読書ノート『マネジャーの最も大切な仕事』

本書は人の内面的要素とパフォーマンスに関する研究レポートです。

結論から言うと進捗をサポートするマネジメントが最も効きます。

原題は『THE PROGRESS PRINCIPLE』となっており、原題と邦題で大きく違う本の一冊です。

Principleの翻訳が難しくて、本文中では『進捗の法則』と訳していますが、Factorと対になっているので、法則・原理の訳より、本質・素因子の訳のほうが適切です。

ただすごく日本語にしづらいのでこの邦題になったのかなと思います。本稿でも面倒くさいのでプリンシプルとカタカナにしてます。

結構分厚い本なので章立てごとにまとめを追記していこうと思います。(このセクションも変更するかも)

序章

本書はインナーワークライフに関する研究をまとめたものです。

インナーワークライフとは、認識・感情・モチベーションの相互作用のことであり、これらは仕事自体から得られます。

インナーワークライフを最大化するマネジメントこそが強固なパフォーマンスを保証するというもので、邦題のとおりマネージャをターゲットに書かれています。

インナーワークライフに影響を与える要素として、進捗プリンシプル・触媒ファクター・栄養ファクターの3つがこの順番で重要であり、原題の『THE PROGRESS PRINCIPLE』もここから来ています。

研究資料としては企業の協力のもと12000の日誌を回収しており、なかなかに泥臭い研究です。

全8章+終章構成になっており、ざっくりこんな構成です。

1〜2章 インナーワークライフとは何か
3章   インナーワークライフ効果について
4章   インナーワークライフに影響を与える要素の分析
5〜7章 主要な3要素の詳細解説
8章   進捗チェックリスト
終章   マネジャー自身のワークライフバランスに関して

第1章:組織の最前線の風景から

倒産した大手メーカーの象徴的な2つの事件とともにインナーワークライフとは何かについて説明しています。

インナーワークライフは『個人的職務体験』と訳されていますが、その名とおり職場や仕事における体験を元に形成された個人の内的な要素のことです。

この内的な要素というのは、組織に対する認識、感情、モチベーションの3つです。

小さい出来事の積み重ねが大きな影響を与えるのが日誌の統計から分かっています。

次の章で詳細な解説が入ります。

第2章:インナーワークライフ

インナーワークライフの詳細な解説をしています。

心理学の研究により、心理的プロセスの中でパフォーマンスに大きな影響を与えるのが、認識、感情、モチベーションの3つであることが分かっています。

認識に関しては過去の過去の経験(バックストーリー)が重要であり、モチベーションに関しては内的動機づけが重要です。

インナーワークライフはこの3つが動的に相互作用するシステムとして説明されます。

第3章:インナーワークライフ効果

インナーワークライフとパフォーマンスの関係について詳細に述べています。

ポジティブなインナーワークライフが高いパフォーマンスを引き出すことが判明しています。(インナーワークライフ効果)

パフォーマンスには創造性・生産性・コミットメント・同僚性があり、インナーワークライフ効果はこれらすべてに見られます。現代の仕事では創造性が特に重要なので特に詳しく述べられています。

インナーワークライフ効果はインナーワークライフの三要素すべてがパフォーマンスにポジティブな作用をすることから説明できるが、長いので割愛。

インナーワークライフ効果は集中・エンゲージメント・意欲として顕著に現れることが多いようです。

繰り返し述べられているのは、プレッシャーを与えて成長を促すと言う戦略が完全に誤りだと言うことです。

第4章:「進捗の法則」の発見

インナーワークライフに影響を与える要素に関する分析です。

パフォーマンスに影響があると分かったインナーワークライフをどうやれば上げられるのかが分かる重要な章です。

結論を言うと、進捗、触媒、栄養の3つの要素が支配的です。この中では進捗が特に際立っているので『プリンシプル(主要素)』残りを『ファクター(影響要素)』と呼んで区別してます。

進捗プリンシプル:進捗が進んでいるのが分かる出来事
触媒ファクター:仕事をサポートする出来事
栄養ファクター:人をサポートする出来事

第5章:進捗の法則

最もインナーワークライフに影響を与える『進捗』について深く考察して今います。

進捗がインナーワークライフにポジティブな影響を与えるのは、人間の基本的な原動力の一つである自己効力感をもたらすからです。

そのため、価値があると認識している仕事(やりがいのある仕事)の進捗である必要があります。

やりがいを失うには以下の4つの要素があります。

・仕事やアイデアがメンバーに相手にされない
・当事者意識が失われること
・日の目を見ないのではないかと疑念を抱く
・自分にはもっと能力があると感じる

進捗に対するポジティブな要素よりネガティブな要素のほうが何倍も影響を与えるのでまずはネガティブ要素を取り除くことを優先しましょう。

第6章:触媒ファクター

2番目に重要な触媒ファクターに関する論考です。
長い章ですが、大半はエビデンスなので情報は少ないです。

触媒ファクターはざっくりいうと進捗をサポートする要素です。
実際に進捗に影響が出る前からインナーワークライフにポジティブな作用があります。

代表的な触媒ファクターが7つまとめられています。

1. 明確な目標設定
2.自主性の容認
3. リソースの提供
4. 十分な時間の付与
5. 仕事のサポート
6. 問題と成功からの学習
7. 自由活発なアイデア交換

触媒ファクターを生み出すのに重要なのが、社員の社員のアイデアの尊重、協調、コミュニケーションの3つです。

第7章:栄養ファクター

3番目に重要な触媒ファクターに関する論考です。

ざっくりいうと仕事と関係ないけどテンション上がる要素ですね。

代表的なものが4つ上げられています。

1. 尊重
2. 励まし
3. 感情的サポート
4. 友好関係

第8章:進捗チェックリスト

チェックリストを活用しましょうという話。

一般的な話に終始しているので省略。

終章:マネジャー自身のインナーワークライフ

マネジャーのインナーワークライフも進捗に影響を受けるが、それは部下の進捗であるようです。

まとめ

分厚めの本ですが、その性質上エビデンスやデータの引用が大半を締めており、また繰り返し同じ内容を述べているので論自体はそんなにボリュームはありません。

正直ストーリーに興味がない身としては読んでいて疲れます。

結局のところパフォーマンスに影響を要素は何なのか?と言われれば原題の通り『THE PROGRESS PRINCIPLE(進捗)』です。

物事の進捗を可視化して、進捗を阻害している要素を排除していきましょう。

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