最近話題にしているM&Aについての考え方をお話をさせていただければと思います。
ナレッジスイート株式会社時代に、5社のM&Aを実施しました。
当社のM&Aは非常にうまく行っておりますが、その理由と、M&Aで失敗する理由をまとめて行ければと思います。
昨今話題となっている大手M&A仲介会社の収益源は手数料ということは重々承知しているかと思います。大手M&A仲介会社の営業担当者は、小さい数億のディールを好まず、成績の為に大きいディールを扱うのが大手M&A仲介会社の形です。
よって最近ニュースにもなった大手M&A仲介会社の社員の給料が極端に高いということが話題になっています。
規模的に言うと5億円以上のディールで表に出ているディールで言えば、買収価格平均10億円前後が中心になっているかと思います。
実際当社は以前にもお伝えしましたが、大手M&A仲介会社を経由して4社の意向表明出しました。結果上記の図のようにBITになり降りたのが実情です。
当社買い手側にもM&Aの基準があり、各社のように減損覚悟で買いに行くことは避けています。また大手企業が買い手であれば、10億円ほどのバリエーション規模のM&Aであっても、対象会社の減損も吸収できるので有利になるのは明確です。
数年前に面白い”大手M&A仲介会社”のディールがありましたのでお話しすると、あるSES事業を営んでおり、社員エンジニア300名抱える会社が、成長が凄かったのですが、成長に耐えられず採用にかかる資金が枯渇し、売却という案件がありました。売却希望額は10億円でした。
もちろん当社も10億円で意向表明を出しました。
名乗りを上げていた会社は4社で、その内1社が皆さんも良く知る大手企業です。結局大手企業がこのディールを勝ち取りました。
このディールの勝ち方が、大手だからこそでき、当社では手も足も出なかったという仕組みをお話しすると、M&Aで勝ち取ったのではなく、なんと「採用費」で勝ち取ったということです。
1人のエンジニアにかかる採用費を400万円で設定し、300名のエンジニアを採用費400万円×300名の12億円で一気に300名のエンジニアを手に入れたというスキームです。大手だからできるスキームでほんと驚きました。
あとあと聞くと大変なことが起こっていたのですが・・・
何が言いたいのか?というのは、M&Aはもちろんサービスやついている顧客も重要なのですが、一番M&Aにおいて重要なのは「役員・従業員」であるということです・
では小さいディールは、社長自ら相手先を取引先を中心に見つけるのが一般的で、また小さいディールのみを扱うM&A会社も出てきました。
小さいディール程、売り手は不利な条件になる為、各社BITで戦うことは少ないのが実情です。またやはり手数料ですね。
では不利な条件になる理由をお伝えします。
・純資産が少ない。
→会社の基本価値が無いことから、経営成績でしかバリエーションが付きづらい。売上規模が大きければカバーできる部分もある。
・社員数(業務委託や、アルバイト、派遣は含まない)が少なく、またキーマンが社長又は少ない人数。
→人財(人材)のロックアップはできない為、離職による業務停止リスクが問われる。契約時に買収金額返金ペナルティ条項を付けられる。
・売上規模が少ない。また顧客数が少ない。
→人財(人材)と同じ、1社取引が切れた時のリスクが大きすぎる。売上リスクをカバーしきれない。
・創業から期間が短い。
→社長の人脈による売上。または一時的売上が付く要因(お願いされて独立など)によって独立し先が読めないことと、過去の成長曲線がわからない。
先日もあるベンチャー社長にお話をしましたが、アイデアを売ることができるのは広告代理店で、夢を売れるのは経営者。
ただ会社売却時は小さい会社ほど、夢を諦めた社長だからこそ、夢に価値は生まれなくなるということ。
2023年4月3日を持って、BBDイニシアティブ株式会社を持ち株会社として、事業会社を目的ごとに設置しております。BBDイニシアティブ株式会社はホールディングス化により、事業会社のM&Aも担当しております。では、BBDイニシアティブグループのPMIが何故うまくいっているのか?また売上が各社YoYで上がり続けているのか?
BBDイニシアティブがいくつかのポイントをお伝えしたいと思います。
・M&A後の離職が極端に少ない。
・M&A後に従業員の待遇が向上している。
・グループ間格差を無くす。
・事業シナジーによる担務分け。
・投資判断を緩ませない仕組み。
・グループ間の異動を積極的に。
・社長の役割の明確化
・人事評価に特徴がある。
・のれん償却とマルチプル倍率
当社が非常に気にするところは、どうしても売り手は買収金額に目がくらんでしまいますが、残された従業員達のことは重視されず、実際に売り手は金額に目を向けざるを得ず、従業員への待遇やこれからに目を向けられていないことが多いのも事実です。
買い手は、「子会社だから・・・」という理由で従業員の待遇が不利益になることが多いです。
BBDイニシアティブは、感情に左右されることなく会社を評価し、「役員・従業員」にフォーカスしたM&Aを行っております。
BITとなる案件は、皆が不幸になることが多いので、当社はBITには参加しません。
事業モデルは単純に、数字を見ればわかります。
ただその数字をどう支えているのか?
その数字の根拠は全て従業員なんです。
その会社を守ってきた従業員に敬意を払い、従業員への価値で算定しているつもりです。
その従業員達が辞めてしまったら、会社は成り立ちません。
また従業員達が辞めてしまったら、従業員についてきているクライアントにも迷惑がかかります。
買収金額は買い手同士の感情に左右されることなく、従業員の価値を算定し従業員を守って行けるかどうか?で検討を進めていければと思っています。
従業員の価値算定とは?長くいていただく為の従業員の評価の最大化です。
「買収に大きなお金を使ったから・・・」それは買い手が感情で動いてしまった都合であって、従業員は一切関係ありません。「コスト削減の為に」という買い手の理由で従業員の評価に手を回す。従業員は一生懸命に頑張って会社を支えているのに。
一番M&A後に、買い手は自社の基準で従業員の評価に手を下してはいけないことだと思っています。
買収後は、売り手は実態をわからないのが実情ですし、わかったとしても従業員を守る手が無いというのが実情です。
特にBITとなり高いバリエーションでクロージングした案件程、厳しい現実が待っています。売り手は関係ないことですので、高い金額になることを望むのは仕方ありません。
希望で夢を膨らませる売り手社長に、多くの実情をお伝えし、また多くの経営者にM&Aの基準やルールなどを伝えさせていただいております。
良い出会いがありますように。