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だんしゃりにゃん

そろそろここに引っ越して来て1年が経とうとしている。小ぢんまりした古めの賃貸マンション。安めのお家賃ながら落ち着いたシステムキッチンに心踊り即決のお部屋。

この1年、バザーで忙しかった時期終了後から本腰を入れて、部屋に合わせて色々なものを断捨離したり新しくお迎えしたりして、快適な我が家を少しずつ作り上げてきた。

最初に決めたのが、気持ちのアガる物を買うこと、使うこと。どこかで我慢を強いる物は新しくても処分も辞さないこと。物が眠る場所はあっても良いが、物が死ぬ場所にしないこと。
ただし、予算はいっぺんには多く取れない。毎月テーマを決めて1箇所ずつ、じわじわと自分好みの使いやすい場所を増やしていき、次はここをこうしようああしようと楽しみを作る。

始めてみて分かったのが、意外と捨てる事も苦にならないということ。捨てるまでの葛藤はそれはもうたくさんあるが、処分した後のスペースを有効に活用できることでもやもやもさっぱり消える。むしろ前より気分が良い。昭和の時代を生きた人間には難しい仕事かと思っていたが、心が喜ぶなら私には合っているのだろう。

だからといってミニマリストになろうとまでは思っていない。ミニマリストの方のブログなどはとても素敵で大変参考になるし学ぶことは多いけれど、自分は違うなここは望んでないなと根っこで思っている部分もある。便利なものには囲まれていたい。

その中でもよく断捨離の候補にあがるシンクの水切りカゴはどうしても私には必要だった。
どうもびしょびしょの布巾がそこにあるのが許せないようで、かと言ってマメに洗うタイプでもなく。出来るだけ乾燥させてから食器を仕舞いたい。電力も使わずに。スペースや手入れの問題と水切りカゴの有る無しを天秤にかけたら絶対に後者を重要視。

そんな理由で、前から持っていた少し大きめのものが冷蔵庫の買い替えでスペースが減ったところでどうもしっくりこなくなったため半分くらいのサイズかつ気持ちのアガるデザインのものを探し変えてみた。ついでに珪藻土トレイを下に敷き排水問題も解決。うん、とても良い。
箱状から網状のタイプに変えたので早く乾くし、見るたびに幸せになるし手間も最小限でズボラな私もこまめに片付ける習慣がついてきたのだ。

よしよし、主婦にとって家事動線がスムーズに行くということは、あらかた全体が良い感じに回っていく流れ。この調子でラスボスである寝室の押入れ内のあれやこれやに着手しよう。忙しい中引越した時に住所を決め切れなかったごちゃごちゃしたモノ達が私を待っているはずだ。

さて、経験上、使うかもしれない、は使わない寄りだ。
使うかもしれない、は私にとってそのモノに対する愛が足りていない。未練だけだ。なのでなんとなく取っておいても住所を決めてあげられなくて存在を忘れるし次に見つけてもいつかのタイミングが都合よく来なければ使うあてがすぐ見つからない。

そんな、かもしれないフック類団体が押入れの中から数日前に出てきた。少し色褪せたりもしかしたら弱っているかもしれないけどまだ使えるから、と思った筈が既に存在も忘れ新しいのを買ってしまっていたりで使わなかったものが各種大量に。

もちろん処分だ。

多少の分別がいるであろうか、チェックしようとテーブルに広げる。その中に、何度か探したはずなのに見つからなかったドアスコープカバーが居た。黒猫と魚の形。魚を横にスイングさせるとドアスコープが覗けるタイプ。

この子を超えるドアスコープカバーは見つけていないため、ずっと朝日の差し込むドアスコープで1年過ごしてきた。何度も何度も探したつもりだったんだけどなぁ、おまえ、ここにずっといたの?と久しぶりにドアにマグネットで貼り付けながら、少し過去に思いを馳せる。

あれは夫の実家に若干不本意な形で同居を始めた頃、何故か引越し荷物からおたまだけが見つからず、私が音を上げて2年弱の同居を解消するまで出てこなかった。物を大切にする義母だったので仕方なく義実家の取っ手の取れたおたまで同居中は乗り切っていたが、引越し後にひとつ買おうと思ったら何故か元々使っていたものが荷物から出てきた。

まるでその期間神隠しにでもあっていたかのように。確かに探したはずなのに出てこなかったのは何故だかわからないけれど、あの時の感じだ。

今も現役で毎日頑張ってくれているおたまもシンプルでお気に入りの物。実は私の物の管理の悪さが招いたことかもしれないけれど、おたまの時と同じだしこのにゃんこの名前はたまにしようと決めて、そっと黒猫の位置を合わせた。

押入れが片付いたら、ずっと気にかけてきた大々的な断捨離と快適空間作りの旅は一旦終わる。そこをクリアしたら、片付けられない女の看板は半分下ろしても良いかもしれない。あとは小さな断捨離を重ねながら、もうしばらく過ごす予定のここの生活を存分に楽しみ、また次の目標に向かっていこう。


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