アカシジアと共に落雷
ひととせを急かす針
時計は止まらないのにどうして私のなかのときだけが止まっている
・
針が私を刺し 痛みで急かす
責め立てるように言う 早く諦めなさいと
うららかの影を見ないふりの投薬治療に
刹那 愛を見た
紡ぐ言葉にその傷を癒されてくれているなんて 思いもしなかった
乱れた髪と細い指が床に舞う 今宵の爪先冷えきって
この世すべて恨むようなじっとりとした眼線は 生き血で鉄臭く染まる赤き唇を妙に色気立たせ
月明かりの中に眠る
・
アカシジアと共に落雷
止まない雨と湿気に満ちる教室に居た君はもう
感傷の水を抜け出している
五感がきちんと働かないなか
第六感だけがようやく息をしていた
アカシジアと共に落雷
小さな毒の水槽に稲妻が走る
・
ノイズを踏んだペトリコールと
空から落ちた私の心
豪雨となり降り注ぎ 地面を穿て弾けろ
指で作る銃がにぶく光った
膨張したココロは未だ アナタを許せないわ
こんなにも 過去に憑かれた 私の事 許せない
・
命と罪を両手に取ったが何方が重いか解らない
昔の傷跡を掻き毟って 掻き毟って 掻き毟って
はてもさても残らず進まず
ならば どうして 時計が壊れない
あたしの部屋のカレンダーは
水面を泳いだあの年のままで
連れ出してよ ねぇ また この月の裏の陰鬱から
路地裏で密かに芽生えた
白いワンピースとあの子のおさげが揺れる
じんじんと響く蝉の音
駆け足の秋が来る 空っぽの秋が来る
・
ふんわり巻いたマフラーに 吐く息も白く顔をうずめる
あの喧しい夕焼けから 静かに降り積る夜の雪
しんしんしんしん、ゆきふりつもる。
しんしんしんしん、耳鳴りがする。
夜の星空、波の大鳴き。
身を投げて、やがては、岩礁に打ち付けるからだ、膨れる。
広げた両手は、もうかじかんで
包み込んで
愛して 愛して 愛して 愛して
・
さようなら、愛しい季節よ
そっと口付けをして ロッカーに鍵をかけた
水槽の中 金魚が口から泡を吐く
それは泪の様に ゆらゆら揺れて消えた
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