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キャリア形成/計画か偶然か?

若いうちから自分のキャリアを考えて仕事に取り組むことは本当に大切です。それを、私は自分の経験から痛感しています。私は新卒入社し「会社に身を預けていれば何とかなるだろう」と思っていたら19年も経って「何とかなっていない」自分に気づき慌てて転職しました。
ただ、一方、「ガチガチにキャリア・プランを組み立てるのもどうかな?」という気持ちもあります。このあたりの微妙な感覚をとても上手に言葉にしていらっしゃるお二人の記事と、関連するキャリ形成理論を紹介します。

「予想外」が当たり前/サイボウズ 執行役員ビジネスマーケティング本部長 林田 保さん


林田さんは、サイボウズ社内の人たちが自らのキャリアについて人事のインタビューに答えた内容から考えたことを綴っていらっしゃいます。

林田さんは次のようにおっしゃっています(太字は原文のまま)

1~3年くらいの短期は別として、5年、10年、、、と期間が伸びるにつれて、当初描いていた「キャリアプランの前提」が大きく変わります。
5年以上のスパンで考えると、変わらないことの方が少ないかもしれません。常に周りの環境も自分の状況も思っている以上に変わっていきます。

キャリアを切り拓いていくためには、スキルを身につけ磨きをかけていく必要があります。しかし、常に周りの環境と自分の状況が変わっていく中、それでも通用するキャリアがあるのだろうか? この疑問に、林田さんは次のように答えていらっしゃいます(内容は変えずに、体裁を多少変えています)。

◆スキルは、変わった方向性に適応するための手段
  *ある意味「道具の引き出し」
  *多ければいいわけでもない。ある程度深ければそれはそれで使える。
   その人にあった
    ・スキルの幅 ・スキルの深さ
   があればよさそう。

私の転職経験で、まさにスキルは「道具の引き出し」でした。私は重厚長大系のメーカーから企業人向けに研修を提供する企業に転職しました。
人事部門で研修を企画実施ことが最も充実した業務体験だった(と、当時思っていた)ので、研修講師を志望したのです。

ところが、ふたを開けてみたら、私はプロ講師としてはまったくスキル不足だったのです。話すことは得意なつもりでいたのですが、受講者の心をつかんで離さない語りではないと厳しい評価を受けました。
極めつけは研修業界ではパワーポイントのアニメ効果付きスライドショーが常識なのに、採用面接のプレゼンをOHPでやったことです。

それでも、私は採用してもらうことができました。研修講師としてではなく、研修教材の開発担当としてです。
評価してもらえたのは、講師としてのスキルではなく、人事部門で培った《人と組織を虫の目と鳥の目でみる習慣》《論理と感情の両方を用いて人を説得するスキル》でした。

研修講師になりたかった私としては予想外の展開でしたが、面接してくださった方(入社後の上司)は、私の強みを見事に見抜いてくださったのだと思います。その後、会社は変わりましたが、20年以上、教材開発の仕事を続けています。

そういう経験をした私は、自分ひとりで「自分はこうだ」と決めつけずに他人の意見や評価に耳を傾けることも大事だと思っています。ただ、振り回されてはいけません。振り回されるくらいだったら、自分の信じる道を突き進む方がよいと思っています。

自分が自分をかじ取り出来ている範囲で、他人の目からみた自分を考慮の材料に加えてみると良い。そう考えています。


働く意味合いは人それぞれ/はなえみ🌺(人事+キャリアコンサルタント+産業カウンセラー)さん


はなえみ さんは、ご自身と周囲の方の経験を踏まえて、働く意味合いとキャリアの関係を綴っていらっしゃいます。

はなえみ さんは、仕事に「ライスワーク」(私の解釈では《飯のタネ》)という側面があることを語っていらっしゃいます。以下、太字部は全て私が太字化したものです。

今の仕事は、経歴からいえば一番能力を発揮できそうな人事ですが、人事の中でいえば特にやりたい分野ではないことをしています。ですから、生きるためと割り切っている部分もあります
後輩が働くモチベーションは生活のためと言うのに対して、元同僚は
「生活のためだなんて私にはわからない。もっと高い目標を持たなくちゃ」
と言っていましたが、別に生活のためでもいいのにと思いました。

そうおっしゃる はなえみ さんですが、決めるところはビシッと決めていらっしゃいます。

かつて男尊女卑の親会社から出向してきた上司が「諦めと割り切りが肝腎だ」と言っていました。上司は良いですよ、男尊女卑の会社の「男」ですから。早々に諦めて、異動希望を出しましたっけ……。

理不尽には躊躇なくNOをつきつけているのです。

上にあげた後輩のモチベーションについてのコメントも、実は、後輩が置かれている状況に対する理解からくるものでした。

後輩には小さな子供と、出来れば働きたくないという夫がいます。
一方の元同僚はずっと実家暮らし。この違いだけでも、働くということの基本的な部分が違うと思うのです。

私たちは《働くプロ》であると同時に《生活者》でもあります。《生活者》としての必要性がプロとしての働き方に影響する場面が、どうしても出てくる。

私は、働く意志と能力のある人間には等しくキャリアを築くチャンスが用意されるべきだと考えています。しかし、今の社会では、《働くプロ》であることと《生活者》であることが必ずしも両立しない場合も起こり得る。そういう万一の事態も頭においてキャリア・プランを考えるほうが確実だと私は思っています。


偶然をキャリア形成に活かす/プランド・ハップンスタンス理論


次に、変化の激しい現代ではキャリアの8割は偶然の出来事によって形成されるとした上で、偶然をキャリア形成に役立て、さらには自ら偶然を引き寄せ積極的にキャリア形成の機会を創出しようと唱えるプランド・ハップンスタンス理論を紹介します。

キャリア形成が偶然の影響を大きく受けることを認めつつ《だから成り行きに任せるしかない》という消極的結論に流れないところが、この理論の肝(きも)だと思います。

あくまで偶然の機会を利用し、さらにはキャリア形成に役立ちそうな偶然の機会を創り出そうと主張するこの理論は、偶然に振り回されない個人の主体性を高らかに謳いあげているものだと、私は感じています。


最後に、この記事のタイトルにした『キャリア形成/計画か偶然か?』という問いに立ち返ると、現時点での答えは《キャリア形成は、偶然も活用していく柔軟性を持ちながら計画するもの》ということになりそうです。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。


『キャリア形成/計画か偶然か?』おわり




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