ちょっと限界近いわ、黒瀬。
悪夢。
実の家族、実家の夢をここの所よく見る。
誰かが死んだり、ひたすら糾弾されたり、あぁ、もう、いやだ。
原因はわかってる。
帰省しなきゃならないという、悪夢のような呪いのような、現実。
血を分けた兄弟のためなら、と、
腹を括ったつもりだったが
やはり、やはり、私は、まだ無理なのだ。
俺が賃貸の更新料を払えなかった時、
親の分の携帯代が何故か俺に請求されてた時、一銭も出さなかったくせに、
俺は水商売に足を突っ込んで必死で支払いに間に合わせたのに
弟が、自分に似た息子が「姉さんに会いたい」と言えば、ポンと俺に「帰省費用」として10万振込みやがった。
ムカついたから、かかるであろう交通費を除いた差額を散財してやった。
そして今。
俺はまだ、帰省の為の飛行機を予約できずにいる。
あの家に顔を出す、そう思うだけで死にたくなる。
いや、厳密に言えば「死ぬしかない」という、希死念慮を通り越した強迫観念だ。
あの家で俺を待っているのは、俺の存在価値を、俺自身を否定する人間なのだ。
母の望む、
清楚で可愛らしい、普通のOLである娘。
普通の娘。
俺は「それ」になれなかった。
ピアスが好きで、中性的でメンズライクな髪型が好きで、ゴシック系やパンク系やストリート系の黒い服が好きな、
イラストや芝居で生計をたてようとしている俺は、
母から言わせれば「下品」らしい。
その言葉を覆せるほど、俺は何も結果が出せていない。
俺にはそれが足りていない。何もないのだ。
誰もが納得出来る、目に見えてわかる数字。
技術。
絵を描こうとすればするほど、
かつて母親から投げかけられた否定的な言葉が頭にこだまする。
無駄なことをしている気になってしまう。
この気持ちを、経験を、消化して昇華出来れば、何か変わるのだろうか。
俺は、黒瀬は、どうすればいいのだろう。
何が出来るのだろう。
世界を、トラウマをひっくり返して
堂々と「好きな俺」で胸を張れるように
今日は、今は、少しだけ
弱音を吐かせて欲しい。
お前の応援が、お前の俺への「好き」が、何度も俺を救ってくれた。
だから、お願いだ、お願いだから、
お前だけは俺を肯定してくれ。
俺を、「黒瀬黑」を、必要としてくれよ。
頼むからさ、お願いだから、
俺、まだ、生きていたいんだ。
早くメンタル復活させて、トラウマなんか踏み潰して、たくさん結果を残したいんだ。
お前に愛を返したいんだよ。
喜んでもらいたいんだ。
お前の笑顔が俺の生きる意味なんだよ。
こんな所で立ち止まってる場合じゃない。
進みたい。
強くなりたい。
強くなりたいんだ。俺。
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