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高校生が大志を抱くのに必要なこと|NewsPicks佐々木紀彦氏に聞く

いま"大志"を抱いていない高校生が増加している。

少し古いデータにはなるが、ベネッセ教育総合研究所が実施した「子ども生活実態調査」では、2009年に高校3年生が「将来なりたい職業がある」と答えた割合が50.6%で、年々減少傾向にあった。

また、ソニー生命保健株式会社が2017年に実施した「将来なりたい職業」の調査によると、中学生は「Youtuber」「プロスポーツ選手」「芸能人」という回答が多いのに対し、高校生では「公務員」や「看護師」といった、より”手堅い”仕事を希望する人が増加していることが分かった。

手堅い選択をするのではなく、自分にフィットしたやりがいのある働き方をするためには、どのようなキャリアを歩めばいいのか。NewsPicks CCO 佐々木紀彦氏に本音を伺った。

20代から「おっさん」になるな

ー 佐々木さんが、高校生に向けてキャリアの相談に乗るとしたらどんなアドバイスをしますか?

佐々木 場所にもよりますが、地方にいる子であれば「東京に出ろ」、東京に出れば「海外に出ろ」とアドバイスするかもしれないですね。違うステージで得るものは計り知れないものがあります。借金をしてでも出た方がいいと思います。

私は福岡県の小倉高校という進学校出身なのですが、私の高校の友人で九州の大学に進んだ人の就職先は、九州電力やJR九州といった地方企業に留まる傾向にあります。

生まれ育った土地でそのまま働いていては、どうしても視野が狭いので生きて行く上での選択肢が限られてしまいます。東京に行った方が、色んな仕事が見えて、色んなチャンスもある分、自分にフィットしたものが見えやすいと思います。借金してでも東京に出たほうがいいと思っています。

東京にすでにいる人たちは、ある種の「大都会の”田舎”」に住んでいると思っています。中高一貫校が典型的な例ではありますが、同じような境遇の人で育って、似たような人とばかり連んでいるような人が多いので、実は価値観の幅が狭い。東京自体は広いけど、その人自体が生きている世界観は狭いので、そういう人たちは海外に行った方がいいと思っています。

視野が狭いと大きく伸びていく新規産業のようなものは生まれません。

NewsPicksでは今年「さよなら、おっさん。」というメッセージを打ち出しました。ここでいう「おっさん」というのは年齢のことではなく、古い価値観やシステムにとらわれてしまっている人をさします。

20代から「おっさん」として働いていくよりは、違う世界に出て、新しいことをインプットして、一旗あげるような人が増えてほしいなと思います。

今、高校3年生だったらアメリカかイギリスの大学に行く

ー 佐々木さんは、大学に進むときに東京に出てきたわけですが(慶応義塾大学総合制作学部)、高校時代はどう考えて、進路を選びましたか?

佐々木  高校1年の頃はサッカーばかりやっていて、プロサッカー選手になりたたいと思っていました。ただ、入学してすぐに素質のなさに絶望して、1年で部活を辞めてしまいました。それは大きな決断でしたね。自分の中で一つの人生が終わったように感じました。

高校3年生になって、受験勉強のことを考えたときに、学校に置いてある大学のパンフレットを見ているときに、後に私が進学する慶應義塾大学総合政策学部を見つけました。

そこは当時まだできたばかりの新しいコースで、経済学者の竹中平蔵さんが教授をされるということで、興味を持ちました。あとはもともとおばあちゃんから、「慶応ボーイが一番かっこいい青年像だ」という軽い洗脳もありましたね(笑)

ただ、大学に入ったすぐは、理想とのギャップに悩んで辞めようと思ったこともあります。もっと知的で楽しい場所かなと思ったら、ぬるくて刺激がなかった。こんなはずじゃないと。高校時代の予備校の先生にも相談したりして、今の場所でもまだやれることがあるんじゃないかなと思い、2年の後半に竹中平蔵ゼミに入って、こんなすごい人がいるんだと思って、それからはこの大学に進んで良かったと思うようになりました。

でも、大学一年と比較的人生の若い段階で悩んだ経験は無駄じゃなかったかなと思います。

ー もし、今、佐々木さんが高校3年生だとしたら、次に何を学ぶのか、どんなキャリアを進みますか?

佐々木 今だったらアメリカかイギリスの大学行きますね。やっぱり私も、28歳のときに留学しましたが、日本と海外では隔絶たる差があるんですよ。例えるなら、サッカーに25歳くらいになって欧州リーグ言っても遅いじゃないですか。最初からプレミアムリーグとかに行ったほうが馴染める。28歳では遅すぎましたね。

かといって早くてもいいという訳でもないと思っています。ある程度アイデンティティーが形成したときに海外を経験するのはベストかなと思いますね。

アイデンティティーを見出す5つのポイント

ー 高校生くらいの頃って、ちょうど「自分のアイデンティティーって何だろう」と悩む時期だと思います。佐々木さんは何をすればアイデンティティーが見つかると思いますか?

佐々木 アイデンティティーを見出すためには「読書」、「孤独」、「親友」、「旅」、「恋愛」の5つが大切だと思っています。

「読書」は、著者との対話です。歴史的名著と呼ばれるものをしっかり読み込んで、その人の物事に対する考え方とじっくり対話していくっていう行為が大事です。

「孤独」は、ただ1人でボーっとするのではなく、自分に対して真剣に向き合うこと。そこから見えてくるものがあると思います。友人とただワイワイやっているだけでは、アイデンティティーは見つかりません。

「親友」は、腹の底から本音で議論をぶつけ合うことで自分というものが深まっていくことがあります。私も大学時代にそういう親友がいて、「自分にとって仕事とは何か」とか「学問は何のためにあるのか。」と、夜が更けるまで語りあう経験をしました。

「旅」は、環境を変えるっていうだけで気づくことってたくさんあると思っているんですよね。バックパッカーで1人で海外に行って、日本ではできないような新しいものに触れる。その上で自分が感じたことと向き合うという経験をするといいと思います。

「恋愛」は、自分の全てをさらけ出す経験ですので、成功するにしろ失敗するにしろ、自分の輪郭がハッキリとしてくる。「なんて自分はダメな存在なんだろう」とか、逆に「尊い存在なんだろう」とか、そういう最大の感情を得られるのが恋愛だと思います。


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