体験からどのように学ぶのか
体験学習サイクル
①体験
②振り返り
③一般化
④試行
神経ネットワーク
①新しい神経回路のパターンを組み立てる。
②余計な部位を剪定し、洗練する。
③一つのネットワークとして固定する。
④新しい体験に近似の回路パターンが活性化する。
自律神経
①過覚醒により闘争・逃走反応が起こる。
②揺り戻しで低覚醒へ向かい、リラックス状態となる。
③バランスが取れた状態で、耐性の窓が変化する。
④交感神経が優位になる。
神経伝達物質
①アドレナリン:代謝向上
②ドーパミン:記憶力向上
③コルチゾール:抑制
④セロトニン:安定化
情動
①外部からの刺激を脳が認識、大脳辺縁系・視床下部を中心とした一次的情動が起こる。
②前頭葉の連合野の働きで、学習や経験で変化する二次的情動が生まれる。
③出来事とともに情動が記銘・保持される・
④過去の体験が想起される。
ストレス
①ストレッサーによりストレス反応が起こる。
②ストレスコーピングを行う。
③ストレス耐性が変化する。
④ストレスマネジメントを行う。
トラウマ処理
①遭遇。
②感情や思考の受容。
③出来事の物語記憶化。
④日常生活との再結合。
記憶
①情報の入力
②選択的注意
③保持
④反応の出力
ペルソナ
①体験に適した人格部分が全体より完全に分離し対応する。
②内的処理により部分が全体に再統合する。
③人格の変化。
④人格部分の分離が始まる。
マインドフルネス
①いまここを味わう。
②そのときの感情や思考を保持する(気づく)。
③手放す。主体から客体へ。
④あらわれる。客体から主体へ。
システム
①事の起こり
②物としての把握
③事物の統合
④所有
プロセス
①具象
②内化
③抽象
④外化
個人的見解
○ある出来事(ストレッサー)に対して、神経系含む生理状態が非常事態としての反応を示している状況。「備え」によって焦点が変わり、感情や思考などラベリングを経て、内的処理(恒常化)に進む。それらは「出来事に同調した神経ネットワークの状態保存」として記憶され、あらたな「備え」を想起する。
○新たな体験において、保存されたネットワークに含まれる神経細胞が反応した場合、「神経ネットワークの再現」が起こる可能性がある。また、これは内的思考によって故意に起こすことも可能(振り返り・内省)。
○使用される回数が多いほどネットワークは強固となり、回路が強化されることでその伝送速度は加速する(学習)。最大限に強化された場合(軸索化:1万時間?)は、無意識のクセ(概念化)となる。
○体験の繰り返しにより強化される過程で、必要な共通項のみを洗練する(シナプス刈り込み:一般化)働きがある。
○シナプスの刈り込みがうまくいかない場合、精神疾患や発達障害として外面に現れる。背景には遺伝・環境・外因など複合的な積み重ねが存在する。
○体験の瞬間に自律神経状態が不動化に及んだとき(「耐性の窓」を超える過剰な体験)、瞬時に概念化が行われ、無意識下に格納される(トラウマの形成)。その後は異常なシナプス刈り込みによって、負の学習を繰り返し、コンプレックスとして表面に反映される。
○同じ出来事であっても、人によって異なる許容範囲(耐性の窓)を超えるか超えないかで、神経ネットワークの反応が異なる。また、瞬間的に許容範囲を超えた場合であっても、出来事の直後に他者からの支援があればトラウマ化を防ぐこともできる。トラウマ化した場合、それらを適正に再処理するには、相応の時間と支援が必要となる。
○すべての働きに関わる「創造」を司る部位は、神経系の調整に関わるといわれるグリアなどが関連するとみられる。神経系は電気的な動き、グリア(細胞?)は磁気的な動きに近いと考えられる。後者は観察そのものに課題があるため、人間の心的システムはもうしばらくブラックボックスだろう。
体験学習の重点
「いまここ」の出来事を、「そのときそこ」の物語として変化させる一連の流れが、体験学習の仕組みといえる。その根幹ともいえる3つのポイントを挙げる。
安心と安全の確立
・これがなければ体験の処理そのものが起こらない。
・安全な環境によって、無駄なエネルギーの放出を控え、安心感をもたらす。
・受容と共感は効果的。
自己統制力
・出来事を受け入れ、統合できるかは、自己反省能力や自己制御能力にかかる。
・おそらくは発達段階で処理レベルを把握することが可能。
アンカリング(意図された焦点化:ねらい:備え)
・何を学習するか(どのように統合されるか)は、どこに焦点をおいたかで決まる。
・焦点は「その体験は何であったか」という物語のテーマを成す。
・外部から操作可能でもあり、そのテクニックは教育的関わりにおいて必須のスキルともいえる。
・支援的関わりにおいては、本人の焦点を探ることから始まる。