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計画

 初めて手作りチョコを作ったのは、小学校2年生のバレンタイン3日前だった。
 財布の紐が硬い母が何故かその時は、手作りチョコキットを買ってくれた。大人と一緒に作れば良いのに、私は、チョコを溶かして流す工程は母に手伝ってもらったが、一番肝心のデコレーションを一人でやった。キットに付属していたのはスプレーチョコとアラザンのみ。

 結果は無惨なものだった。子ども特有の出来上がるのは市販品より素晴らしい物ができるという思い込みと、パッケージの写真に若干騙されて、今か今かとチョコが固まる時間を逆算して、やっと時間になり冷蔵庫を開けた時の落胆、アラザンは、チョコの上であっちとこっちに飛び散り、スプレーチョコは何故かくっつかずにチョコの下にザラザラ落ちている。味は、何故か溶かす前のチョコの方が美味しい。

 その時のチョコは、恥ずかし過ぎて母にも食べさせずに一人でひっそり食べて、後から母に「私が買ってあげたのに私に食べさせないのはひどい」と謎の理由で怒られたが、下手くそなチョコを延々ネタにされる恐怖より、その時の私は、叱られることを選んだ。

 その時私は、一つの教訓を知った。料理とは甘くなく、しっかりできるようになってから、お菓子作りはやるもので、家族が手伝えない私は、自分で全部できるようになってからやるものだ。ということを。

 手作りチョコを友達に自慢する計画は、儚く散り、案外すごく上手なお菓子を自分で作ったと言っていた友達は、95%母作成なんだということを。

 湯煎に失敗し、チョコがパサパサして甘くないチョコを噛み締めながらその頃少女だった私は、考えていた。


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