振り返りの考察
振り返りのための思考モデル
視点:二元モデル
どのような思考も「はい」または「いいえ」のどちらかの視点をとる二元論的判断の複合体と考える。複雑な思考も細分化するとシンプルな問いの組み合わせで表現できる。
そして、視点は必ず背反するもう一つの視点が存在することでバランスを取る、表裏一体のものと捉える。つまり、ある一意見(視点)には必ず対立する意見が存在する。
可/否
陰/陽
表/裏
外/内
生/死
善/悪
精神/物体
Doing/Being
I/O
二元モデルにおける観察の要点
「意見と反対意見の2つを捉える」
視野:四象限モデル
視野は、視点の組み合わせで生まれる。物事に対してどの立ち位置で捉えているのかを把握することができる。ここにおいては「はい」「いいえ」を両極においた「どちらでもない」という視点が中心となる。視野は広がれば広がるほど視点が細分化することとなり、判断材料が増えるゆえに決断を難しくする。
四象限モデルにおいては、ひとつの物事を4つの視点(→視野)で捉える。隣り合う視点には二元論アプローチで到達できるが、対偶に気づくためには四象限モデルを把握している必要がある。
インテグラル理論:個の内面/集団の内面/個の外面/集団の外面
体験学習サイクル:体験/振り返り/一般化/試行
PDCA:計画/実行/評価/改善
OODA:観察/判断/決定/行動
PM理論:PM/Pm/pM/pm
タイプ論:思考/直観/感情/感覚
二元論モデルが「物事に対する判断」であれば、四象限モデルは「物事に対する判断基準」。その物事の全体像を把握するためのマッピングともいえる。
なお、この四象限の「窓」は二元モデルを組み合わせるだけで無限に作り出すことができる。
四象限モデルにおける観察の要点
「現在の視点と隣り合う視点、隠れた視点の4視点を捉える」
視座:三位一体モデル
視点は「点」、二元モデルは「線」、四象限モデルは「平面」、となると三位一体モデルは「立体」の概念となる。四象限モデル(ヨコの発達)に対して時系列的な変化(タテの発達)を取り入れることで、その変化を捉えることができるようになる。
三位一体モデルにおける変化は「動的な概念」で捉える。たとえば時間の変化であれば、「はじまり」から「おわり」への時間軸の中での変化、そしてその基準となる「いまここ」の3つの視野によって、現象的な変化を観察し、本質的な普遍さを探る鍵となる。
過去─現在─未来
創造─維持─破壊
守─破─離
体─心─魂
意識─前意識─無意識
これらは「みえる」─「みえる+みえない」─「みえない」のつながりをもち、どれか一つが欠けると成立せず、異なる立場ながらも同時に存在する等の特徴がある。
この構造を図式化するとスパイラル状の図が出来上がる。
三位一体モデルにおける観察の要点
「並行する3つの世界を捉える」
実際の世界:多元モデル
上記3つのモデルが組み合わさり、変化しつづける動的なモデルが実際の物事や思考の姿と考えられる。「多元モデル」の中で生きる人間には「多元モデル」そのものを捉えることは不可能だろう。なんとか捉えようと観察した結果すらも、上記3つのモデルの中でしか認識することはできない。
振り返りのアプローチ
二元論的アプローチ
「意見と反対意見の2つを捉えて」
肯定(同調)的な対応:思考の強化(固定化)を促し、結果として自信を高める→判断の高速化
否定(反論)的な対応:思考の放棄(拡散)を促し、新たなパターン構築を始める→学習領域の拡大
四象限アプローチ
「現在の視点と隣り合う視点、隠れた視点の4視点を捉えて」
同じ視点で振り返る:共感を得る
隣接する視点で振り返る:異なる言語で体験を語る
対偶の視点で振り返る:体験を俯瞰する
※予め、どのモデルを使用するか決めておいたほうがよい。
三位一体アプローチ
「並行する3つの世界を捉えて」
過去を振り返る:体験に気づく。知識習得につながる。
いまここを振り返る:振り返る自分自身に気づく。意識の拡大。
未来を振り返る:創造(予期されたor創り出す未来)に気づく。本質(源)への接近。
振り返りの流れ
未分化の「体験そのもの」を言語により分化し、自己同一化へ向かう統合プロセス。非言語の体験から言語化、そして再び非言語化。
①体験の終了
感情と思考は勝手に意識を駆け巡り(時には振り返り)、どこかへ消えるor隠れてしまう。体験後は、できるだけ早いアプローチを仕掛ける。
