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朝鮮人民革命軍創建90周年慶祝閲兵式

4月25日は、抗日パルチザンとして発足し現在の朝鮮人民軍の原点にあたる朝鮮人民革命軍の創建から90周年を祝う閲兵式が挙行されました。2020年から定例になりつつあるように、夜間に行われたため朝鮮中央テレビでの放送はその翌日となりました。ここでは個人的に気になった点を取り上げていきます。

1.戦車兵のヘルメットバイザー

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放送序盤のワンシーンより(KCTV)

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試作戦車とバイザーを下ろした乗車(KCNA)

放送時すぐ気づいたのが、試作戦車の乗員が謎のバイザーを付けていたことです。他国で研究されている兵士用HMDの一種みたいなものかと思いますが、北朝鮮において薄いバイザーに情報を投影できるような高性能HMDを開発する能力があるか不明なので、単なるバイザーでしかない可能性も充分考えられます。ただ、他の装甲車や自走砲の乗員にはなく、この戦車の乗員のみなのも気になる点です。

2.複合小銃、擲弾銃、ブルパップ式小銃など歩兵火器類の小さな変化

2010年代~2020年代に入ってから、北朝鮮ではヘリカルマガジンを使用する小銃の大量配備や、米韓が諦めた複合小銃など様々な歩兵火器の変化が見られるようになりました。今回は引き続きNK11とも呼ばれる複合小銃に加え、複合小銃から擲弾部分を独立させたようなデザインの擲弾銃、2020年に初登場したブルパップ式小銃が現れました。

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88式小銃から発展した複合小銃(KCNA)

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上が今回の閲兵式中の映像でのブルパップ式小銃で、下が2020年時。比較するとマガジンが長くなっている(KCTV、KCNA)

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擲弾用の大型マガジンと大型照準器を備えた擲弾銃(KCTV)

また、通常のマガジンを使用するタイプの88式小銃でも些細な変化があり、ブルガリア製AKのアーセナルAR-1やその派生型のものと似たワッフルパターンが刻まれたマガジンが登場しました。

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弾倉のパターンは二種類確認できる(KCTV)

3.国家保衛省の謎の小銃

今回では、秘密警察に相当する国家保衛省が初めて登場しました。ぴっちり固めた髪に黒づくめの集団が行進する様は周囲からだいぶ浮いています。この国家保衛省の縦隊は銃口を前方に向ける形で肩から小銃を下げているのですが、その携行の仕方のせいで詳細が分かりません。ただ、よく見るとヘリカルマガジンではない通常のマガジンを用いた、銃身の短いコンパクトなものに見えます。該当しそうなものはAK-74を短縮化したカービンモデルのAKS-74Uだが近いような気がします。あるいはサブマシンガン系かもしれませんが、いずれにせよはっきりしないため断言は出来そうにないですね。

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国家保衛省縦隊が持つ謎の小銃の拡大画像(KCTV)

4.LAVクローン

2020年に初登場した陸上自衛隊の軽装甲機動車(LAV)に類似した車輌が今回も登場しましたが、通常の迷彩に加えてデジタル迷彩柄も確認されました。この迷彩は他の車輌にも適用されています。また、タイヤがホワイトリボン(ホワイトウォール)タイヤに変更されています。同様の変更は2010年代初頭まで閲兵式で使用されていたソ連製UAZのそれと似ています。このLAVクローンは閲兵式のみで確認されている詳細不明の車輌で、四代目三菱パジェロをベースに改造したものであることが判明しています。

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通常迷彩とデジタル迷彩の二種類が確認できる(KCNA)

5.社会安全軍のM-2010

新型の水陸両用装甲兵員輸送車であるM-2010が社会安全軍の縦隊に同行しています。人民軍に配備されている装甲車が治安維持組織の社会安全軍にも配備されているのは意外でした。ロシアのOMONにBTR-80が配備されているように、治安維持目的に運用するのが目的かもしれません。

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社会安全軍のM-2010(KCNA)

6.新型対戦車ミサイル搭載トラック

特に気になったものは、謎の四輪トラックです。直線的なボディの荷台には、黄色い蓋がされた4連装の対戦車ミサイル発射機らしきものが2基、横向きに搭載されています。これは2018年に初公開されたM-2010搭載型のスパイク風対戦車ミサイル発射機、及び国防発展展覧会「自衛-2021」で登場した同様のスパイク風の艦載型に似ています。トラックは恐らく民生車輌を改造したものと見られますが、具体的なベースは不明です。

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四輪トラックと横向きに搭載されたミサイル(KCNA)

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同様のものと見られる二種類の対戦車ミサイル(KCNA、KCTV)

7.歩兵携帯型対戦車ミサイル

最後に、かなり驚愕したのが歩兵携帯型のロケットランチャーかミサイルのような筒です。発射口は赤い蓋がされており、同じくシンプルな筒状のRPO-Aロケットランチャーとは明らかに異なり、どちらかといえばイスラエルのスパイクSRを想起させます。スパイクSRは2012年に発表され、スパイクシリーズでは最も軽量で短射程の対戦車ミサイルとして知られています。前述のスパイク風対戦車ミサイルに続く、一連のシリーズとして意識して開発されたかのように思えますが、現状では未だに正体は不明です。

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スパイクSRに似た新型対戦車ミサイル(KCTV)

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スパイクSR(https://eurospike.com/spike_sr.min.html)

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