「腕時計を贈る」
シナセン課題⑥ケンカまたはラブシーン
私は欲張りなので。
人物
・横峰市香(27)会社員
・夏目千昭(27)探偵調査員
・花本詩織(27)フローリスト
ちなみにこの話に上記の職業は何ら関係ない。過去の物語のサイドストーリーだと思ってもらいたい。
○百貨店4階・腕時計専門店
横峰市香(27)が小さな紙袋を受け取る。
店員の声「お相手が羨ましいです」
市香「(照れた笑みで)喜んでもらえるといいんですけど」
○百貨店5階・カフェブース内
夏目千昭(27)と花本詩織(27)が向かい合って座っている。
詩織「それでね、やっと付き合うことになったの」
夏目「良かったな。それにしてもよく想い続けられたよなぁ」
詩織「(満面の笑みで)うん、あの人がよかったから」
○百貨店4階・エスカレーター
上りのエスカレーターに乗る市香。
○百貨店5階・カフェブース外の通路
夏目の声「好きだよ、当たり前だろ」
市香、歩いていた足を止める。
ガラス窓の奥に見える、夏目と詩織が笑い合う姿。
紙袋を握りしめる市香の手元。
○市香のアパート・寝室(夜)
薄暗い部屋の中。7時半を針指す時計。
3回のノック音の後、開く扉。
夏目「市香?…具合でも悪いの?」
ベッドで布団にもぐる市香。
夏目「ねぇ、市香」
市香の声「こないで」
夏目「…なんで?」
市香の声「(震えた声で)…嫌い」
夏目の傷ついた顔。
夏目「っ…どうして?」
市香の声「もう、いや。別れる!」
夏目「なんでだよ!」
無理やり布団を引き剥がす夏目。
市香が潤んだ目で夏目を睨む。
市香「あの人っ、誰なのよ!」
目を丸くする夏目。
市香「見たんだからっ!千昭が、女の人とっ、カフェにいるの!」
夏目、ほっとした顔でため息をつく。
夏目「なんだよ、市香いたんだ」
市香の目から涙が溢れて頬を流れる。
市香「もういい!あの人が好きなのね!?だったら今すぐここから出て行って!」
突き放すように両手で夏目の胸を押す市香。
夏目が市香の腕を掴んで引き寄せ、きつく抱きしめる。
夏目「勘違いだよ、それは」
市香「(泣きながら)何が、勘違いなのよっ」
夏目「あれはただの幼馴染だよ」
市香「…嘘!」
夏目「嘘じゃないよ。俺、市香しか見えてないから」
夏目が市香の涙を手で拭う。
夏目の手を払う市香。
市香「信じられない!」
夏目「…わかった」
夏目、市香に押し付けるようにキスをする。
○同・寝室に置かれたテーブルの上(夜)
窓から差し込む月明かりに照らされる、歪んだ小さな紙袋。
夏目と市香がベッドに倒れ込む音。
夏目の声「離せって言われても、もう離してやらないから」 fin
長くなった。
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