【小説】韓流物語#2~赤坂に降り立った~

赤坂は、何度か行ったことがあったが。

大好きなバンドが、赤坂ブリッツでよくライブをやるバンドだったので、それを観に行ったことがあった。
昔は結構人気があり、一時は日本武道館でライブもやったことがあるバンドだったが、それからは、時の流れと共に、芯だけ削ぎ落されていくように、コアなファンだけが残り、ライブのチケットも決まって当日券ができるような、パッと思いついたらライブに行きやすいバンドだったのだ。

韓流も、そういうところがある。
私は、それから新大久保の有名韓流ショップで働くことになるのだが、5人の東方神起がブレイクし、ドラマ「イケメンですね」が日本でも大ヒットし、これまで30~60代の女性層中心にフィーバーしていた日本における韓流文化が、それに10~20代の女性層も加わったことで、韓流ブームは最高潮に達していたのだった。
新大久保の街も、まさに大袈裟な表現ではなく、足の踏み場がない状態となり人混みの渦になっていた。

それが、数年経ち、時の韓国の大統領が、日本の天皇陛下を侮辱するような発言をしたり、竹島に上陸したり、自身の韓国での政治生命の保身のための常軌を逸したパフォーマンスをしたことにより、韓流ブームから一転して「嫌韓ブーム」が起こったのだった。
街の書店のベストセラーコーナーの上位の棚には嫌韓本が軒並みならんだ。
それからというもの、まさに私の大好きなバンドのそれではないが、芯だけ削ぎ落されていくようにコアなファンだけ残りっていった感がある。

言い換えれば、たいして韓国の文化を好きになるポテンシャルの無い人まで、メディアでブームといわれているからそれに便乗し新大久保の街に足を運んでみていた人達が削ぎ落され、本当に韓国の文化を好きになるポテンシャルの人だけが残った、といえよう。

新大久保の街にある韓国人が社長をやっている会社はどこも、上記の韓流ブームが最高潮に達した状態を基準に物事を考え、派手に事業を拡大していた。
そして、ブームが冷え切り、新大久保はやがて閑古鳥が鳴くことになる。
韓国人社長は、この状態を、社員のお前たちの努力が足りないからだ、と責め立てる。どこも同じだったはずだ。私が働いていた会社も例外ではなかった。
そのような殺伐とした雰囲気の中、どんどん社員が辞め、新大久保の街から、いや日本の国から去っていっていた時代だ。

話を戻そう。

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