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NODE

メタバースプラットフォームclusterに『NODE』というワールドを公開しました。NODEをコンセプトとした写真展示ワールドです。バーチャル空間にリアルで撮影した写真を展示しています。

ワールド内には主に「渋谷の都市モデル」「展示空間」「展示写真」の3つのものが配置されています。それらは無関係のように見えて互いに関係し合う空間をつくりました。

1. NODEとは

都市内部にある主要な地点。交通路が調子を変える地点。道路の交差点や集合点、あるいはひとつの構造が他の構造にうつり変わる地点などである。次にNODEは単なる集中点であることもある。つまり町カドの寄合い所とか囲まれた広場のようになんらかの用途または物理的な性格がそこに凝縮されているために重要性をもつものである。

都市のイメージ / ケビン・リンチより引用

都市空間における交差点や公園を指し、多くの人やモノ・文化が混じり合う点です。
NODEを「2項対立の関係にある2つの要素の交わり」と再定義し、ワールド制作を行いました。
異なる2つの要素が混在した時にどのように「調和」されるかを考えた時に、「同化」と「対比」が混在していす。
今回のワールド制作では「対比」に焦点を当て、2つの異質なものがどのようにバランスをとって調和させているかを考えながらワールド制作しています。

2. 制作したワールドの空間について

3D都市モデルPLATEAUを利用し、渋谷をリアルに再現しました。
(UNITYを介したことでテクスチャーの画質が落ちちゃったのが残念。)
なぜ渋谷を対象にしたかというと、「2つ要素の交わり」が写真展示のテーマなので、人や文化が行き交う世界一有名な交差点があるからという安易な考えからです。
「若者の町」や「新しい文化の発信拠点」などと形容されることが多い渋谷ですが、渋谷の歴史について調べてみると、都市と地形が大きく関係していることがわかりました。

都市 × 地形

渋谷はかつて大きな川が流れ、侵食作用によって谷が形成されました。
すり鉢状の谷の中心が今のスクランブル交差点に位置しています。
川によって長い年月をかけて地形はつくられ、水を生かした生活圏が出来上がりました。水と密接に関わりながら、そこで生まれた文化が今の渋谷をつくりあげることに繋がっています。 

そんな渋谷の水によってつくられた文化と地形の形成という膨大な時間の蓄積との関係性をワールドで表現しようと思い、一面を水面としました。大都市渋谷を水面で満たす事で、かつて川だった記憶を再帰し、都市×地形の関係を対比的に表現しました。

水で満たされた渋谷

分断 × 連続

渋谷の都市構造は、谷底のスクランブル交差点を中心に放射状に道が伸び、そこから枝分かれした小さな坂が編み目状に張り巡らされています。
曲がりくねった坂道が連続していることから、町を歩いているとどこまでも道が続き建物が連続しながら視線は見えがくれし、奥へ奥へと導かれるような感覚になります。渋谷の特長である坂道と曲がりくねった道によって、視覚的に見えていたものが見えなくなったり、突如として大きな建物が目の前に飛び込んできたりと、町を歩いていてもスリリングな体験で、常に分断と連続が入り交じり、複雑な都市空間を構成しています。

製作したワールドのスクランブル交差点の中央に展示空間を配置し、渋谷の分断と連続を取り入れ、都市構造を抽象化したような空間構成にすることを考えました。

  1. 視覚的に繋がっているけど、動線が分断されている。

  2. 一つの部屋として区切られているようで、空間的に繋がっていて一つのワンルームのようにも感じられる空間同士の連続性を感じられる空間。


展示空間の分断と連続

渋谷のような分断と連続が展示空間の中で体験できることで渋谷らしさを空間的につくりました。

また、展示空間の平面計画は渦巻く2つの壁が交差するように計画しました。中央付近から放射状に広がっていくような渋谷の特長を生かした形状を意識したのと、「2つの要素の交わり」がコンセプトなので2つの壁を交差するように配置したという意図もあります。

渦巻く2つの壁 (館内案内図)

地 × 図

「ルビンの壺」は背景に黒地を用いた白地の図形で、「向き合った2人の顔」にも「壷」にも見えるという特徴を持つ図形です。
見方を変えれば対象と背景の関係が反転するというものです。

ルビンの壺

展示空間を構成している壁は2重の壁になっています。
壁の隅角部では内側の壁と外側の壁の関係性が反転し、今まで外側にあって見えていなかった壁が隅角部で突如姿を現し、内部空間を構成する壁に反転します。「地と図の反転」を展示壁のデザインに取り入れてみました。

