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物語を解体してみる


メタバース上にワールドをつくっていく中で、あらゆる創作物や建築との共通点や対照的な点について考えていたことを記事にしてみた。

■物語を表現してみる


あらゆる創作物やデザインされたものの背景には人との物語があるように感じる。

例えば
コーヒーカップからコーヒーを飲むという行為を連想し、複数のカップが並ぶと人々がコーヒー片手に談笑するという場面が浮かんでくる。
談笑によってカップと人との間に物語が生まれる。そう考えるとカップのデザインは談笑するという物語のデザインと言い換えることができそうだ。

物語はあらゆる方法で表現することができる。
・文字で表現すると小説となり
・絵で表現すると絵画となり
・ CGで表現すると”アニメとなり
・音で表現すると音楽となり、、、
表現方法が異なるが、根底には物語をつくるという共通のプロセスが存在している。

■物語に寸法を与えてみる


建築も同じで人との物語を考えながら建築を考えている。
例えば、
家の中でどこからともなく聞こえる子供の笑い声とともに、ソファで寝そべって読みかけの小説を読もうとするも集中できない。ふと窓を見ると庇に遮られた日の光が床に反射し、室内を明るく照らす。窓が切り取る外の景色は青々と生茂る木々が見える。

そんな日常的なワンシーンを想像する。
このようなシーンを一つずつ描き出すことで、物語を形づくっていく。ミステリ小説の綿密な伏線を張り巡らせるように、それぞれのシーンを組み立て、相互に絡み合うことで、空間に個性が表れてくる。

つくりだした物語にあうように素材を選定し、そこに寸法を与えていく。物語をつくるだけならただのフィクション。
そのフィクションをノンフィクションにしていく作業だ。
広すぎると間抜けになるし、狭いと機能しない。適切な寸法を与えることで空間に緊張感が生まれる。
つまり、『物語に寸法をあたえるのが建築』と言い変えることができる。

■物語を解体してみる


そこで、メタバース上につくるバーチャル空間について考えてみる。
リアルに近い自然現象や都市を再現したワールド、物理的制約から解放され現実では実現できないような構造物のワールド、コンセプチュアルなアート作品の様なワールドなど、様々なワールドが日々出現している。自分の分身であるアバターでワールド内に没入していく。没入するための空間や体験がデザインされていることから、
『物語に没入するのがバーチャル空間』
と言えそうだ...

と、結論付けようと文章を書いていたが、書きながらもっとメタバースは自由な空間なのかもしれないと思い始めた。

建築の例ではフィクションからノンフィクションへの変換作業を、『物語に寸法を与える』と表現したが、メタバースではフィクションはフィクションのままでいい。物語に寸法を与える必要がない。
創作した複数の物語が関係性を持たず空間として現れると想像力を掻き立てるかもしれないし、唐突で突拍子のない物語の方が逆におもしろいワールドといえるかもしれない。
先日『本の森』の解説文を公開したが、つくったものに言葉を与えた途端、なんだかつまらないものとなってしまった。(私の言語化力や考えがそもそもつまらないということもあるが。)
謎のワールドは謎のままの方が想像力を掻き立て、余白があったほうが面白いということもある。

とりあえず
『物語を解体するのがバーチャル空間』

と仮説を立ててみた。

解体した物語をどのように再構築していくかを今後のワールドづくりを通して考えていきたい。

※『物語に没入するのがバーチャル空間』と結論付けようと文章を書いていたが、書きながら方向転換して考えが変わっていった。特にゴールが見えないまま書いていたので具体的な事例など示せないまま、それこそ「フィクション」のような文章になってしまった。


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