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失敗したとて諦めるな(捲土重来)

 一度や二度失敗しても敗れても、「もうダメだ」と諦めてはならない。じっくりと準備を整えて再び猛然と挑戦してみることだ。

 建武三年一月、新田義貞と北畠顕家に挟撃された足利尊氏は戦いに破れ、いったん九州に落ちのびた。しかし、ここで再起の準備を整えて九州を制圧すると上京を開始し、五月には湊川で新田義貞・楠正成の軍を破り、後醍醐天皇を吉野に追い出して北朝を建てた。

 個人とて同じである。最近のスポーツ界(当時)で典型的な捲土重来を果たしたのは、大相撲の大関・琴風(尾車親方)であろう。いったんは幕内・三役にまで昇りながら、ヒザを痛めて幕下下位にまで落ちこんだ。毎日が地獄だったという。普通の力士なら十人中十人が諦めるところだ。しかし彼は歯をくいしばって耐え、むくむくと頭をもたげて遂に大関の座を勝ちとった。

 中国・秦滅亡後、楚の項羽は漢の劉邦に破れ、垓下で自刃に近い切り死にをした。後に、この地を訪れた晩唐の詩人・杜牧は、項羽が再起を図らなかったのを惜しんで次のように詠った。『勝敗は兵家も期すべからず、羞を包み恥を忍ぶはこれ男児、江東の子弟才俊多し、捲土重来いまだ知るべからず』(烏江亭に題す詩)。「捲土」とは、土煙をあげる盛んな勢いの意味である。

 左遷や降格なんのその。再起をめざして努めれば、再び花の咲く日がやってくる。


『ビジネス戦略を支える 中国名言の智慧』(窪島一系)より

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中国名言の知恵 表紙画像(127×188ミリ) (2)

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