カレー

 私は大学に通ううえで寮に入っている。寮では授業のある日だけ三食が提供されるのだが、私は一日のうちで何よりもこの食事を楽しみにしている。道具も具材もスキルもなく、料理ができないからである。我ながら寮食のない休日の食生活は酷いものだ。お菓子やらシリアルやらカップ麺やらをテキトーに食べたり食べなかったりしている。参考までに、昨日の私の三食は白米(朝)、ココナッツサブレ(昼)、シーフードヌードル(夜)だった。


 そんなわけで、私にとって休日明けの月曜日の食事は、さながら断食明けにブッダが食べた乳粥のようなものである(ニワカ知識なので比喩間違ってたら教えてください)。朝食は食パンとハムとサラダ、昼食はご飯と魚の南蛮漬け。どれも食べると身体だけでなく、精神の栄養になるようだった。さて夕食はなんだろうかと食券片手に階段を降りていくと、既にかすかに匂いが漂っていた。


 ……カレー?


 間違いない、カレーの匂いだ……。しかしまだわからない。ドライカレーとか、カレー煮とか、あるいはカレーチャーハンかもしれない。純粋なカレーライスであるという確証はまだない……と冷静であることに努めつつ、食堂に入った私はメニューが書いてあるボードをちらりと見る。



 ハンバーグカレー



 エッ!!?!?!??!?!?カレー!!?!???!?!?!?しかもハンバーグつき!!!?!?!?!????REALLY???OH MY……オーマイ!!!!!!!!!!!! 


 YES!!!!!!!IT'S CURRY!!!!!!!!!!TGIC(THANKS GOD, IT'S CURRY)!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



 こんなにテンションが上がったのは久々かもしれません。引っ越してきてからカレーを食べていなかったので本当に嬉しかったです。しかもただのカレーでなくハンバーグ付き。子供舌の私は幸せすぎて泣いてしまいました。嘘です。さすがに泣きはしませんでした。でもカレーにトッピングというと、センター前に父が験担ぎのカツカレーを出してくれたくらいなので、マジで豪華だなと思いました。ハンバーグカレーは豪華です。私に繊細な感受性などない。


 自室に戻り、そっとカレーを目の前に置く。一人で食事をするときの私は、行儀が悪いとは知りつつも、大体課題などを平行してのながら食べである。しかし今日は、食べながら何かをする余裕がなかった。一心にカレーに向き合う外ない。


 真ん中に置かれたハンバーグを境に、右がご飯、左がカレーと分かれている。どう手をつけるべきだろうか。まずハンバーグか? いや、ご飯を掬ってカレーにつけるべきか? 逡巡の結果、ハンバーグの次に目立つ大きなジャガイモを、スプーンで掬う。このゴロッと感……最高だ……。スプーンにご飯まで掬う余裕がない、一口大のジャガイモ。カレーの具材は大きく切られてなんぼだ。


 ジャガイモを食べ少し落ち着いたところで、メインのハンバーグに手をつける。……最高。休日明けは、基本的に野菜と肉に飢えている。これはそんな私に“”肉””を味わわせてくれる。


 半分ほどハンバーグを食べたら、その境界からカレーとご飯を混ぜていく。……正直、ここからの記憶はあまりない。一心不乱にカレーを食べ、気づけば10分で完食していた。


 食べ終えた私は、市原隼人さん演じる『おいしい給食』の甘利田先生が給食を食べ終えたときのように、目を閉じて椅子にもたれかかった。こんなにも満足感のある食事はいつぶりだろうか。胃袋も、精神も満たす食事。カレー、偉大。次に出会えるのはいつだろうか。

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