外へ向いている意識を内面に向ける。交感神経を副交感神経へ切り替えるため、ストレスの少ない落ち着いた集中できる環境設定を。
②視点の分化:二元論的アプローチ(具体化)
体験によって生み出された感情や思考をそのまま言語化する。
③視野の分化:四象限アプローチ(具体化)
言語化された感情や思考を四象限モデルで分類(分化)し、盲点を探ると共に全容を捉える。
④視座の往還:三位一体アプローチ
盲点に気づきを向け、分化によって増幅された体験の視点に変化が促される。発達の領域に合わせて、変化の方向性を見定めながら、さらなる言語化、そして新たな意味づけを進める。
言語化という時間経過とともに、体験は過去の経験へと変化する。これは体験から意味を抽出するようにもみえる。
④視野の再統合:四象限アプローチ(抽象化)
視点の多層的な変化によって増幅した「経験(言語化済みの体験)」を四象限モデルに再配置することで、新たな意味を取り込んだ軸を形成する。
⑤視点の再統合:二元論的アプローチ(抽象化)
滞りなく処理された経験は、ものの見方(意味)として同一化に至る。同一化された意味の再言語化には再体験が必要となる。この状態は一般化(概念化)の初期段階でもある。
なお、不完全な処理は短期的な統合にとどまる。
⑥アプローチの選択と繰り返し
様々なアプローチで分化した体験を次々に言語化し、同一化を促す。
⑦振り返りの終了
集中(気づき)を「振り返り対象の体験」から外した瞬間、振り返りは終了する。
自己同一化した経験からもたらされる意味は、日常生活においても活用される→一般化
神経科学的振り返りの流れ仮説
①体験の終了
体験によって活性化した神経全体が沈静化に向かう。
②視点の分化
特に活性化した神経細胞同士が、グリア細胞を通して繋がりを模索する。
③視野の分化
グリア細胞を介した新しい仮の神経回路が構成される。
この「仮回路」は将来的にシナプスを介して結合する候補ルートとなる。
④視座の往還
「仮回路」を介して既存の神経ネットワークとつながり、別の神経細胞との「仮回路」を増設、「仮ネットワーク」を構成する。
④視野の再統合
「仮ネットワーク」が疎通できるのかを試す。不要な「仮回路」は閉鎖する。
⑤視点の再統合
「仮回路」が確定し、以降「仮ネットワーク」は新しい神経ネットワークとして使用される。
⑥アプローチの選択と繰り返し
振り返りの繰り返しで、「仮ネットワーク」が生み出される。
すでに繋がっている回路の場合は「ミエリン化」が促進される。
過去に繋がっていた場合は回路の痕跡が残っていると考えられる。
⑦振り返りの終了
このあとの一般化の過程において「仮回路」に沿って神経回路の建設が始まる。
オマケ
振り返りを深めるために
意識の発達レベルで到達できる振り返りの深度は異なる。
第一層:視点
第二層:視野
第三層:視座
第一層および第三層は同時に発達すると考えられるが、第二層まで開発できていなければ「扱う」ことはかなわない。
うまく振り返りが進まない場合は以下を試してみること。
多めに休憩をとる(余裕をつくる)
振り返りの単純化(扱えるレベルまで下げる)
アプローチを変える(未開拓の部分に触れる)
意図しない振り返りの存在
基本的にどのような生物にも生存のための学びの機構は存在すると考えられる。
おそらく、思考が発達した高等動物(主に人間)のみが、意図して振り返りを行う。振り返りで意図できる範囲は表層のみであり、細胞レベルや生存に係る判断は、より深い無意識下で振り返りが行われているはずだ。
おそらくそれらは、二元論的アプローチの深みで目にすることができるだろう。
他者あるいは歴史から学ぶ
体験を想起できるのであれば、振り返りは可能。つまり、歴史上の出来事や他者の体験も「自分事」として想像できるのであれば、振り返りの材料になり得る。
高次意識の開発によって、実際に体験していない出来事を「体験する」精度が上がる。
最終的には「あらゆる想像の産物」を「体験」として扱うことも可能となる。つまり「未来を振り返る」ことができるようになる。
それはあくまでも精神的な現実化だが、肉体の反応や物体の認識などの物質的変化も引き起こすこととなる。
いわゆる幼少期における単なる空想遊びも、高次レベルにおいては意識的な学びの機会に昇華できるということだ。