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SWOTを使い尽くそう(第1回)

 直観的に理解しやすく構造もシンプルな戦略策定の思考法SWOT。実は、浅く表面的に使ってもそれなりの戦略を立てられるが、深く掘り下げて使うと戦略の有効性と実現可能性を圧倒的に高めることができる思考法です。
 この連載シリーズでは、効果と実現性の高い戦略を導き出すためにSWOTを深く使い尽くす方法を説明します。

1.SWOTとは(おさらい)

 まず、復習です。SWOTは、
  ※企業自身が持っている強みStrength)と弱みWeakness)
  ※企業の外部に存在する機会Opportunity)と脅威Threat)
の4要素の組み合わせで戦略を策定する思考法です。SWOT分析と呼ばれることが多いのですが、その本質は戦略を策定するためのツールです。

2.SWOTは語呂合わせ、考える順序はOTSW

 
 SWOTは、英語でも日本語でも「スウォット」と発音しやすいからこう並んでいるだけ。考える順序は「O&T」⇒「S&W」です。これは、外部環境と企業の関りを考えれば明らかです。
 企業Aが倒産して消えても、外部環境は存在し続けます。企業より外部環境の方が寿命が長いのです。
 企業は、生き残りと成長を賭け外部環境と相互作用しつづける関係を築いていく存在です。ですから、まず外部環境を探索し、その次に自社の内部環境を探っていくのです。

3.外部環境とは

 
 企業の外側に存在する要素はすべて外部環境だ。そう言ってしまえば、そのとおりですが、これでは、あまりにも漠然とし過ぎています。少なくとも、外部環境がどういう要素で成り立っているのかという「目安」は欲しいところです。私がその「目安」に使っているのは、次の4つの構成要素です。

外部環境の構成要素改訂版

 ▲をつけた「破壊的技術の動向」と「業界から顧客を奪う可能性がある他業界の動向」は、技術変化と社会変化が今でにないスピードで進んでいる今の状況下では要注意項目です。
 例えば、クルマの電動化(ハイブリッドは含まない)は、自動車メーカーが培ってきたエンジン技術の優位性を失わせる破壊的技術です。そして、自動車業界とは異なるIT業界に属するAppleとGoogleがクルマの電動化をテコに自動車市場への参入を狙っています

4.機会とは? 脅威とは?

 機会(Opportunity)と脅威(Threat)と言われると、これらの言葉の日常の使われ方の延長で分かった気になってしまいますが、戦略を策定する上での定義をきちんと決めておかないと、検討の足元がぐらついてしまいます。私は、機会と脅威を次のように定義しています。

機会と脅威の定義

 「自社にとっての機会と脅威」ではなく「自社が属する業界にとっての機会と脅威」を探るのは、SWOTを「O&T」⇒「S&W」の順序で考えるのと同じ理由からです。つねに、環境の分析が個別企業の分析に先立つのです。
 企業は多くの場合、誕生した時点で、既存業界中の1プレイヤーです。ヤマト運輸は「クロネコヤマトの宅急便」を開始して宅配便という新しい業界を産み出しました。しかし、そこにはすぐに多数の企業が参入してきて、ヤマト運輸もその中の1プレイヤーとなりました。ある業界を1企業が独占しつづけることはあり得ないのです。

5.今から未来のある時点までの変化を予測する

  最後に、大切なこと。「外部環境を探索し、そこに機会と脅威を見つける」ことは、今の外部環境について行うのではありません。今から未来のある時点までに外部環境に起こる変化を予測し、その変化の中にどのような機会と脅威があるかを探るのです。《過去⇒現在⇒未来》と続く時間軸で言うと、「今から未来へ」という時間軸で考えるのです。
 ここを取り違えてしまうと、SWOTから導き出される戦略が現状打開策にとどまり、外部環境が現状から変化していくと使えないものになってしまいます。
 一方、内部環境を検討するときは、「過去から現在まで」の時間軸で考えるのですが、これについては第2回で説明します。

 では、未来のどのくらい先までの変化を予測すればよいのでしょう? 現代のように変化が激しい時代には10年以上先は見通すことが非常に難しい。3年では、あっという間に現実が追い付いてしまうので短すぎる。目安としては5年先の外部環境を予測するのが現実的でしょう。

 次回は企業の内部環境をどのように捉えるかを説明します。その中で、特に、「強み」、「弱み」とは、そもそも【何についての「強み」なのか何についての「弱み」なのか】という点を掘り下げていきたいと考えています。


〈次回はこちら〉



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