読書ノート『サーチ・インサイド・ユアセルフ』

はじめに

不思議なことにカタカナで書くとクソダサいんですが『Search Inside Yourself(自身の内面を検索せよ)』のレビューです。

まぁ変な邦題付けられる寄りはマシでしょう。

この本を知ったのは、会社のSlackに『なんかオススメのマインドフルネスアプリない?』って投げかけたらアプリの紹介と一緒に会社の人が教えてくれました。
こういう頼んでもないのにオススメされる本はガチでオススメのことが多いので割と素直に読んでいます。

表紙のカラーを見て一発で分かるんですが、Google社員が出してる本です。

内容はマインドフルネスに関して。

これから始めようと思っている人、なんとなくやってるけどちゃんと学びたい人にオススメの一冊。

ところどころアメリカンジョークを挟んで来るのでコーヒー飲みながら読むときは注意してください。

全9章構成で内容はざっとこんなところ。
題は私の要約で実際はもっとクールな題が付けられています。

イントロダクション
1. EQに関して
2. マインドフルネス瞑想の理論と実践
3. マインドフルネスを日常への応用
4. 自己認識の強化
5. 自己統制の強化
6. モチベーションの強化
7. 共感能力の強化
8. 社会的技能の強化
9. 世界平和へ向けて
エピローグ

1. EQに関して

EQという言葉を聞いたことがあるかもしれない。ないならググって。

俗に『心の知能指数』と言われるもので、地頭の良さであるIQとしばしば対比されるアレです。

本章においてはEQのあらましと鍛えるメリットについて説いています。
EQスゴイ→どうやって鍛える?→マインドフルネス という流れ

『心の知能指数』と言われてもピンとこないので本書ではちゃんと5つに分けて解説してくれています(正確には『EQ-こころの知能指数』からの引用ですが)

自己認識:自分の内面を知ること
自己統制:自分の内面を管理すること
モチベーション:目標達成につながる情動傾向
共感:他人の内面を認識すること
社会的技能:他人から望ましい反応を引き出す技能
(筆者要約)

これらは4〜8章で個別に詳細に述べられています。

EQの恩恵が以下の3つ。

優れた職務遂行能力
抜群のリーダーシップ
幸福のお膳立てをする能力(特に重要)

EQを養うには注意力を鍛え、身体の生理的変化に敏感になるとよいと述べられており、非常に長ったらしい科学的エビデンスと説得力のある解説が付けられているが、要はマインドフルネス(瞑想)でそれが実現できるよということです。

これは瞑想と聞いて非科学的に思う人へのフォローをするためと、著者がエビデンス大好きなエンジニアであることによるものと思われます。

2. マインドフルネス瞑想の理論と実践

マインドフルネス瞑想は注意とメタ注意を強化します。
メタ注意とは注意がそれたことなどの知覚するための注意です。

注意とメタ注意を鍛えると、心が安定して、穏やかさ、明瞭さ、幸せになると書かれています。

心の中のノイズが無くなるので前者2つはピンとくるのですが、最後の『幸せ』に関しては補足すると、人間デフォルトでの精神状態が幸福状態ということです。いわゆる『理由なき幸せ』というやつですね。

マインドフルネス瞑想の手順は以下の通り。

1. 瞑想の意図を明確にする
2. 呼吸に注意を向ける
3. 注意が逸れる(考え、心配、空想など)
4. 2に戻る

注意が逸れたことに対して自己批判しがちですが、そういう自分自身に対する態度も認識して改めるのが重要です。

次に姿勢に関して、隙がなくリラックスした姿勢が取れれば特に制限は無いのです。幸い日本人は床に座り慣れてるので、伝統的な座禅の体勢から入っても良いかなと思います。

その他、瞑想に関する科学的研究結果が説明されています。この辺りは非常にGoogleっぽさを感じました。普通の方は多少うんざりすると思います。

3. マインドフルネスを日常への応用

基礎的な瞑想トレーニングから発展して、日常的にマインドフルネスの恩恵を受けられるようにするのがこの章の目的です。

1つ目は活動中のマインドフルネス。

とくにオススメされているのが歩くマインドフルネス。
歩行中の一瞬一瞬の体の動きと感覚に注意を向けるというものです。
散歩とかのときにすると運動にもなっていいかなと思います。

