見出し画像

協力は力を倍増する(単なれば折れ易く衆なれば摧け難し)

 宮本武蔵が吉岡道場の多数の門弟と一乗寺下がり松で闘う時、走り回ってかく乱し、相手を一人にして各個撃破している。いかな武蔵とて、一度に数人に切り込まれたらかなわない。

 一人ひとりの力は弱くても、寄り集まるとグンと力が強くなる。武蔵の例をみるまでもなく、その事実はたいていの人が日常的に経験している。運動会の綱引きも、引くタイミングを合わせたほうが勝つ。会社の仕事も同じである。ある仕事を各人が初めから終わりまでやるよりは、手分けしてやるほうがはるかに早い。

 戦国の武将・毛利元就が、三人の男の子に対し、一本の矢は折れやすいが、三本の矢は折れないことを示し、兄弟三人が協力することの大切さを教えた話は有名である。世に「三矢の教え」といわれる。これと同じ話が中国にある。南北朝時代、北魏の阿豺あさいという武将は、わが子や弟子たちに一本ずつ矢を与えて折らせ、次に十九本の矢を束ねて折ることを命じた。むろん折れるわけがない。元就の話より千年も前のことである。

『阿豺曰く、汝曹(君たち)知るや否や。単なれば則ち折れ易く、衆なれば則ち摧け難し。戮力りくりょく一心、然る後に社稷しゃしょく(国家・朝廷)固かるべきなり』(北史・吐谷渾伝)。

社内に派閥がある、労使が常に争っている、そんな企業に力の出るはずがない。

『ビジネス戦略を支える 中国名言の智慧』(窪島一系)より

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

中国名言の知恵 表紙画像(127×188ミリ) (2)

電子書籍の購入はこちら

著者近著 『現代人のための仏教説話50』(窪島一系著)好評発売中