見出し画像

亜鉛比率が低い:アルツハイマー病診断に有用なバイオマーカーか?

「どういうわけか、アルツハイマー病患者は亜鉛の比率が低い」

Dr. Dale Bredesen on Preventing and Reversing Alzheimer's Disease (9:30~)

この発言をきっかけに、銅と亜鉛と脳の関係を殴り書きしました。
ちょっと古いものですが、最近また亜鉛を話題に上がったので、メモから掘り起こしてきました。
(個人的には、「銅>>亜鉛」比率になりがちな現代の食事法により、そもそも現代人は亜鉛比率が低い傾向にあるため、亜鉛比率だけ見ても、それがバイオマーカーとなるかについては、???。)

■調べて分かったこと

  • 亜鉛は脳機能に絶対的に重要だ!認知症予防・改善のためにも積極的に摂取すべし(過剰摂取には気を付けて)

  • その一方で、認知症の原因によっては、亜鉛が発症を促進することもある!

■先ずは知っておきたい"銅と亜鉛"について

  • 銅と亜鉛は、"トランスフェリン"(Transferrin, 血漿に含まれるタンパク質の一種)という同じ輸送体を使用し体内に吸収される

    • 小腸で吸収されるときに競合するため、いずれかの摂取量が高いと、いずれかは比例して低くなる関係にある

  • 現代の食事は銅の摂取が多く、銅過剰・亜鉛不足になる傾向が高いと言われている

■亜鉛と脳機能の関係

  • 亜鉛は脳神経系の機能発現、記憶学習に非常に重要な働きを持つ

  • 亜鉛が第一鉄(Fe2+)よる活性酸素産生を促進、アルツハイマー病の発症に関して促進的に働くのでは説

  • 亜鉛が良眠を促進

■亜鉛について

  • 働き(とにかく沢山ある)

  1. 神経細胞の異常興奮を抑制

  2. 抑うつ気分・不安の予防

  3. 神経の修復

  4. 細胞の生成

  5. 味覚を正常に働かせる

  6. 免疫維持

  7. アルコールの分解

  8. 性機能の維持

  9. 三大栄養素の代謝機能

  10. 重金属中毒から体を守る

  11. 膵臓が消化酵素をつくり、それらを腸に分泌させるのを助ける など

  • 代表的な食品

    • 玄米ご飯、牛もも肉、ホタテ貝柱、納豆、牡蠣、アーモンド、かぼちゃの種、レバー 、アボカド など

    • たんぱく質を含む食品に豊富

★豆知識
 かぼちゃの種をよく摂取するポルトガルでは、前立腺疾患が非常に少ない(らしい)

  • 不足

    • 症状:成長障害(たんぱく質やDNAの合成ができない)、味覚障害、貧血、食欲不振、皮膚炎、脱毛、免疫力低下、低アルブミン血症、神経感覚障害、認知機能障害 など

  • 原因

    1. 植物性食品に多く含まれる食物繊維やフィチン酸、加工食品に多く含まれる食品添加物などによる亜鉛の吸収阻害

    2. アルコール摂取による亜鉛の排出量増加

  • 過剰摂取

    • 症状:前立腺肥大リスクの増加、銅欠乏による吐き気、嘔吐腎障害、免疫障害、HDLコレステロールの低下、低銅血症、下痢 など

    • 原因:サプリメントの過剰摂取


☆重金属中毒

金、銀、銅、鉄に代表されるような重金属が多量に取り込まれることで体に異常が生じている状態

■銅について

  1. 鉄が赤血球を生成するためにサポート(鉄が十分足りていても銅が不足していれば、赤血球をうまく生成することができない)

  2. 活性酵素を撤去する

  3. 骨の形成をサポート

  • 代表的な食品

    • 牛レバー、ホタルイカ、しゃこ、そら豆、牡蠣 など

  • 不足

    • 症状:白血球減少、好中球減少、心血管系や神経系の異常

    • 原因:栄養不足、遺伝的な銅代謝異常

  • 過剰摂取

    • 症状:亜鉛欠乏による以下略、脳神経障害、重度の肝障害、関節障害、活性酸素の生成を促進し酸化ストレスを引き起こす(→肥満、高血圧、糖尿病、心不全、腎不全を悪化させる) など

    • 原因:ウイルソン病(銅が胆汁中に分泌されず肝臓などに蓄積される遺伝病) など

■オススメ本


■亜鉛が脳血管性認知症に関与する?

脳血管性認知症 虚血時において(参照 p3)

  1. 過剰な亜鉛がシナプス間隙に高濃度で放出される

  2. 亜鉛が海馬の神経細胞内に蓄積

  3. アポトーシス(予め予定されている細胞死)を引き起こす

  4. グルタミン酸による神経細胞死を促進

  5. 亜鉛による神経細胞死が脳虚血後の神経細胞死の本体であり、これを抑制することによってVD(Vascular Dementia)の予防・治療薬が開発できるのではないか

    • 亜鉛は脳機能に必須である一方、認知症の発症に対して、ある場合には発症を促進し、ある場合には発症を抑制する役割があるのではないか説

亜鉛
グルタミン酸作動性神経(海馬や大脳新皮質などに多い)に多く含まれ、グルタミン酸分泌を調節
グルタミン酸:脳内の興奮性の神経伝達物質
(グルタミン酸濃度が過剰→神経細胞が長期に興奮→神経細胞に毒性をもたらし、最終的には神経細胞が死ぬ)

☆脳血管性認知症 : Vascular Dementia
 脳血管障害を基盤として発症する認知症
 アルツハイマー病の次に多い認知症の原因

(Reference)
The Amazing Zinc: Part 1
6 Ways to Know You Need MORE Zinc
7 Weird Signs of a Zinc Deficiency
The Benefits of Zinc for a Deeper Sleep
Do You Have Copper Toxicity?
Trace Minerals - Professor Makkieh
How Much Zinc is Too Toxic?
Everything you need to know about Zinc - Functions, Deficiency Symptoms, Supplements, & More
Zinc
認知症と亜鉛
 認知症と亜鉛、リコード法について講演しました | ブレインケアクリニック (brain-care.jp)
 アルツハイマー型認知症と亜鉛 (dr-okudaira.com)
銅と亜鉛の関係
 不妊症と鉄、銅、亜鉛、ビタミンDとの関係について│新宿三丁目えきちかクリニック|新宿の内科・皮膚科 (s3-cl.com)
銅について
 ミネラル成分の銅の働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネット (tyojyu.or.jp)
 銅 - 11. 栄養障害 - MSDマニュアル家庭版 (msdmanuals.com)
亜鉛について
 亜鉛の働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネット (tyojyu.or.jp)
 亜鉛不足は怖い!起きる症状や原因を解説します | POWER PRODUCTION MAGAZINE(パワープロダクションマガジン) (glico.jp)
 亜鉛 - 11. 栄養障害 - MSDマニュアル家庭版 (msdmanuals.com)

.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?