20170327体験学習サイクルについての覚書

<はじめにのはじめに>
2017年3月27日、今までの蓄積をマイルストーンとしてアウトプットします。

<はじめに>
David A. KolbのExperimental Learning Model(以下、体験学習サイクル:ELC)は体験活動の世界で最も活用されている理論のひとつであるといえる。しかしながら、多くの指導者はその理論を絶対視し、より効果的な活用方法を見いだせていないのではないだろうか。今回は40年前の古い理論ともいえるELCをより実用的にするために、現代の理論とも結合させながら更なる可能性を探っていきたい。なお、海外で生まれた理論は日本語への翻訳が様々な形で為されるため、言語的なニュアンスの違いが生まれるかもしれないが、あくまでも原典をベースに考えることとする。

『4つの段階』 

「体験」→「省察」→「概念化」→「試行」をサイクルとして、体験から学びを引き出し新たな自分を生み出す。 

※性格特性などとの関連性
(K)Kolbの学習スタイル(LSI)
(J)ユングのタイプ論(MBTI)
(H)ハーマン全脳モデル(EG)
(D)DiSC理論

「体験:経験」(感覚) 

瞬間(今ここ)を全て体験として切り取ることができるならば、あらゆるものから学びを引き出すことが可能ともいえる。

 性格傾向【感情・人間関係】
(K)CE=人間関係
(J)感情(Feeling)
(H)人道家(Humanitarians):右大脳辺縁系
(D)Steadiness(堅実)

「省察:振り返り」(観察) 

具体的な事実に関する振り返り(意識)から始まり、内省を経て、個人の無意識から集合的無意識(世界のつながり)へ。 

性格傾向【保守・計画】
(K)RO=観察
(J)感覚(Sensing)
(H)組織家(Organisers):左大脳辺縁系
(D)Conscientious (注意深い、慎重)

「概念化:一般化」(思考) 

無意識に定着した状態(性格化)が概念化の一目標。
二元論における最深部は、理としては存在(在ること)について、感としては愛について。
非常に抽象的な内容で、世界の仕組みを創る源(U理論のUの谷:プレゼンシング)。 

性格傾向【思考・分析】
(K)AC=理論
(J)思考(Thinking)
(H)理論家(Theorists):左大脳新皮質
(D)Dominance(優越、支配)

「試行:実験」(行動) 

0から1を生み出す瞬間で、最もチャレンジを要求される。
変化し続けることを考えると、常に未知の新しい体験との対峙ともいえる。

性格傾向【直観・創造】
(K)AE=試行
(J)直観(iNtuitive)
(H)発明家(Innovators):右大脳新皮質
(D)Influence (影響) 


『4つの象限』 

過程には段階があり、それが上がるほど大きな成長となる。

「体験→省察」 

発散型(diverging style):感覚と観察
LSQ:熟考派(reflectors)
SECI:【共同化】Socializaiton:暗黙知から暗黙知へ
体験による感情の動きが大きいほど、学習の定着度合いが上がりやすくなる。 


「省察→概念化」 

同化型(assimilating style):思考と観察
LSQ:理論派(theorists)
SECI:【表出化】Externalization:暗黙知から形式知へ
省察が深いほど抽象的概念、最終的には悟りの世界(源)に近づく。 

※U理論の谷をくだる 


「概念化→試行」 

収束型(converging style):思考と行動
LSQ:実践派(pragmatists)
SECI:【連結化】Combination:形式知から形式知へ
概念の深さが試行する体験のフレームの大きさ(自由度)を決める。
無意識から意識化し、具現化、実体化を経て実行の選択を行う。 

※U理論の谷をのぼる 


「試行→体験」 

適応型(accommodating style):感覚と行動
LSQ:活動派(activists)
SECI:【内面化】Internalization:形式知から暗黙知へ
アンカリングによって体験の焦点が定まる。 


『連続体』

「体験」と「概念化」、「省察」と「試行」は相反する仕組みを持ち、またお互いを引き合う関係にある。 

「感覚←(知覚の連続体)→思考」 

具体的←(知覚の連続体)→抽象的 

<反転理論>
個性化(自立)←(取引)→卓越(他者依存)
愛情(慈愛)←(取引)→権力(競争) 

<タイプ論>
感情(Feeling)←(ものの見方)→思考(Thinking) 

