「アフリカの夜」㉗人は道を選ぶことができるんです…八重子の決断

ドラマ「アフリカの夜」。このドラマのすごいなと思うところは、訴えたいテーマが一貫して伝わるところだ。

1話のトップシーン、大雨の海岸通りで故障車を押す八重子と礼太郎。このとき礼太郎がいう「道は開かれている」、これがドラマの主題。その主題が手を変え品を変え、何度も繰り返される。

第三話、本当に愛しているなら、その男の条件が変わっても愛し続けないといけないという有香に。

有香「でも、愛ってそういうもんよ……」
八重子「そんな風に決めつけてしまうと、本当に何が自分にとって幸せなのか、見えなくなってしまうと思うんです。私が彼と別れたのは、自分が間違ってると思ったからです。あの時の愛してるって気持ちが間違えだったって気づいたからです。自分が幸せじゃないって思ったから、別れることを決めたんです。誰だって幸せになりたい。そのために、人は道を選ぶことができるんです

大石静「アフリカの夜」第3話より

そう言った八重子。

礼太郎やみづほの言葉で、生きるエネルギーを補給してもらった八重子は、前半のクライマックスで過去のカタログ人間の象徴、火野史郎と決別する。

そして、そこから、殺人で逃亡しているみづほに罪と向き合うよう働きかける。

首を絞められて、命の危険を感じたり

緑から、見逃そうと説得されたりするけど、みづほに自首するよう訴えようと決める。その瞬間。

○礼太郎の部屋・玄関・中(夜)
チャイムが鳴る。
礼太郎がドアを開けると八重子がいる。
礼太郎「どうした?」
八重子「道なんて、ホントに開かれてるの?」
礼太郎「……」
×        ×         ×
部屋の中で『罪と罰』を読んでいる緑。
緑「……!?」
×        ×         ×
八重子「アタシ今、ぐちゃぐちゃなの、どうしたらいいか分からないの」
礼太郎「入れよ」
八重子「八年前の、あの雨の夜、アタシの選択は多分間違ってた
礼太郎「どうしたんだ八重子?」
八重子「でもね、礼太郎さん、これから私がする、私が選ぶ道は、間違えじゃないって信じたいの……
礼太郎「……」

大石静「アフリカの夜」第9話より

八重子は突然思いついたように行動することが多い。みづほが殺人犯と気付いた時、礼太郎のいるミニスカパブに乗り込んで「時効って何のためにあるの?」と聞いたこともある。今回も、突然、礼太郎の部屋に押しかける。そして、言いたいことを言ったらそそくさと帰って行く。この猪突猛進な感じが面白い。

ステキなセリフだなぁとうっとりする。「八年前の、あの雨の夜、アタシの選択は多分間違ってた」からの「これから私がする、私が選ぶ道は、間違えじゃないって信じたいの……」。自分の過ちを認めたセリフがあるからこそ、決意表明が輝く。

内容的には、「夫を殺して罪を償わないのはおかしいと思うから、丸ちゃんのお母さんに自首するように言ってくる」ということ。だけど、それを、「私が選ぶ道」ということで、八重子の成長の物語であることが強調されるし、「信じたいの」があることで、自分の未来に希望を見出しているのが分かる。

キラリと光るセリフ。これも長い間心に残り続ける理由だ。



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