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地元を舞台に小説書いてみた。

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高梁川志塾の成果物として書き始めた作品たちを公開します。 たくさんの人に読んでもらえるように、できれば愛してもらえるように、書き続けます。
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2021年1月の記事一覧

【Episode 3】ひとりさみしいときは

ひとりさみしいときは 昨日、恋人に別れを告げられた。 「もうだめだと思う。だから、今日でおしまい」  そんなどこにでもある言葉だけで、わたしたちが一緒に過ごしていた2年半はあっけなく終わった。なぜか、涙は出なかった。現実感がないままに終わってしまったから、今はそんなものなんだろう。  わたしは、恋人に何を伝えていいかわからなくて、とりあえず「ありがとう」と言った。電話が切れてから、ひとり、こんなわたしが彼女でごめんね、と呟いた。  そんな日の朝はとても暗い。窓の外を見る

【Episode 2】神宿る場所

神宿る場所 栄駅の裏側にある石の置物が、今日も僕のことを見つめているような気がしていた。あれはどうやら彫刻作品で、なんでも「竜神」という名前らしい。たしかに竜に見えないこともないが、僕には神が宿っているようには見えなかった。  高校へ行くためには「竜神」の前を通らなければならない。茹だるように暑い8月の朝を自転車で駆け抜ける。朝といえども気温は高く、自転車を前へ進めるたびにじんわりと体に汗が滲んでくる。こんなに暑い夏は嫌いだ。 家の前に置いている植木鉢に水をあげている人が僕

【Episode 1】東雲を待つ

東雲を待つ「おはよう」の一言が連れてくる朝を 今日もひとりここで待っている 人と人とをつなぐことば 木と木がつくりだす黒いかげ 車がとなりを通るときの地面のゆれ 生活のすきま わたしたちの暮らしのそば すぐ近くに朝はある 今は見えていないだけ いつか東雲がこのセカイを包み 朝がやってきたそのとき だれかと「おはよう」と笑い合えるような そんな場所でありますように 写真について 写真は、水島臨海鉄道栄駅のすぐそばにある「朝」という彫刻作品の一部分です。制作年は1994

【Episode 0】4月のひとりごと

4月のひとりごと 窓から見える煙突に、目を瞠った。  吸い込むと苦しささえ感じる空気が、わたしは、あまり好きではなかった。  でも、わたしは、このまちのことを、何も知らなかった。  小学2年生の春、このまちに引っ越してきた。家の窓から見える景色に大きな煙突があることを、とても新鮮に思ったことを覚えている。引っ越してくる前に住んでいた場所とは正反対のようなまちだ、と幼いながらに思った。前のまちには、煙突なんてなかった。大きく息を吸い込むとすっきりとした空気の流れ込むまちだった