体験を受け入れている最中は概念化の思考がほぼ停止する。逆も然り。 

目標←(フレーミング)→目的 


「観察←(処理の連続体)→行動」 

内省的←(処理の連続体)→能動的 

<反転理論>
従属(黙従)←(規則)→自由(挑戦)
達成感(まじめ)←(目的手段)→快楽(遊び)

<タイプ論>
感覚(Sensing)←(判断の仕方)→直観(Intuitive) 

能動的な観察(他人事)や内省的な行動はサイクルを止める。 

学び←(アンカリング)→知恵


『まとめ』


『雑感』

<サイクルを回すために> 

「体験」:純粋に体験に身を委ね、今ここ(現実と感情)を受け止める。
「省察」:過去となった今ここを振り返り、フィードバックを受け、自らを省みる(内省)。
「概念化」:固定観念を書き換え、省察からの学びを多様化させる。
「試行」:内に込めた概念を具現化し、実際に挑戦する。 

<サイクルを加速させるために> 

「体験→省察」(インプット)
・自分の感情の変化を捉え、その原因を考える。
・体験の焦点を定めること(介入:アンカリング)によって、思考の方向性を定める。
「省察→概念化」(インプット)
・概念化に至るまでに、他人事から自分事(内省)へのシフト(内観」が不可欠。
・アンカリングが行われた場合は、その内容を中心に思考が展開される。
・第三者からの介入(フィードバックやコーチング)によってさらに深めていくことが可能。ただし、一般的には介入する人のレベル(視座)手前までしか深めることはできない。 

トヨタ方式:なぜなぜ分析で容易に深めることができるが、個人の成長レベル(視座・視野・視点)以上に深めることは難しい。 

「概念化→試行」(アウトプット)
・概念化されたものはDMN(デフォルトモードネットワーク)の状態で整理され、アイデアとして浮かび上がる。
・概念からアイデアを具現化するための目標設定法が有効。 

DMN:何も考えていない状態を生み出すことで脳が活性化する仕組み。風呂、就寝前、トイレ、禅やヨガ、軽い運動などのリラックス状態で起こるといわれる。 おそらく眼球運動によってもDMNの状態になれるだろう。 

「試行→体験」(アウトプット)
・新しい変化に期待を持ち、体験に飛び込む。
・とりあえずやってみる精神。 


<性格特性(個性)による得手不得手を理解する> 

性格のクセはチャレンジすることで開花する。
「体験が苦手」:感情や人間関係を重視して考える。
「内省が苦手」:新しいものに飛びつかず、今あるものをじっくりと見つめる。
「概念化が苦手」:「なぜ」を感情論抜きで答えられなくなるまで突き詰める。
「試行が苦手」:リスクを考えず、自分が思ったことを思ったようにやってみる。 

<個人が認識できるレベルと成長> 

「試行→体験」(2段:1次元サイクル)
体験からの純粋な感情
課題:自他の認知
補助:体験への感情的な介入 

〜思春期:思考の内省化〜

「試行→体験→省察」(3段:2次元サイクル)
問題を個人の課題として捉えはじめる
課題:実践知の蓄積
補助:振り返りへの思考的な介入 

〜壮年期以降:無意識の認識〜

「試行→体験→省察→概念化」(4段:3次元サイクル)
課題解決に向かう
課題:サイクルの認識と智慧の具現化
補助:概念化への多視点による解釈の拡張 

〜壮年期以降:在り方との対峙〜

「ホリスティックな捉え方」(多段でもあり無段でもある:多次元サイクル)
大きな流れの中で問題の認識を変える
課題:同時に進行する多層サイクルを把握する
補助:自己成長可能なため不要 

〜在ること〜
※いわゆる「悟り」の世界 

・成長:脳の発達に従ってサイクルが構成され、4段サイクル以上の細分化も可能となる。
・マズローの自己実現理論(自己超越含む)との関連。

<おわりに>
・体験学習サイクルは個々人のクセが反映され、必ず「体験」からスタートするわけではない。
・自らが体験学習サイクルを回し、成長し続けることが重要。
・「気持ちを解し」「視野を広げ」「深い思考を持ち」「常に前向きであること」
・【役割】と【立場】に執着してしまいがちだが、個人のレベルは「どう在るか」ではかることができる。
・概念化が進むことであらゆるものをサイクルで扱うことが可能となり、今回まとめたように理論間の親和性を高めることが出来てしまう。
・最終的には自らのサイクルを創り出すことが一つの目標となる。

P.S.まだまだ発展途上。アイデア募集中です。