ゲーリー・ウィルソン 『インターネットポルノ中毒』 DU BOOKS

●は本からの書き抜き、★は気づいたこと。

●欲求についての研究は、多様性は過剰消費と強く関連していることを示している。テーブルの主菜がミートローフだけの場合に比べ、ビュッフェでは食べ過ぎがちだ。(P29)
★選択肢が多い場合、人はできるだけ多くを消費しようとする

●性的な関心は条件づけられる(変えられる)。ー中略ー ちなみに性的関心は根本的な性的嗜好とは別物だ。
勃起に導かれてジャンルからジャンルへとさまよううちに、一部の若い利用者は、自分の性的アイデンティティに合致しないように感じるコンテンツへの移住してしまう。(P69)
★ポルノを見ているうちに、より強い刺激を求めて様々なコンテンツを渡り歩く?

●交際関係もまた、ポルノ利用に影響を受ける。これは筋が通っている。刺激が多すぎると、科学者たちが雌雄連結の形成と呼ぶもの、または恋に落ちるのが阻害される。科学者たちが、雌雄連結を形成する動物をアンフェタミンで興奮させると、自然のままだと一夫一婦制の動物たちが、もはやパートナー一匹では満足しなくなる。人工的で異常に強烈な刺激が動物の絆形成機構を乗っ取り、普通の(乱交的な)哺乳類と同じにしてしまうー持続的な絆を作る脳の回路が抑えられてしまうのだ。(P77)
★雌雄連結の形成;google上ではそのような用語は見つからず。文章から推測するに、一夫一婦制に自然になることだと解釈できる。

●セックスを求める欲望と動機は、ドーパミンという神経化学物質からおおむね生じる。ドーパミンは報酬回路という脳の原始的な部分の核を刺激する。その部分は渇望や快楽を体験し、中毒になる部分なのだ。
この古代の報酬回路は、生存を進めて遺伝子を残すための活動をするように仕向ける。人間の報酬一覧のてっぺんにあるのは、食べ物、セックス、愛、友情、目新しさだ。こうしたものは「自然報酬」と呼ばれ、中毒性の化学物質(こちらは同じ回路を乗っ取れる)と区別される。
ドーパミンの進化的な狙いは、遺伝子に奉仕することを人がしたくなるように仕向けることだ。分泌量が多ければ、それだけ何かを欲しがったり渇望したりする。
中略ー
ドーパミンはときに「快楽分子」と呼ばれるが、実は快楽のために探し回るためのもので、快楽そのものではない。だからドーパミンは期待とともに高まる。
(P90)
★ドーパミンが快楽そのものでなく、期待とともに高まるものであれば、ギャンブルの際もアタリを引くまでにドーパミンが出続けていることになる。つまりアタリを期待させる仕組みさえあれば、ドーパミンがでて、その行動を欲求し続けるようになる。

●ドーパミンが急増すると、増感を作り出す神経科学的な事象が開始されるが、増感を引き起こす本当のスイッチはDeltaFosBという灰白質だ。ドーパミン急増はDeltaFosBの生産の引き金となる。
ー中略
DeltaFosBは科学者が「転写要素」と呼ぶものだ。それは報酬回路を物理的、科学的に替えるきわめて特定の遺伝子のスイッチを入れる。ドーパミンは建設現場で命令を怒鳴る現場監督で、DeltaFosBはセメントを流し込む作業員だと思えばいい。ドーパミンは「この活動は本当に重要だぞ、何度も繰り返してやるんだ」と怒鳴っていて、DeltaFosBのしごとはそれを確実に覚えて繰り返すようにすることだ。(P105)

●重要なのは、DeltaFosB蓄積につながる高いドーパミンの仕組みは、性的条件づけと中毒の両方を開始するということだ。どちらもパブロフ的な、快楽の超記憶(増感)で始まり、それが強力な「またやれ!」衝動を引き起こす。(P107)

●渇望が増して利用者にポルノをドカ食いさせると、報酬回路の過剰刺激で局所的な反乱が起きる。DeltaFosBがドカ食いのアクセルペダルだとすれば、CREB分子はブレーキだ。CREBは快楽反応を鈍らせる。ドーパミンを抑制する。
ー中略
奇妙なことに、ドーパミン水準が高いと、CREBとDeltaFosBの両方の生産が刺激される。
ー中略
CREBがもたらす、快楽反応鈍化はしばしば「脱感」と呼ばれる。これは耐性につながる。耐性とは「同じ効果を実現するためにさらに多くの量が必要となること」だ。耐性は中毒の鍵となる特徴だが、完全な中毒に見られる脳変化すべてを発達させなくても起こり得る。物質中毒者はCREBの効果を克服するために摂取量を増やす。(P107-108)

●性行動、ギャンブル、アルコール、ニコチン、ヘロイン、クリスタルメスなどの場合、何千もの脳研究が、あらゆる中毒が同じ根本的な脳機構を改変し、認知された解剖学的、科学的な変化を引き起こすのを裏付けている。中毒専門家は、行動中毒と物質中毒が根本的に同じ疾患だということをもはや疑ってはいない(P125)

●では中毒が引き起こすらしい4つの根本的な脳変化とは何だろうか?単純で非常に広範な言い方をすると、①増感、②脱感、③機能不全の前頭葉前部回路(前頭葉低活性化)、④ストレス系の誤作動となる。(P126)

●まとめると、この4つの神経可塑的変化がしゃべれるなら、「脱感」は「満足が得られないよ」とうめき、「増感」はその人のわき腹をつついて「ねえねえ、おあつらえ向きのブツがあるんですがね」と言うが、それはまさに脱感を引き起こしたものとなる。前頭葉低活性化(前頭葉前部回路の機能不全)は肩をすくめて「やめといたほうがいいが、私はやめさせる力がない」とため息をつき、「誤作動するストレス系」は「この緊張を和らげるために、いますぐ何かをよこせ!」と絶叫していることになる。(P131)

●中毒者は、その人が使う物質で決まるのではない。利用の量や頻度ですらない。中毒は、報酬をもたらす物質や報酬をもたらす行動に曝されたときにその人の脳内で何が起こるかにより決まるのである。
ー中略
研究によれば、超常刺激はごく少量でも急速に脳を変え、行動を変えられる。(P136)

●ドーパミンは射精寸前でピークに達する。したがって寸止めはドーパミンを自然の限界までたかめたままにして、それを何時間も続けかねない。脳は興奮と、その視聴者が見ているものがなんであれ、それとのつながりを強化しろという強い信号を得ることになる。(P194)

●本当に重要なのは、報酬回路ドーパミンの増大だ。尋ねるべき問いは、「いま体験している問題につながったのは、どんな種類の脳の訓練だったっけ、そして自分はなぜそれをいま繰り返そうとしているんだろうか?」ということだ。(P197)

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