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【意味がわかると怖い話】『正夢』解説

この記事は、意味がわかると怖い話の解説記事です。まずはこちらの本編を先にご覧ください(読了時間一分ほど)。

一見すると、同居する男女のなんでもない日常を描いているように思えます。

幸せそうな彼氏の寝顔を見て眠りにつく「わたし」。翌朝、彼になんの夢を見ていたのか尋ねると、彼は「きみとひとつになる夢だよ」と答え、わたしは顔を真っ赤にする。

そんなふうに読み取れます。ところが、このお話にはおかしな点が二つあります。

一点目。

口をぱくぱくと動かしているところを見ると、夢のなかでごちそうを食べているようだ。

寝顔からするとなにかおいしいものを食べる夢を見ているようですが、彼は「きみとひとつになる夢だよ」と言っています。「わたし」が見た寝顔と彼の答えが矛盾しているのです。

二点目。

彼は野菜を切る手を止めた。付け合わせの野菜みたいだった。まな板の横に出してある皿は一枚だけだ。

これも少し引っかかる記述です。彼と「わたし」の二人分あっていいはずなのに、用意されている皿は一枚だけです。

以上の二点から考えると、ある恐ろしい結末にたどり着きます。

「きみとひとつになる夢だよ」

この彼のセリフ。

「きみとひとつになる」というのは、食すことで「わたし」と一体になることを意味しています。彼は「わたし」の肉を食べる夢を見ていたのです。

夢を見ているときの彼の表情は、ほころんでいます。夢のなかで彼は嬉々としてその行為に及んでいるようです。常習犯でしょうか。その夢はタイトル通り「正夢」であり、彼はこれから実際に「わたし」を食べようとしています。彼の手に握られた包丁によって、「わたし」は真っ赤になったのです。

解説を読んだ後に、本編をもう一度読み返してみてください。言葉の解釈がまったく変わってくるはずです。

最後までお読みいただきありがとうございます。