あと食事のマインドフルネスとして、どんな食事も高級料理と思って食べるというのは面白かったです。

2つ目は他人に向けたマインドフルネス。
一瞬一瞬の注意を別の人に向けるというものす。これを会話に応用したのがマインドフルな会話で、以下の3つがポイントです。

相手の話に注意を向け続ける(リスニング)
相手の話した内容を受けて自分なりの理解を述べる(ルーピング)
注意がそれた先の自分の中の関心事を知覚する(ディッピング)

その他、継続することの重要性とそのノウハウについて執拗に書かれています。

一朝一夕に注意力が育つものではないので筋トレみたいに継続する必要があるんですが、最初気合を入れて初めてすぐに辞めてしまう人が多いみたいなんですよね。

何事もそうですが、毎日負担にならない程度に少しづつやって習慣させるのがコツです。

4. 自己認識の強化

ここから5つの章はEQの要素ごとに解説が入ります。

自己認識とは「自分の内面の状態、好み、資質、直感を知ること」で、他の4つの要素に前提となる比べてとりわけ重要な要素です。

まずは観測しないことには始まらないというわけですね。

自己認識における3つの情動的能力は以下の通り。

1. 情動の自覚
2. 正確な自己査定
3. 自信

『情動の自覚』とは生理的レベルで発生した事柄(手汗が出るなど)を知覚してその原因を知ることで、自己査定とはそこから更に洞察して長所、短所、限界、資質などを知ることです。

持続可能な自信は正確な自己査定から導かれるそうです。
長所短所がわかっていればミスが起きた場合も自分の能力の範囲のことだと理解できて不安がないからだと思われます。

自己認識を強化するマインドフルネスは「ボディスキャン」と「ジャーナリング」です。詳細はググって。

自己認識を強化すると情動と自分自身が一体の状態から、情動とそれを体感する自分自身に変化するそうです。これ重要。

「久しぶりに・・・キレちまったよ」

これと次の自己統制を鍛えるだけで情動の勢いでやらかすことはだいぶ減ると思います。

5. 自己統制の強化

認識の次は統制。自制心が有名だが、以下の5つの情動的能力がある。

自制心:破壊的衝動を抑える
信頼性:正直さと誠実さの基準を維持する
良心性:自分の振る舞いに責任を取る
適応性:変化に柔軟に対応する
革新性:新しい情報などを気兼ねなく受け入れる

いきなり〇〇性がいっぱい出てきたのですが、この辺は引用なのであんま大事じゃない。

肝となるのは情動の発生自体を抑えるのではなく(というか無理)その情動を行動に繋げずに手放すこと。

特に重要なのは「執着」「嫌悪」を手放すことで、人生の辛いのはだいたいこいつのせい。

特に些細なことで情動が大きく反応する「トリガー」(つまりプッツン来た時)に有用で、だいたいその些細なことのうらに鬱憤が溜まっている。

でもこの辺それなりの「常識人」ならそれなりにオリジナルの対処法を既に身につけてると思います。

自己認識と組み合わせてより効率よくリフレッシュしましょう。

6. モチベーションの強化

この章ではモチベを上げていく方法について3つ書いている。
この辺はブログのノウハウとかでもしばしば見る内容ではないでしょうか。

1つ目は整合性をとる。自分の仕事を、自分の価値観と目標と整合させること。
ここを整合させると仕事は楽しみの一環になります。無限に働けるね!

