love letter from K. Season7「design」 8. 健康のデザイン
「今年のゴールデンウィークは、やばいです。」とニュース番組のコメンテーターが言っている。人が多くて混みます的な意味なんだろうけど、「やばい」という表現は初めて聞きました。どこか新鮮。そして、混雑を緩和するアイデアも出ないまま、良い連休をお過ごしください~と番組は終了。コンプライアンスを気にして、言いたいことも言えない、こんな情報番組じゃ、本当にポイズン…それこそ、「やばい」のかもしれません。そういえば、昨年9月の連休に、多くの人が郊外へ移動するなら、逆に観光地ではないオフィス街へ向かってはどうだろうか?と実行してみました。こういう過ごし方もかなりアリかなと思っています。よろしければご覧くださいね。
Season6 旅 vol.8「そうだ、連休は」
無意識に
休みを取るのがいつまで経っても後ろめたい日本人のDNAをよそに、休暇先進国のフランスでは地域を3つに分けて分散して休みを取っているそうです。ヨーロッパの生活洋式の変化スピードがウサギなら、カメのような日本は、ノロノロと付いていくだけが精一杯。日本って、世界に比べていつも遅れているように感じてしまうのはなぜでしょうね…。英語が話せないから?小さな島国だから?もしかすると、本当はそうじゃないのをわかっていて「遅れている」と言いたいだけなのかもしれませんし。きっと、慣れてしまって、見落としている日本の美意識って沢山あると思うんですよね。
新幹線に乗っていると、景色がすごいスピードで変わっていきます。街並、山、トンネル、川、また街並、そして田園風景。あんな建物あったっけ?なんて言う暇もなく高速で通り過ぎていくその景色は、何年経っても変わりません。きっと20年前から大体同じ風景を保ったまま。もちろん富士山も。
そんな車窓から、ぼうっと眺めていると「平和な国だなぁ」とつくづく思ってしまいます。
健康
民藝運動の父として知られる、柳宗悦の考えに「健康の美」というものがあります。「健康」という言葉を聞くと、病気にならないこと・ダイエットや食生活に気を使っているなどをイメージしますよね。ただ、彼は「健康」とは「不足がない」ことだと言ったのです。ここでは、モノに焦点があたっていますが、こんな事を記しています。
「飽きのこない美は、つまり使っていて不足がない美なのである。つまり、芸術品として見る美しさよりも、使い手が使うことで味わいを増し、それを長く使い続けることで愛着がわき、手放せなくなるような美しいものが本当の美だということになる。そうした美しいものは、経年劣化に対しても強く、時代や流行に左右されずに受け継がれていくものである。」
(柳宗悦『民藝』第2章「民藝の美意識」より)
そして、宗悦は最後に「飽きのこない美は、つまり使っていて不足がない美なのである。健康な美は、それをもっともよく表わす名と言える。」と綴っています。
何度でも
ここにひとつのグラスがあります。
KOZLIFEをよく知る方であればご存知の、Bodega(ボデガ) グラスカップ。おそらくKOZさんで取り扱いが始まってから5年は経つのではないでしょうか。LLFKでも既に登場しましたし、入荷するたびすぐ売り切れてしまうようで、購入しにくいのであれば話題にする意味も…と、これ以上取り上げなくてもいいかなと思っていました。というのも、KOZさんだけでなく、色んなショップやカフェでとにかく良く見るんですね。この間もカフェでランチをしたら、「また、ボデガか…」と。本当によく会うし、今まで何回使ってきたんだろうと考えながら、グラスで水を飲むのですが、これといった感動はなく、なにも感じません。家にもあるので、使いにくい訳ではないので、まぁ不足はない。
朝起きて飲む最初の水、毎日のランチ、ディナー、打ち合わせ最中。何百日もこのグラスを使ってきました。赤ちゃんだった娘も小学生になりました。不足がないグラスを使う毎日、健康な毎日がずっと目の前にあった事を、何となく見て見ぬフリをしていた僕の目の方が、不健康だったのかもしれません。
こういう立場で、伝える仕事をさせて頂いていると、皆さんにとって新しい・役に立つ情報を気づかないうちに優先してしまう自分がいます。同じ物を何回も紹介するのはショップ的にどうなんだろうと思うけれど、きっと何年も使ってらっしゃる方もいるでしょうし、敢えてもう一度紹介する事ができるのも、僕の立場だからできることなのかもしれません。
ボデガのグラス。
「またか」と思うくらいに良く使いますが、
それは、とても健康な証拠。
そして、それは、美しいのです。
つづく
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