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Underground Rap 入門編

皆さんこんにちは。シェイディと申します。
今回は題して"Underground Rap 入門編"でございます。
SNSやこのnote.を通じて様々なアルバム達を紹介させていただいておりますが、やはりUndergroundなHiphopと聞いても幅が広すぎてどの地域の誰から聞くべきなのか、かなり難解ですよね。
そこで、入門編・中級編・上級編と三部に渡っておすすめのアルバム達を御紹介させていただきます。
そして今回の三部作では評価基準を2つ設けたいと思います。それは聴きやすさ(難解度)と見つけやすさ(認知度)です。
評価方法としては★の数1~5までで、難解度は高ければ高いほど★の数が増えていく、逆に認知度は低ければ低いほど★の数が減っていくというシステムにします。

それでは早速三部作の初陣、入門編のおすすめアルバム20枚を御紹介させていただきます!
(↑↓名前順|アルバムのジャケットをタップすればリンク先に自動で飛びます)


1 . Labor Days - Aesop Rock


難解度 : ★★★☆☆  認知度 : ★★★★★

今やNYの大御所としてその椅子に君臨するAesop Rock。彼の3作目としてクラシック認定されているこのアルバムはヒップホップを聴いている人で知らない人はいないでしょう。2000年代初期は私の中でヒップホップの停滞期だと感じます。そこにとんでもない一石を投じた彼は、当時紛れもなく超大型ルーキーという看板を背負った事でしょう。アンダーグラウンドを掘る前にまずこのアルバムは確実に聴かなければなりません。


2 . Griselda Ghost - Big Ghost Ltd, Conway the Machine & Westside Gunn


難解度 : ★★☆☆☆  認知度 : ★★★★☆

2015年にリリースされたこの傑作は、Big Ghost Ltdのデビュー作のようなものだが、彼が如何に才能に溢れた作曲家なのかがひしひしと伝わってくる。
9年前ともなればまだConwayとWestside Gunnはルーキーで、まだそれ程名前が広まっていない時。当時もルーキーらしからぬスキルフルなラップをしていた訳だが、そこにBGLの重々しく暗然なビートがより一層の存在感を与えている。"Griselda"というある種のエゴがこの作品で形作られたと言っても過言では無い。


3 . Innocent Country 2 - Quelle Chris & Chris Keys


難解度 : ★★☆☆☆  認知度 : ★★★★☆

近年ジャズラップの脚光が再び灯されてきているが、この2020年リリースのアルバムもその光の中心に位置する傑作なのは間違いない。Chris Keysが手掛けるゆったりと落ち着いたビートとユニークな言葉遊びをするQuelleのラップは終始私達に自然由来の心地良さを与えてくれる。このアルバムは間違いなくクラシックであり、これからも語り継がれるであろう大名盤。2020年のAOTYを選出するならば間違いなく選ぶであろう必聴級の作品だ。


4 . Dwight Spitz - Count Bass D


難解度 : ☆☆☆☆☆  認知度 : ★★★★★

NYという街は芸術的感性と自由に満ち溢れた都市である。Count Bass Dは正にそれを体現する唯一無二なMC。サンプリングを活かした多種多様なビート。シンプルに聴こえつつも繊細な音作りが聴けば聴くほど理解出来る。このアルバムほど過小評価されている作品は類を見ない。屡々(しばしば)MF Doomと比較される程のアルバムだが、実際ヒップホップファンの中で話に出る事は少ない。歴史の影に隠れてしまっているが、私はこのアルバムを2000年代のBEST ALBUMに間違いなくランクインさせるだろう。


5 . Covert Coup - Curren$y & The Alchemist


難解度 : ★★★☆☆  認知度 : ★★★★☆

ニューオリンズ出身のCurren$yは1部のファンからカルト的な人気を誇る若きレジェンド。今作はビートの錬金術師・The Alchemistとの初コラボ作品。
このコラボを経て2022年に再び彼らはタッグを組むのだが、作品自体そこまで特質すべき特徴は無い。だが、ある一定の時を経てまたこのアルバムを聴きたいと思えるような中毒性がある。故・Prodigyや若き日のFreddie Gibbsなどが参加した今作は、一言で表すなら折衷的。東と西、時々南の香りを放ちつつそれらを細かく繋ぎ合わせたAlchemistの手腕たるや見事しか言いようがない。


