『日本製鉄の転生』

最近読んだ本の中で、面白かったものを紹介します。

「仕事のできる人間」が、
どのような信念の下で、どのように考え、動き、成果を出しているのか。

本書を読めば橋本英二社長が日本製鉄をどのように復活に導いたのか
その一端を垣間見ることができます。

橋本社長が社長に就任された時点で、
日本製鉄は「潰れるかもしれないところまで」いっていた。
しかし、経営者・技術者・現場作業者・営業マン・法務・財務…
日本製鉄が誇るあらゆる部署の有能な人間が自らのもつ力を発揮して
いかにV字復活を成し遂げたのか。

橋本社長は入社当時から、自分が正しいと信じたことは
会社の方針に逆らってでも押し通す強い信念の持ち主だったようです。

日本製鉄が苦しんでいたのは、
非効率的な稼働率で製品の製造コストが高止まりしていたこと、
他社にシェアを奪われることを恐れて
高負付加価値の製品であるにも関わらず顧客に安い値段で売っていたこと。

橋本社長は、製鉄所にも営業にも発破を掛ける。

「あなたたちは子や孫に背負われた老人と一緒で、自分たちの力で稼げていない」

上阪欣史.『日本製鉄の転生』.日経BP.2024年1月.15ページ

「なぜ、我々にとって値上げが必要なのか。顧客と対峙して説明し納得させられなければ、営業とは言えない」

上阪欣史.『日本製鉄の転生』.日経BP.2024年1月.57ページ

特に営業とのやりとりの描写は凄まじい。
顧客と社長の板挟みになり神経をすり減らす営業部長の苦労と言ったら。

しかし、そのような血の滲む努力、極限まで切り詰める努力が
日本製鉄に過去最高益をもたらしました。

呉製鉄所の閉鎖等、冷徹なまでに収益構造改革を推し進めたことに、
橋本社長は自覚的でありました。

「構造改革の過程で離職した人も多くいました。苦労した従業員たちの悔しい思いを、自分は一生涯背負わなければと思っています。」

上阪欣史.『日本製鉄の転生』.日経BP.2024年1月.207ページ

心が熱くなる、良書です。ぜひ皆様読んでみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?