この手の仕事は「自分にとってとても意味がある」「フロー状態に入れる」という特徴があるそうです。

フローはゾーンとも言われる究極の集中状態のことです。
自分はゾーンって言うことの方が多いですね。詳細はぐぐって。

整合性をとるには「ジャーナリング」のテーマに「価値観」に関するキーワードを選べばよいそうです。

2つ目は想像。目標を達成している自分を想像することで達成しやすくなるというアレです。

想像を実際に絵に描いたり文章に書き下すと効果的。あと周りに沢山語るのも良いとはよくいいますよね。

3つ目は回復力向上。道中の障害を克服する能力するスキルです。
前者2つと違って目標の道中で大事なスキルですね。

回復力を上げるには「内面の穏やかさ」→「情動的な回復力」→「認知的回復力」の順で強化するといいらしいです。ようは基礎から安定化していきなさいということですね。一番本書らしい項目。

マインドフルネスで失敗経験を思い出して、揺れた気持ちを鎮める訓練をすれば回復力が育ちます。

7. 共感能力の強化

この章は共感スキルに関して。

やたら長い科学的考察が述べられているが、要するに人間は他人の体験を自分でも体験したかのように錯覚する機能(共感)が先天的に備わっているという話。

共感は生理的レベルで発生してシンクロするので、自己認識を強化すると共感認識も強化されるというわけです。

共感とは生理的現象の観察なので、「同意」や「心理的考察」などの頭を使うプロセスとは異なるのが注意が必要です。

共感センサーは自分と相手が近しいと思えば感知レベルが上がるので、それを訓練しましょうという話。同じ人間だからどんな相手でもできんことないでしょう。

共感能力を強化すると下手に政治的敵対をせずに相手とのすれ違いを減らしてWinWinできますよというのが大枠の話。

共感力強化はマインドフルネスなリスニングの応用でできます。

この章やたら長いので力の入りようが違いますね。

8. 社会的技能の強化

この章では重要な3つの社会的技能について書いてます。

1つ目は、思いやりのあるリーダーシップ。

思いやりとは、「理解する」「同情する」「役に立とうとする」ということらしいです。

メンバーに思いやりを持って接することで動機づけられて強力なリーダーシップを発揮するということのようです。

ちなみに思いやりを持って接している状態が一番幸福な状態だそうです。

これはトングレンという瞑想で強化されるようです。

2つ目は、善良さを持って影響力を振るうこと。

脳の特性に関してこれまた長い解説があるが、要するに人が望みを達成するのを助けるのが一番影響力を与える。

影響力を高める4ステップがあるが長いので割愛。

3つ目は洞察力に溢れたコミュニケーション。

トラブルを回避するには共感だけでなく相手を深く洞察することも必要という話。共感した内容を自分視点で誤って解釈しないように、極めて具体的な手順が記載されている。

長いので割愛。

9. 世界平和へ向けて

いきなりスケールのでかい話が出てくるのだが、著者の一番語りたいところはここだと思われる。

皆がEQを高めて心穏やかにお互い思いやりを持てば世界平和になるんじゃね?という極めてシンプルなロジック。故に難しい。

本章では3ステップでのロードマップを示している。

1. 自分から始める
2. 瞑想を科学の一分野にする
3. 瞑想を実生活と整合させる

要するに習得→方式化→習慣化ってながれっぽい。
で本書は3番目というわけだ。

まとめ

長くなりましたが、章ごとにまとめました。

長い内容の本なんですが、科学的エビデンスの説明が多分に含まれており、科学オタク自重しろと言わざるを得ない。論文読んでる気分になるよ。

筋トレみたいにトレーニングすれば心の穏やかさが手に入るというのがポイントです。心穏やかに、プッツン来てもやり過ごす。有って困るスキルではないと思います。

敵を知り己を知れば百選危うからずっていいますからね。

目の前のタスクや組織課題に忙殺されがちですが、自分の内面にも目を向けていきましょう。1日2分から始めていきましょう。

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