Kindleは出版と言えるのか?

ここで言うKindleというのは、紙の本として出版したものをKindle化(電子書籍化)したものではなく、Kindleだけで出版したものを指します。

そもそもKindleってどうやったら出版できるか知っていますか?

はい、そうです。著者がお金を出したら、誰でも出すことができるんですね。ということは、自費出版しているのと一緒なんです。

では、自費出版をして、著者としてブランディングできると思いますか? また著者としての自覚や自信は得られると思いますか?

しかも、Kindleの定価は軒並み低め。さらにAmazonへの販売手数料はかなり高め。結果、印税で稼げる著者さんは、しっかりとファンを持っていて、商業出版で出しても売れるレベルの人だけとなります。つまり、儲かりもしない…。

だったら、何でKindleなんてするんですかね?

で、よくソーシャルメディアなどを徘徊していると、実は著者がKindleを希望しているケースは意外と少なく、Kindleをさせることで儲かる人たちがいっぱいいて、そういう人たちが何も知らない情報弱者をたらし込んでKindleをやらせているようです。

ということは、そのKindleをさせることで儲かる人たちは何で儲けているかというた、さもKindleに価値があるようなことを言って、何も知らない情報弱者たちが支払う報酬の中に彼らの報酬も含まれているということです。だって、Kindleの販売収入で成り立つほど売れませんからね。

Kindleを勧められる人たちは、どうか気をつけてくださいね。

まぁ、ここで終わってもいいのですが、一応、商業出版の価値について書いておきますね。

まずは、Kindleや自費出版は、著者がお金を出せば誰でも出せてしまいますが、商業出版はそうはいきません。つまり、商業出版というのは、出版社に著者の持っているコンテンツが評価されたということなんです。この第三者が価値を認め、リスクを負ってまで商品化したという事実があるからこそ、そのコンテンツホルダーである著者に著者としての自覚や自信が芽生え、ブランディングになるんです。

次は、本の制作過程で、しっかりと編集者が介在しているかどうかということ。編集者はコンテンツの加工のプロフェッショナルです。分かりやすく言い換えると、コンテンツホルダーである著者は原石とするなら、編集者は研磨職人みたいなもの。つまり、著者の持っているコンテンツがどんなに凄くてもそれだけでは意味がなく、それを編集者が磨き上げてこそコンテンツとしての価値が際立つということなんですね。

でも、Kindleだと編集者が介在しないことがほとんど。介在したとしても、商業出版では通用しなかった報酬がかなり安めの人だったりします(だってKindleの編集費相場って紙の本の5分の一ぐらい…)。理由は編集者への報酬を著者が支払わなければならず、そのため制作コストが上がってしまうから。たとえKindleであっても、お金を出す以上、少しでも安く抑えたいというのが著者心理ですからね。つまり、著者によほどの腕がない限り、いい本が仕上がる理由はなく、結果的にレビューが荒れ、逆ブランディングになることもしばしば…。

あとは、商業出版というのは、出版が決まり、本が出た場合、最初に印刷した分については先に印税が支払われます。なので、その印税で販促活動なども展開可能です。しかし、Kindleの場合、作る時にお金を支払い、印税は売れた分しかもらえないため、少額な上に作る時に支払った金額を回収するためにかなりの年数を要します。その結果、販促活動でさらなる出費をしないといけないのですが、それができないために売れず、ほとんど回収できないで終わることがほとんど。

最後に、一度でもKindleで出してしまうと、「この人はお金を出してでも出版したい人なんだ」というレッテルを自ら貼ることになり、いざ商業出版をしようと思った時に、出版社の編集者から足元を見られ、買取などを強要されることもすくなくないのです。

以上の理由から、Kindleをする理由がよく分からないというのが、出版業界の中で編集を生業にしているイチ編集者の意見です。

まぁ、Kindleを否定するわけではなく、あくまでも商業出版の代わりにはならないし、商業出版で得られるメリットは享受できませんよということです。でも、これからきっと、全く違うKindleの活用法みたいなものは考え出されていくんだと思います。だって、Kindle自体が悪い訳ではありませんからね。

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