6 . Czarface Meets Metal Face - CZARFACE & MF Doom


難解度 : ★★★☆☆  認知度 : ★★★☆の

ヒップホップの歴史上最高のトリオと言っても過言では無いCZARFACE。伝説的グループ・Wu-Tang Clanの一軍メンバーであるInspectah Deckと元々デュオで活動していたプロデューサーとMCの7L & Esotericによって2013年に結成された。そんな3人とMF Doomが組むのだから傑作である事はもはや決定事項である。7Lが鳴らすビートはタイトでシンプルなのだが、だからこそ他3人のスキルに満ち溢れたユニークなラップがここぞとばかりに光り続ける。この作品は間違いなくCZARFACE史上最高傑作!!


7 . Intros, Outros & Interludes - Domo Genesis & Evidence


難解度 : ★☆☆☆☆  認知度 : ★★★★★

タイラー率いるOdd Futureの創設メンバーとして知られるカリフォルニアのMCはデビュー初期からアンダーグラウンド的思考を音楽に落とし込んでいる。今作はAlchemistと肩を並べるレジェンドプロデューサー兼MCのEvidenceとタッグを組み、自身のスキルと努力が滲み出た最高のラップを披露している。天才集団であるOdd Futureという存在の中で、彼はあたり目立たない方であるが、それが逆に彼を稀代のリリシストとしての覚醒に追い風を与えていたのだと云う事を思い知らされる。


8 . Some Rap Songs - Earl Sweatshirt


難解度 : ★★☆☆☆ 認知度 : ★★★★★

彼が求める音楽と彼のファンが彼に求める音楽とでは明確な違いがあった。Tyler, The Creatorがそうであるように、ファンはEarlにもポップスターとして名乗りを上げて欲しかった。ただファンがそう思えば思うほど彼はその対極へと歩みを進めた。このアルバムは正に彼の意思表示であり、彼なりの分岐点である事を私達は理解しなければならない。Earl Sweatshirtはただ自分が望む音楽への姿勢を第三者にも尊重してもらいたいのだ。彼の真の魅力や音楽性について文章化するのはまた違う機会にしたいと思うが、この作品を聴かずしてヒップホップファンは名乗れない。


9 . Fantastic Damage - El-P


難解度 : ★★★☆☆  認知度 : ★★★★★

Company Flowのメンバーとして、Run The Jewelsの片割れとして彼が残してきた功績はあまりにも大きい。ノイズ的破壊力とサイケデリックなサウンドを融合させたハードすぎる傑作としてこの作品はこれからも語り継がれるであろう。彼のプロデューサーとしての腕は然る事乍ら、MCとしての振る舞いも凄まじいものがある。Run The Jewelsではキラー・マイクの影に隠れているが、ソロになるとここまで存在感を放つMCに変貌するとは、天晴れとしか言い様がない。良い意味で型にハマらない彼の音楽性には脱帽の意を全面的に表したい。


10 . You Disgust Me - Gangrene (The Alchemist & Oh No)


難解度 : ★★☆☆☆ 認知度 : ★★★★☆

The Alchemistというプロデューサーは何百もの顔を持っている。時には優しく包容力のある父親のように。時には冷酷で恐れるものなどないギャングのボスのように。今作においては後者が当てあはるであろう。Oh No、Sean PriceAction Bronsonなどインパクトのあるラップをする彼らに魔法を授けるのなら間違いなく火力が高いものを選ぶのと同じ様に、Alchemistが今作で使ったビートは太いドラムと不協和音のような暗然でノイジーなサンプリングが目立つ。こうした適応性、或いは想像力が彼はずば抜けている。彼が彼たる所以はそういった引き出しの多さにあるのかもしれない。


