[トーク]2030年のパフォーミングアーツはどこに向かうべきなのか?PART2(2021/01/17@台湾)
*PART1の記事 ⇒ https://note.com/kpac_jptw/n/nc5963b44c57f
*中文文章請由此進 ⇒ https://www.facebook.com/innotes.tw/posts/3751243225005368
世代交代に期待、停滞している公開選考システム
2030年に向けたもう一つの議論では、政府機関における指導者の任命が注目を集めています。
台湾では、大きな施設やフェスティバルの組織を新設する場合、長期間の議論を重ねることで企画が成立します。ですから、アーティストは、新しい劇場や芸術祭の設立により、既存の環境に多様な変化とビジョンがもたらされることを期待します。
しかしながら、台湾の官僚システムにおいては、責任者(芸術総監督、会長、または理事会)を決める際に、任命制であってもオープンな選考を経た場合でも、ただ同じグループの中で役職が変わっているだけのようにみえます。
10年、20年、30年後と劇場が増えていくにつれて、市場と現場で育った人材が出世する機会が減っていくでしょう。一見民主的な選考システムの下で、異なる世代の人材が芸術界に留まり続けることは本当に可能でしょうか。また、新しい施設によって新しい変化はもたらされるのでしょうか。
2020年に台北表演芸術中心(Taipei Performing Arts Center)は公募で責任者を選出しました。選考の基準を知ることはできませんが、実際の発表をみれば、やはり十年前とほとんど同じ顔ぶれが並んでいました。結局のところ台湾のパフォーミングアーツ業界においては、相応しい人材を見つけることができないでいるのか、それともバトンを引き継ぐ勇気のある世代が不足しているのか、疑問を抱かずにはいられません。
台湾は行政法人化に力を尽くすのと同時に、専門家を採用するための門戸を開き、さらに芸術業界全般の異なる意見も受け入れて、より専門的で革新的な才能を持つ人材に「適材適所」の機会を与えることができるかどうか、アーティストたちはこの十年の変化を期待しています。
そのほか、4CHAIRS THEATREの芸術総監督である許哲彬(Tora HSU)は、リーダーの役割を担えるアーティストが不足していることを指摘しています。
近年、台湾では徐々に芸術監督とプロデューサーの役割が分かれてきています。
私たちはアーティストたちにより多くの機会を提供し、アーティストたちの専門的なビジョンを通じて、文化芸術に新しい視野や斬新で創造的な思考、方向性をもたらすことができるのでしょうか。そして、制作者を育成するためには、マネジメント能力や協調性や総合的な運営能力といった点に注目しなければなりません。仕事をする過程においては、もちろん芸術の知識とセンスが必要です。更に、優れたコミュニケーション能力やどのような人の話にも耳を傾けられる高度な寛容さがあれば、キュレーションやプログラムの細部を完璧にやり遂げ、アーティストと観客の懸け橋になることができるでしょう。
2030年の劇場に何かを期待するとすれば、全ての空間が異なる個性を持って形作られることでしょう。私たちは、新しい劇場で未来の新しいアートを形作ることの大変さを知っていますし、イメージとクリエーションの過程において、組織の明確な配置と事前の計画を持ち、未来のリーダーたちが同じ目標を引継ぎ、同じ方向を進み続けることが非常に重要だと考えています。
「遴選」(註:中国語で「人を選ぶ」という意)の漢字には「慎重に選ぶ、シビアに選抜する、より優れた選択をする」という意味が含まれています。私たちは品格と能力を兼ね備えた人材を選抜する時に、ミドル世代にも出世の機会を与え、新しい語彙を生み出し、場を活性化したいと思っています。
#組織の中の役割とポジションを先に確認しておく必要がある
#適切な選考システムをどのように設ければいいのか 、まだ長い議論が必要
記事編集:新田幸生
翻訳:岩澤侑生子