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朱に交われば赤くなる

同じ研究室から、優れた若手研究者が続々育って巣立ってゆくのは決して偶然ではありません。個人が生まれ持っている才能や、それぞれの日常的な努力ももちろん重要ですが、交友関係は大きな影響があります。聡明で研究熱心な若者が一人いるだけでも、周囲の若者はそのよい知的刺激を受け、切磋琢磨して、そろって向上できます。研究室の教授や研究指導者などは、当然のこととして、よい知的刺激をもたらすように自覚的に努力することは常に大事ですが、実際には、それ以上に、同世代、同年代の若者同士の相互の影響が効きます。プラスの場合だけでなく、マイナスの場合もあることに注意が必要です。口を開けば不平不満ばかりの人のまわりには、そんな人が集まりがちです。学会の懇親会などで、助教クラスの若手研究者が集まって、ろくに実験しない、できのわるい学生の悪口、自分の研究をあまり評価してくれない教授の陰口ばかりいつまでも盛り上がっている集団を見かけることがあります。もちろん、そんな人たちばかりではないですが、せっかくの才能、せっかくの人生を台無しにしないためにも交友関係には注意が必要です。そんなことではなく、同じ時間を使うのならば、もっと前を見て、もっと研究の将来を熱く、それこそいくら時間があっても語り尽くせないほど語れるようでありたいものです。

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現代は科学が進歩した時代だとよく言われますが、実のところ知識を獲得するほど新たな謎が深まり、広大な未知の世界が広がります。私たちの知識はほんの一部であり、ほとんどわかっていなません。未知を探索することが科学者の任務ではないでしょうか。その活動は、必ずしも簡単なものではなく、後世からみれば群盲評象と映ることでしょう。このマガジンには2019年12月29日から2021年7月31日までの合計582本のエッセイを収録します。科学技術の基礎研究と大学院教育に携わった経験をもとに語っています。

本マガジンは、2019年12月29日から2021年7月31日までのおよそ580日分、元国立機関の研究者、元国立大学大学院教授の桜井健次が毎…

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