はじめて一人暮らししたまちについて

はじめて一人暮らししたまちは、東東京人憧れの皇居より西側の東京某所だった。某所というか東中野です。といっても東中野から徒歩15分強、西武新宿線や大江戸線の中井駅のほうが近い。でも中井に住んでますと言ってもピンとこない人がほとんどなので東中野に住んでますって言っていた。堀切や五反野に住んでますと言ってもピンとこないから北千住に住んでますって言っちゃうのとおんなじ現象である。

わたしが住んでいたところはちょうど新宿区と中野区の区境で、中野区側の飛び地だった。なので、家を出るまでは中野区、家を出たら新宿区という感じで半分新宿区民みたいなものだった。例えば区議会選挙のときの選挙ポスターや街宣カーも新宿区議の情報のほうが入ってくるのだが、実際は中野区民なので投票の際に誰に入れようか困ってしまうこともあったりした(もちろんちゃんと調べてから投票しましたよ!)。区境に住んでいればこれくらいあたりまえなエピソードなのかもしれないけど、足立区出身のわたしとしてはとても衝撃的だった。足立区は川に囲まれていて川が区境になっている箇所が多いため、他の区に行くにはわたしの家からは川を越えなきゃ行けなかった。例えば上野に行く場合は隅田川を渡らなきゃ行けないなど。そんな環境で四半世紀育ってきたから、シームレスに他の区を行き来するというのが新鮮すぎた。

家からスカイツリーが見えなくてしょんぼりしたり、でもその代わりに高層ビルが見えてテンション上がったり、地面は平坦なのが当たり前と思っていたけど、アップダウンが激しくて息が切れたり、毎日通る山手通りも「あぁ、これが頬を刺す朝の山手通りかぁ!」と感動したりと、何もかもがこれまで住んできたまちと違くて、とにかく毎日新鮮で楽しかった。

でも、地元と似ているところもあるまちだった。わたしが住んでいたところは川沿いで低地だった。路地も細道が多くて都市計画の手がつけられていない感じがあった。さらに、銭湯が家の近くにあった。そのせいか、どことなく雰囲気が下町っぽいのだ。東中野のタワマンから徒歩15分でこのギャップよ。地元には下町の良さしかなかったけど、このまちには都会と下町の両方の魅力があった。新しさと懐かしさと心強さと。ほんとうに最高なまちだったと思う。

その後、駅でいうと大久保、西新宿とどんどん都心に、どんどん会社に近づいていくという、社畜あるあるな感じの展開になっていったが、諸般の事情により、このたびまた、はじめて一人暮らししたまちの近くに引っ越した。

ごちゃごちゃした路地で駅までの道も何回も迷う感じとか、各家庭の路地園芸の素晴らしさとか、近くに銭湯があるとか、西武新宿線や関東バスのローカル感とか、もう最高すぎだと思う。ちょっと散歩するとすぐ坂道があって、大通りやマンションがあるけど、わたしは人間味を感じる川沿い低地下町が好きだな。川って植物と同じで生き物だと思うんだよね。だから川があるまちって生きている感じがするんだよ、なんとなく。たぶん次に引っ越すときも無意識に川のあるまちを選んでしまいそうだ。

そんなわがまち下落合を、じっくりまちあるきしたい!早くコロナ収束して外に出たいよー!


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