紅濡れの蝶
新シリーズです!あ、ついでにいうと題名は「あかぬれのちょう」って読みます!よろしくお願いします!
マフィアの恋物語です。ほぼ恋です。お楽しみに!
男の唇がかすかに動く。
「————」
女の目が見開かれる。そして彼女はそっとナイフを握った。
そして彼女は大きくナイフを持った手を振り上げた。蛇の耳飾りが煌めいた。
ザッ————————————
「ねえねえ、今日一緒に帰ろうよ」
「いいよぉ」
そっと私は本を閉じる。終業のベルと同時にざわめきだす教室。
目の前の席で一緒に帰るというただつまらない約束を交わしている二人の同級生を見る。きっと彼女たちは言葉の通り一緒に家に帰るのだろう。
「孤蝶」
隣に私よりも身長の低い——いや、私は身長が高い方なので女子にしては長身の同級生が立っていた。
「蝶妃。他の子たちは元気にしてる?」
「はい。黒蝶と聖蝶はいつも通り口論をして問題になったそうです。襲蝶と秘蝶もいつも通りで。それから、また新しい組員を呼んだそうです」
「どんな人?」
私は自分の黒髪を撫でつけながら蝶妃に聞いた。
「成績十位。得意科目 社会。苦手科目 音楽。身体能力。ほどほどにあり。志望理由、教師の秘密情報を持っているためそれを活かしてみたい。以上です。いかがですか?」
高校生らしい制服のリボンをいじっていた手を止める。
「そうね。いいでしょう。その物には聖蝶の下につかせろ」
私はそう言って蝶妃に目を向けた。
「わかりました」
私と蝶妃はかすかに頬笑みを漏らす。
高校を牛耳る陽キャ。その陽キャでも最高に恐れている集団があった。それは『血濡れの蝶』暴力をふるう、不良たちという訳ではない。
ただ、どんな情報も持っていると噂されているのだ。どこで誰が何をしたか。全て知っていると言われている。そして彼女たちの手にかかれば一日にして学校での立場を失うだろう。それほどまでに正確で、誰にも知られたくないような秘密を知っている。
といっても情報ばかり保持しているわけでもない。情報を手に入れるにはリスクと時間がかかる。暴力をふるわないと言ったが、訂正する。あるていどの子猫と遊ぶ程度の力なら使うだろう。
拷問かと思われるほどの苦痛を味わわせる —— 。
集めた情報を的確な判断で使う —— 。
自分たちを狙う輩を全て排除してきた —— 。
裏切りものに社会的制裁を与え続ける —— 。
そしてその最強の四人を束ねる首領 —— 。
首領の補佐を続ける優秀であり首領の代理である —— 。
彼女たちに逆らったものは息をすることすら許されない。そういう集団の名は『血濡れの蝶』だ。
血に濡れた禍々しい蝶。
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