地と図の反転を用いた展示壁のデザイン

3. 展示写真の解説

ここでようやく展示写真の説明に入ります。
展示した写真についてぐだぐだと書いているので興味あるとこだけ読んでみてもいいです。

表 × 裏

横浜の吉田町にある、築60年以上ある古い鉄筋コンクリート造の防火帯建築です。
建物は並木道のある大通りに面して建ち、ギャラリーやカフェなどの店舗が入居し、に対して開けた建物です。
一方建物のは道が狭く、外壁には空調の室外機が並び配管が露出しています。あまり見栄えが良いとは言えず、建物の裏の表情をしています。この建物は開けた大通りに面した表の顔と狭い路地に面した裏の顔の2面性があると言えます。
ところが、あたりが暗くなったところで状況が一変します。今まで裏の顔を持っていた路地に人が集まり、楽器を持った人たちがジャズの演奏を始めます。路地の狭いスケール感や、街路灯によってライトアップされた路地裏がジャズの演奏と非常にマッチし路地裏でジャズを聴くという不思議な体験が非日常間を演出します。の要素だった場所がジャズ演奏によってに変わる瞬間です。昼間は表としての顔を持っていた大通り側では、店舗が閉店し閑散とした裏に移り変わります。ルビンの壺のようにが反転の瞬間です。

伝統 × 革新

歴史的建築物『平城京』と平城遷都1300年祭のときに平城京と同じ敷地内のに仮設で建てられたイベントホール『まほろばステージ』
『まほろばステージ』の工法は小断面の集成材を複数本束ねて柱梁を構成し、平城京の伝統木造の木組みの美しさと調和させています。

光 × 影

フランスに建つ『ル・トロネ修道院』と京都の茶室建築『松向軒』。
西洋と日本の光と取り入れ方の違いがあります。
『ル・トロネ修道院』は石の厚い壁でつくられ、リズムよく並んだアーチの開口から闇を切り裂くように鋭い光が差し込み、床に光と影の強いコントラストを生みます。一方『松向軒』は深い庇によって光が遮られ、薄い障子のフィルターを介して入射した光は室内をぼんやりと照らし、陰影をつくります。西洋では光を取り入れているのに対して、日本は光を取り入れることで影をつくっていると言えます。
モデリングした展示空間において、光の演出を意識して製作に挑みましたがUNITYスキルの問題でうまく表現できずでした…

自然 × 人工物

・『モン・サン・ミシェル』『厳島神社』の写真を展示しました。どちらも水面に浮んでいるのが特徴的で、まるでかつての渋谷のようです。

・京都の『瑠璃光院』
日本では古くから外の環境を取り入れ自然と建築が共存してきました。
室内から外の自然の眺望を取り入れた建築はたくさんあるけれど、外の自然が床に反射して入り込んでくる演出は珍しいです。

内部 × 外部

岡山後楽園内の『流店』と『MIYASHITA PARK』
『流店』は細い柱だけの構造となっていて、四方開放的な内部空間を有しています。庭の水路が建物内部に引き込まれ、まるで外部のような内部空間になってる建築です。
『MIYASHITA PARK』では内部的な行為が外部に滲み出し、外で食事をしている人が多くいます。外部が内部的な使われ方をしている建築です。内部と外部を2つ対比的な建築を比較して展示してみました。

過去 × 現在

『メゾン・カレとカレ・ダール』
フランス南部のニームにある紀元前に建てられ古典建築『メゾン・カレ』とその向かいの敷地に立つ『カレ・ダール』の写真を展示しています。
石造りの重厚なオーダー(柱)が細かいスパンで連続している『メゾン・カレ』に対して、『カレ・ダール』は細い鉄骨柱で長いスパンで連続していて、重厚な石と軽やかな鉄骨を対比されるとともに、柱の連続性によって古典建築との調和を図っています。

『リオンオペラハウス』と『伊勢神宮のせんぐう館』も同様に過去と現在を対比と調和によるデザインです。

04. リアル × バーチャル

このワールドは実際の渋谷をロケーションに渋谷の3Dモデルを活用し、歴史や都市を紐解き、リアルで撮影した写真をバーチャル空間に展示するというものです。
リアル空間とバーチャル空間の差別化せず同等に扱いnoteも書いてみました。現実の話をしているのかバーチャルの話なのか混乱した人もいるかもしれません。いないかもしれません。
リアルとバーチャルがシームレスにアクセスできる未来が来たら楽しいよね!

終わり


参考文献
・都市のイメージ
・渋谷の秘密

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