医療事務が脳梗塞で入院した話・その19

検査の話ばかりしていたけれど、実際は、入院生活の殆どをリハビリをして過ごしていました。

いや、だって、脳梗塞と言えばやっぱ、リハビリじゃないの?

いったいこのおばちゃんのどこがどう脳梗塞なのさ、てなくらいには見た目患者とはわからない感じの患者だけど。

1Fの売店に行く許可がなかなか出ないのはなんでやろ、とか思っていましたよ。

今ならわかるよ、意外にふらついて歩いてるんだよ。ていうか、1年経ってもふらつきが治らんよ。むしろ入院中よりひどいかもしれんよ。

いや問題はそこじゃない。

朝イチで運動療法に行きます。PT1さんと一緒にあれやこれやの運動をします。運動機能は特に問題ありません。この頃は結構まっすぐ歩けてました。

午後だいぶ過ぎた頃には作業療法に行きますが、OT1さんとナゼか運動をします。なんか作ったりするんじゃないんだ?とか思いはしましたが、ペットボトルで作られたダンベルをせっせと上げ下げしたり、棒体操したり、ボール投げしたり、してました。体操、地味に大事。

運動療法と作業療法の間がかなり空いていますが、ここです。この時間は、言語療法の時間でした。昼食前にやって、昼食後にもやって、つまりこの言語療法に一番時間を取ってありました。

当たり前です。わたし、飲み込みのリハビリの為にここにいたのです。

で、SCU及び一般病棟担当の言語療法士さん、ST1さんが、このお姉さんが、かなりガッツリやってくれました。

クチを大きく開けて閉じ、開けて閉じ、から始めます。

さすがに棒体操もダンベル運動もしません。

クチを大きく開けて閉じ、開けて閉じしていると、もっと大きく開けてと言われます。わたし、ここで言うのもなんですが、20年以上市民合唱団に所属していて、他の皆さんよりは大きく口を開けるという行為が多めの生活だったと思うんですが、ここでは、発声練習並みの、いやそれ以上にもっと大口を開けることを要求されます。

しかし、やっている内に気がつきました。わたし、クチを大きく開ける事が出来なくなってました!! 純粋にヤバイです。

合唱団で唱っていたと言っても、ここ数年は仕事が忙しすぎて練習に殆ど行けてなくて、ほぼ昔取った杵柄で年末公演を乗り切ってきていました。毎年年末にベートーヴェンの第九交響曲と荘厳ミサ曲の2曲を50年ほど唱って来ましたとかいう、えらく無謀な合唱団で、一時期その荘厳ミサ曲を唱える人は暗譜で唱えという指令があった頃に暗譜隊の一員だったので、本当に昔暗譜した経験だけでなんとか唱っていました。ええ、実は楽譜もそんなに読めませんので音名とか書き込みしまくりですし、移動ドでしか読めません。しかし逆にそれを暗譜するという訓練のおかげで、他の曲が来てもざっくりとなら唱えるようになる、というね…。

わたしの合唱歴はさておき、この時は2月に一度ステージがあって、それ以降一度も練習に行っていませんでした。なので、2ヶ月ほど全然声を出していなかったわけです。

で、リハビリですが、クチを開け閉めの次は、舌を出したり引っ込めたり、舌を左右に動かしたり上下に動かしたりするんですが、これもかなりキツイです。こんなのが!とか思いますが、こんなのがキツイです。真面目にやると、舌の根元が筋肉痛としか言えないような状態になります。前にも書きましたが、正に舌の筋トレ、でした。

けれど、これはわたし、自主練とかはさぼりつつも、リハビリの時間中はそれなりに頑張りました。というのも。

わたし、この20数年ずっとソプラノパートを唱ってきたのです。

ソプラノは、殆ど五線譜の上の方の音、なんなら五線譜を上にはみ出した音ばかりを唱うのです。五線譜の下の方の音を出せと言われたら「音が低いから響かなーい!」などと文句を言うような人種です、アマチュアのソプラノって。

そのわたしが、五線譜の上の方の音が出せなくなっていました。

第九でまったく声が出せないとか、わたしの合唱人生、最大のピンチ!

第九ほど高音きつくない荘厳ミサ曲だって、じつは最高音は第九の最高音より高いところにあるのですよ。グロリアのフーガ到達点、みたいな自分的に結構盛り上がるところなんですよ。

舌咽神経が麻痺して、声帯が片側だけびろんびろんに緩んでいて、そう言う状態だと、高音はもちろん出ません、なんなら普通に喋る声もかすれるというね。

五線譜を上にはみ出ると、ほぼ唱えねえー。

ソプラノのアイデンティティー、この時点で大崩壊!


いくら腹に力を入れても、声帯が緩んだら出したい音に当てることも出来ないのねーという感じです。個人的に、非常にヤバイ。

もしこのまま高音が出なくなったとして、今更アルトにパート変更出来るんだろうか。もし仮にパート変更したとしても今更アルトの暗譜とか無理。

アルトに必要な声域をちょろっと出してみましたが、もともと出ない声域が出るわけはなく、要するに声帯が緩んでしまってはどの音域もダメなのでした。そもそもソプラノは訓練で出来るようになりますが、アルトは持っている物がアルトでなければ本当のアルトではなく。まあ、殆どのアマチュアのアルトさんは、高音が出ないからアルトに入ってますって感じなんですよ。

ソプラノが2パートに分かれるときはわたしは下のパートを唱いますが、それとて上の音が出ないからではなく音が取れるから人数の少ないパートに入ってるだけで、まあ普通にアマチュアによくいる程度のソプラノだったのですが。

これ、リハビリで治るとかあるものなら、治った方がいいに決まってる!


リハビリで、普通にリハビリメニューで歌を唱ってって言われました。

かーえーるーのーうーたーがー、きーこーえーてーくーるーよー。

ほぼ、童謡でしたが、このくらいの音域なら出るので、気がつかなかったのです。

その時に、合唱団に入っててーという話になり、普段唱ってる歌を唱ってみたら、まあ、全然声が出なくて、こんなことに。

ST1さんが最初のリハビリの時に「あー声かすれてますねー」とか言っていたのは覚えていますが、それがまさかこんなことになっているとは、しばらく気づいてもいなかったのでした。

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