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ジャンプ+の歴史を塗り替えた「ラーメン赤猫」の小さな革命

趣味はなんですか?と聞かれたとき「マンガです」と答えている。
それほどにマンガが好きだ。大好きだ。

健やかなるときも、病めるときも、
仕事で失敗して凹んでいるときも、不誠実な対応をされて腹を立てているときも、
読み始めると寝食を忘れるほどに没頭してしまうくらいマンガが好きだ。

こう言うと部屋の壁一面にマンガの棚を積み上げていると思われるが、正直そこまでの冊数は持っていない。
せいぜい1000冊程度。
マンガ好きの風上にも置けない。


雑誌やコミックスだけでなくWEBマンガも嗜んでいる。
週刊少年ジャンプのWEB版である「ジャンプ+」はお気に入りサイトのひとつだ。
このサイトでは「スパイファミリー」や「怪獣8号」などのビッグタイトルが目立つ中、「ラーメン赤猫」という作品が密かに人気を博している。

あらすじとしてはこう。

人間のいない、猫だけが営むラーメン屋に面接に来た珠子。猫の店長に猫好きか聞かれ、珠子は正直に犬派と答えるとあっさり採用される。しかし仕事内容はラーメン屋ではなく、猫のお世話係で…!?

少年ジャンプ+「ラーメン赤猫」https://shonenjumpplus.com/episode/316112896905504410
より 

今回は作品の面白さではなく、この作品が起こした小さな革命についてお話したい。


「ラーメン赤猫」は、ジャンプ+の中でもインディーズ連載という枠でスタートした。

ジャンプ+では、ジャンプルーキー!というマンガ投稿サイトでランキング上位に入った作者に対して、報酬としてジャンプ+の連載枠を設けることがある。これがインディーズ連載だ。

インディーズ連載は、公開して3日間の閲覧数に応じて原稿料が変動する、作者に広告料が還元されないなど、本連載とは異なる部分が多くあるが、その中でも一番の違いは「作品のコミックスが刊行されない」ことにある。

自作品のコミックス化は、すべてのマンガ家の夢だ。
かたちとして手元に残ること、書店に並べられているのを眺めること、どれをとってもマンガ家を目指す人が叶えたい光景だと思う。

ただ、ジャンプ+のインディーズ連載ではコミックスの発刊ができない。
そういう契約になっていた。


ラーメン赤猫はインディーズ連載として掲載がスタートしてからというもの、ジャンプ+全体で見ても本連載の作品に引けを取らないほどの人気を誇っていた。

ジャンプ+全体のランキングの中でも、並み居る強豪(本連載作品)の中で奮闘。かわいい猫のスタッフたちがラーメン店を上手に切り盛りするやさしい世界観に、読者の誰もが魅了されていった。

しかし、作品の魅力が増していくにつれて寂しさも募っていく。こんなに素晴らしく、またきちんと数字も出している作品が、単行本として手に入らないからだ。頼むからお金を払わせてくれ。

「なんとかしてコミックス化されることはできないだろうか」
無力さを感じながら公開された話を閲覧し、イイジャンを押し、Twitterで布教する日々が続いた。


そんな中、作者のTwitterアカウントからひとつのツイートが投稿される。

ラーメン赤猫の単行本化が決定したのだ。
イラストには、文字通りそれまでのシステムを”塗り替えている”様子が描かれている。

この報せには、私を始めとする全てのジャンプ+読者が驚嘆した。
それは単に、「インディーズ連載作品からコミックスが生まれた」という理由だけではない。

それまで、ジャンプ+でインディーズ連載として始まった作品は、インディーズ作品として終わる運命だった。
つまり、作者がいかに頑張ろうと、どれだけ人気が出ようと、インディーズ作品として掲載が始まった以上、その作品を終えるまでは本連載として扱われることはない。
新たな作品を生み出し、連載会議のテーブルに乗せ、運と実力で編集部を納得させない限り本連載作品とはならない。

そんな枷を自力で打ち破り、新たな道を切り拓いたのが『ラーメン赤猫』だった。


ラーメン赤猫が残した功績は、インディーズ作品を連載している作者たちにとって、インディーズ連載枠を狙うマンガ家志望者たちにとって、またそれらの作品を推している私たち読者たちにとって、非常に大きな意味を持つ。

インディーズで始まったからと言って、コミックス化の夢をあきらめてはいけない。
描いたひとつのキャラクターが、応援したひとつのツイートが、細く長いコミックス化の道へ続いている。
私たちのやることに意味はあるのだ。

ラーメン赤猫が起こした”小さな革命”に他の作品が追随していけるように、私はこれからもマンガ作品を分け隔てなく応援していきたい。

Twitterでは時々ネコの画像を投稿しています。お好きな方はぜひご一読を。