわけないから、ブランコの周りには大人がいるだろうと、目を凝らした。


…え?

背筋が凍った。

これまでにこんな思いをしたことはない。
これが、背筋が凍るという状態か、って冷静にも思った。


「ちょっと待って」

そのひとことだけ言って私は足を止めた。
友達は、え、どうした?って。

「今、何時?」
ブランコから目を離さずに友達に聞いた。

「えーっとね、2時半前だよー」

そうか。それはヤバイかもしれない

ブランコに乗っている小さな女の子の周りには、誰もいない。

こんな時間に、その状況はおかしい。


「ブランコ。女の子座ってる」

「あーほんとだー」

友達にも見えるみたいだ。


「周り、誰もいないよ」

私のその言葉に、それまで夜桜を楽しんでいた友達が手を繋いできた。
「…え」

ポツポツと雨が降ってきた。


それからはもう、早く車に戻らなきゃって思いしかなかった。

友達と手を繋いで、くるりと反対方向へ向き直すと、後ろを振り返ることなく早足で来た道を戻った。

走って逃げる事は出来なかった。
気づかれたら追ってきそうな気がして。

車に戻るとすぐその場を離れた。


その後は、2人で強くなった雨を見ながら、コンビニの駐車場で朝を待った。
お互いに、別れて1人で車で帰るのが怖かったから。

後日、その場を知っている人に聞くと、確かにブランコはあるらしい。


あれはなんだったんだろうと、今でも思う。


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