「アフリカの夜」②チラ見せ最高!

退職して、やりたかったこと。それは、ドラマ「アフリカの夜」の文字起こし。私の人生に彩りを与え、人生に行き詰まったと思うときの支えになった、そんなドラマだ。

実際に、パソコンで起こしてみると、記憶と違っていたことがいくつもある。

例えば、一話のトップシーン。礼太郎(佐藤浩市)が八重子(鈴木京香)にプロポーズする雨のシーン。

礼太郎「セ~ノ」
八重子「んっ!(力を振り絞って故障した車を押す)」
礼太郎「(チラリと八重子を見る)」
八重子「(必死で押している)」
礼太郎「(八重子のびしょ濡れかつ、必死な横顔を、かわいいなと思う)」
礼太郎「……結婚しよう」
八重子「(前傾したままの態勢で)……?(一瞬の間の後、礼太郎を見る)」
礼太郎「結婚しよう。俺、今、金ないし、車もボロいけど、結構楽しいじゃないか。きっと幸せになるよ。結婚しよう、道は開かれている……」
八重子「……? ? ?」

大石静「アフリカの夜」第1話冒頭のシーンより

たったこれだけだったんだ!と驚いた。記憶ではもっと長いシーンだと思っていた。
しかし、二話で、八重子と礼太郎のやりとりの続きが描かれている。

礼太郎「そうしなければならないことなんて何にもないんだよ。人間は選ぶことができる。生まれてくること以外はね。今は暗闇でも、明日は見えなくても、道は開かれているんだ、誰の前にも」

大石静「アフリカの夜」第2話より

「アフリカの夜」を文字起こししてみると、ドラマの核になってるシーンが繰り返し回想される。しかも、少しずつ情報が明らかにされる形で。

ステキな女性が始めはキスだけ許してくれないけど、デートを重ねていくとだんだんあんなことも、こんなこともさせてくれる、みたいな、じらしテク。はたまた、ラベルのボレロのような、徐々に盛り上がっていく感じか。


礼太郎が八重子に公園でちりめんじゃこを渡すシーンもそうだ。三話の終りでチラ見せをして、四話の冒頭に続く。そこでも、全部は見せずに、いくつかのシーンを挟んで、八重子の回想という形で、明らかにしていく。じらしてじらして見せてもらった方が、感動する。

礼太郎「住宅展示場のこきれいなモデルルーム、つるつるした表紙の新生活のカタログ、あの頃君が求めていたのは結局それだったんだ……土砂降りの雨の中でのプロポーズ、明日が見えない男との暮らし、そういったものは君のカタログには載ってなかったんだよ……あの時、俺の人生も夜だったし、雨だった。一本映画を撮って、訳の分からない奴らにもてはやされて、自分もその気になって、次の映画を準備して、結局撮れなかった……」
八重子「……」
礼太郎「……だから、雨が降っててよかったんだよ」

大石静「アフリカの夜」第4話冒頭のシーンより

「だから、雨が降っててよかったんだよ」というオチがぐっとくる。

礼太郎「でもね、俺があのアパートに部屋を借りたのは、アフリカって名前に惹かれたからだ」
八重子「……」
礼太郎「君もそうだろ?俺達の再開は偶然じゃなかった」
八重子「……」
礼太郎「あの頃君は、救いようのないバカ女、カタログ女だった……夜だった、雨だった、バカだった……」
八重子「……」
礼太郎「でも、だからこそ、俺達、八年後にあのアパートでもう一度巡り会えたんじゃないのか?」

大石静「アフリカの夜」第4話より

礼太郎、かっこいい!!!かっこよすぎる。
個人的に好きなのは「夜だった、雨だった、バカだった」というセリフ。夜と雨、この二つにバカという違うカテゴリーの言葉を合わせる感覚にぐっとくる。佐藤浩市さんが、このセリフと言うとき、頭を上から下へ勢いつけて言っているのも、最高だ。

結論
チラ見せしてから、徐々に情報を明らかにする

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