11 . Air Force 1 - The High & Mighty


難解度 : ★☆☆☆☆  認知度 : ★★★★☆

このデュオの片割れであるDJ Mighty Miは度々Alchemistと比較される程のプロデューサーである。オールドスクールの良い意味で古臭さが滲み出る渋いビートは往年のファンの首を縦に振らせる。
このビートに合わせるはMCのMr. Eonだ。彼の野太いハードなフロウがMighty Miのビートをより一層引き立たせる。一般的にMCのラップを引き立たせるのがプロデューサーの役目だが、彼らに関しては中立及びその対極。その今までにないバランス感覚が彼らの作品をクラシックへと押し上げているのだと感じる。


12 . Madvillainy - Madvillain, MF Doom & Madlib


難解度 : ★★★☆☆  認知度 : ★★★★★

私はこの作品こそHIPHOPの歴史上最高傑作であると感じる。1曲1曲聴くごとに頭の中に貯蔵されている常識というカテゴリーがアップデートされていくような感覚。1曲に対して複数の音源をサンプリングしたMadlibのコラージュ技術を激褒したいのだが言語化するのがこれまた難儀。これは彼にしか出来ない所業であり、1つのビートとして成り立っているのが何度聴いても信じ難い。曲とは大抵言葉を発する者が主役になるがこのアルバムに関してはW主役だろう。なんならMF Doomが霞んで見えてしまうほどMadlibの存在感は凄まじいものがある。ヒップホップのみならず音楽を愛する者、いやそれに限らず全人類がこのアルバムを聴くべきであると私は強く感じる。


13 . MAY GOD BLESS YOUR HUSTLE - MIKE


難解度 : ★★★★☆  認知度 : ★★★★☆

今や自身のレーベルを持つほど大きな存在へとのし上がったMIKE。彼が今のアンダーグラウンドシーンに与えた影響はかなり大きいものだろう。sLUmsサウンドといったサンプリングループを使ったドラムレスなビートは今やアンダーグラウンドシーンの主流になりつつある。80~90年代に隆盛したBoom Bap発祥の地でドラムレスが主流になっているのはなんとも感慨深い。この作品はMIKE史上最高傑作と評され、私自身もそれには共感を覚える。MIKE自体dj blackpowerという別名義でテクノ要素が入ったInstrumentalを作ったり、コンスタントに作品を出して続けているのも流石だ。それだけでなくその全ての作品がその年のベストラップアルバム候補として挙がるほど完成度が高いのも彼最大の魅力である。


14 . Song of Sage: Post Panic! - Navy Blue


難解度 : ★★★☆☆  認知度 : ★★★★☆

彼の作品の多くは悲観的で内省的な作風が大半を占める。今の時代、自分の感情をさらけ出せる場面は限られており、その多くがネガティブで、誰かに手を差し伸べて欲しいというある種の願いのようなものだ。しかし彼がさらけ出す感情は悲観的であるものの、そのネガティブな感情をプラスに変え、前向きな思考へと巡らせる過程を描いているものが多い。彼が送ってきた人生の道のりを優しくメロディアスなドラムレスビートに乗せる事で、その時の情景を容易に浮かび上がらせることが出来る。彼の音楽的センスは然る事乍ら、文学的にも非常に優れている事が理解出来る傑作だ。


15 . Fair Exchange No Robbery - Nicholas Craven & Boldy James


難解度 : ★★★☆☆  認知度 : ★★★★☆

2022年、アンダーグラウンドシーンに落とされたこのアルバムは即座にクラシック認定された大名盤。
近年のプロデューサーの中で頭1つ抜けているNicholas Cravenが、Boldy Jamesの囁くようなフロウと一定のバランスを保ったバラエティに対して大胆なサンプリングループを使っていたのが印象的だ。一見シンプルで単調に聴こえなくもないが、Boldy JamesというMCはどんなビートでも自分のリズムを崩す事なくラップを乗せることが出来る。だからこそNicholasは大味になりそうなサンプリングループを容赦なく使用をする事を選んだのだと感じる。何にせよこのアルバムはヒップホップ史に語り継がれるであろう大名盤である事に変わりはない。


