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スクリーン

 21歳の夏に私は大怪我をした。車に跳ねられた瞬間、映画のスクリーンが終わったようにブツンと意識が消えて、痛みと苦しさで自分ではため息ついたつもりでいたけど、ため息は、止まった呼吸が吹き替えした深呼吸だったらしい。
 
 呼吸と共に自分が血の海に寝ているのが分かった。

 今も時々思い出そうとするけど、あまり覚えていない。暑い夏なのにとても寒かったのが怖かった。多分、沢山出血したせいで体温が下がったのだろう。

 どうにもならないくらい落ち込んでいるだ時私は、あの寒さを思い出そうとする。

 いろんなことで、私たちは傷つく。死にたいなることもある。だけど、本当に死ぬ時にしか人生のスクリーンを下ろしたくない。自分で下ろすなんてまっぴらだ。

 これを読んでいる誰か、自分で人生のスクリーンを下さないで欲しい。降りる時は、簡単であっと言う間だ。待ってなんてくれない。

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