冷やすことの重要性

今では野球選手が肩を冷やしたりとアイシング(冷却療法)は当たり前の光景になりつつありますがそれを納得して取り入れているのは一流スポーツ選手が中心で、まだまだ庶民の間には「温めた方が血行がよくなるから」という根拠のない風説に捉われているようで、街の医療機関でも温めている始末。アイシングが庶民レベルまで浸透するにはもうしばらくかかりそうです。

痛いところは温めた方がいい?

痛いところはカイロなどで温めた方が良い。
これが事実無根であることがもう常識かと思います。
本当に温めた方が早く治るんですか?答えから言えば、むしろ「治る期間を阻害している」としか言いようがありません。

温めると早く治ると信じている方の思考を紐解くと
「温めると気持ちが良いから早く治る」
「温めると血行がよくなるから早く治る」との考えからだと思います。

温めると気持ちが良いから早く治る。気持ちが良い事をすれば早く治るというのは、イコールでは結べません。
良薬口に苦しという言葉があるように、早く治るためには多少苦痛の事だってあります。

例えば、お肉やお魚があって、これを傷ませない様にするには「冷やし」ますよね。
何故ですか?そのほうが細胞の鮮度を保つからです。

人間と肉や魚の組成はみんな同じ蛋白質なんです。
人間だって熱を加え続けたら、組成を壊していきます。

痛む所は熱の反応によって刺激している所。炎症が強いと腫れてきますよね。
ただでさえ、うつ熱している部分に気持ちが良いからと熱を加えるというのはその部分の細胞老化を早めているだけになり、症状を長引かせてしまうことになります。

関節の節々が痛くなると、大概病院では「関節炎」という診断名をつけますね。読んで字のごとく関節が炎にまかれているわけですから、早く冷やして火を沈下すると言うのが普通に考えた結果だと思います。

血行が良くなるのはどっち?

「でも温めると血行が良くなる」という声がまだ聞こえてきそうです。
温めれば血流が旺盛になる映像をテレビで見たことがあるかもしれません。確かに沸騰する水をみれば解るように静かだった水は熱のエネルギーをもらうと、ボコボコと動き始めます。通常、物質は熱をもらうと旺盛な運動を起こします。それは血液もしかりです。

だからといって「やっぱり温めるのは血流が良くなるんですね」と思うのは気が早いです。血管の中では大変なことが起きています。

例えば、熱めのお風呂に我慢して長い時間入るとのぼせますよね?
血液はなんとか身体を守ろうと必死で熱を溜めない様に慌て動くわけです。
その時、熱によって血球についていた栄養素は削ぎとられてしまいます。

栄養交換の役割を果たす事無く熱の対応に追われている結果、身体は異常な疲労感を残します。全身で起きればいわゆる「のぼせ」になりますが、局所で起きれば局所の「のぼせ」が起こり、その部分の老化を早めることになるわけです。
具体的にいえば、遠赤外線、カイロを局所に当て続けることがそれに当たります。

一方で、冷やすと血球に結びついている栄養素を壊す事無く流れが規則的になり、栄養交換がスムーズに行われます。
熱を加えると一見旺盛に見える血液の流れは、実は規則性を失い血管内抵抗が増え、むしろ流れが悪い状態を招いています。比べて冷やすと流れの規則が整い、しっかりと血液の役割を担うことで痛めた個所の回復もどんどん促すことができるのです。
もちろん、熱を防いで細胞の鮮度を保ち、新たなダメージを負わせない事も回復を促す大事な一因です。

野球中継で当たり前となった投手の肩のアイシングは、上記説明を表す代表的な例で、以前に比べると投手の選手生命が上がったのは周知のことですよね。要するに回復を促し鮮度を保った結果です。

どんな物で冷やす?

よく湿布やアイスノンでも良いですか?という質問を頂きますがこれらとアイシングはまったく違うものと認識する必要があります。

まずアイシングと同じと認識しがちなアイスノンですがこれは中に入っている冷却ジェルを凍らせると-16℃ぐらいまで下がります。このマイナスのエネルギーをもった冷却材を患部につけると、相手方を凍らせるエネルギーをもつため凍傷を起こしてしまいます。
また湿布は皮膚表面温度を3℃ほど下げる事は確認できていますが深い患部の熱を取り去る事は出来ません。
ヒヤッとするのは薬品の効果で実際に冷たいわけではないんです。

とても安全かつ効率的に熱を奪えるのが「氷嚢」なのです。
またはビニール袋でも代用可能です。
氷と水を入れ、患部に20分程度あてるのがアイシングです。

これからの新常識

冷やす理由お解りいただけたでしょうか?少しずつアイシングの効果が浸透していますがまだ多くの方の意識が「温めると血行が良い」という観念に捉われています。

街の医療機関でよくある話ですが関節炎や筋の炎症と診断して、炎症と診断したにも関わらずリハビリで温めようといって、帰りに冷湿布出しておきますという。皆さん当たり前に言われるがまま治療を受けていますけど冷静に考えておかしい事に気づきませんか?

アイシングは安全かつ効果的な治療法です。
間違いありません。
ジワジワと常識が温から冷に変わりつつある過渡期といえるでしょう。

肩や腰が痛い時にカイロを貼ると気持ちがいいからという理由で貼るのは絶対にやめて下さい。

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