16 . GUMBO'! - Pink Siifu


難解度 : ★★★☆☆  認知度 : ★★★★★

彼は近年のMCの中で特にユニークな存在だ。ヒップホップの垣根を越え、ネオソウルやジャズ、時折アンビエントの境界を行き交う音楽性は唯一無二と言えるだろう。彼の音楽性を支えるのは彼自身の感情的エネルギーだ。M3のRoscoe'!はM1のゆったりとした雰囲気とは打って変わってノイジーなトラップビートを用いている。その次のM4ではまた一気にノスタルジーな雰囲気に包まれたジャジーなビートに再着陸する。彼が作る音楽というのはこうした一人間の感情の浮き沈みを表現しているようで、共感する部分が他のアーティストの作品に比べて多いのが特徴的だ。


17 . Noice Kandy 3: The Overdose - Rome Streetz


難解度 : ★★☆☆☆  認知度 : ★★★★☆

今やNYの顔と言っても過言ではないRome Streetz。Griselda加入後凄まじい勢いで登り詰めてきた彼は、これまでの苦難に満ちた人生を赤裸々に綴る事が多い。そのラップは一見荒々しくも見えるが非常に繊細で、逆境に打ち勝ってきた彼の根気強さや奥の方で燃え続ける消えることの無い闘争心が垣間見える。この作品に関してはビートも多種多様で古典的なBoom Bapからサンプリングループを用いたドラムレス、ネオソウル的なLofiなビートまでありRome Streetzの数ある作品の中で最強だと言えるでしょう。


18 . Retropolitan - Skyzoo & Pete Rock


難解度 : ☆☆☆☆☆  認知度 : ★★★☆☆

Skyzooは90年代のEast Coast Hiphopを継承する正統派及び硬派なMC。流動的でスキルフルなラップには毎作魅了される。それでいて今回タッグを組んだのはかのレジェンド・Pete Rockだ。彼の良い意味で古臭く、シンプルでソウルフルなビートは一気に私達の時間を90年代へと巻き戻していく。まさしく彼の全盛期のビートであり、その進化は留まる所を知らない。これぞ王道のHIPHOPの形!と言わんばかりに首を縦に振らされる。


19 . Reasonable Drought - Stove God Cooks & Roc Marciano


難解度 : ★★★☆☆  認知度 : ★★★☆☆

アンダーグラウンドシーンの客演王は?と聞かれたら真っ先に思い浮かぶのはStove God Cooksだろう。彼のソウルフルでグルーヴィーなラップには幾度となく魅了されてきた。Roc MarcianoとCooksは師弟のような深い関係であり、今作ではRocがプロデューサーに回り、Cooksのラップに援護射撃を送る形となっている。客演でも存在感を存分にギラつかせるCooksだが、ソロでもその存在感は消えることはなく寧ろさらに威力を増している。


20 . Half God - Wiki


難解度 : ★★☆☆☆  認知度 : ★★★★☆

RATKING時代から注目を浴びてきたWikiは、同グループが解散しソロで活動するようになってからさらに脚光を浴びることになった。今作は同郷のNavy Blueが全曲プロデュース。Navy Blue自身もマイクを握った他、Earl Sweatshirt, MIKE, Remy Banks, UKからJesse James Solomonが参加した。全体的にStanding On The Cornerのようなフュージョン感やネオソウル系統の音が多く用いられている他、サンプリングループを使ったドラムレスも使い、近年のアンダーグラウンドシーンを象徴する音が一挙に集結しているのが印象的だ。


次回予告

次回は"Underground Rap 中級編"を掲載致します。今回の記事同様、20枚選出いたしますのでお楽しみに!
入門編よりもっと踏み込んだ域の作品を紹介します。未だ見ぬ世界へ足を踏み入れたい方は、次の記事からが本番ですので心の準備をして、気長にお待ちくださいませ。


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