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超短編小説集

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短くて、意外な結末。全力投球の厳選ショートショート集。
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2020年9月の記事一覧

犯人はあとがきにいる【ショートショート】

ーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーーー あとがき 親愛なる読者の皆様へ 著者の天津川侑吾です。 まずはこの『犯人はあとがきにいる』を手に取ってくれたことに謝意を述べたい。 そして編集の橋本君をはじめとした関係者各位にもお礼を申し上げる。 「あとがきを袋とじにしたい」という私の要望を(苦悶の表情を浮かべながら)受け入れていただいたお陰で、このような特殊な装丁の小説が完成したのだ。 まあ、彼らは二百篇を超える私の著作でたいそう儲けているだろうから、このくらいの注文は呑

誰かいる【小説】

以前に投稿したものを修正していたら、気づけばほぼ全文を書き直していたので、再投稿しました。小学生の主人公が庭に不審な人影を目撃するのですが、それを父親に伝えると事態は思わぬ方向へ……。 お父さんがリビングでパソコンとにらめっこしていた。お母さんは買い物に出かけているので、ぼくとお父さんの二人きりだ。 ぼくはお父さんの向かい側に陣取った。ランドセルを開き、テーブルに算数の宿題を広げたものの、ぜんぜん集中できなかった。窓の外が気になってしかたないのだ。 ぼくはたびたび塀の外

徘徊【小説】

真夜中にガラガラと玄関の戸が開く音がした。まただ。わたしはうんざりしながら布団を出た。 玄関に行くと、思った通り、戸の前におじいちゃんの丸まった背中が見えた。外に出ようとしている。 「だめよ」 そう声をかけたが、おじいちゃんはわたしのことなど気にもとめず外の暗闇に消えてしまった。 ママを呼ぼうとも思ったが、その間におじいちゃんがどこへ行ってしまうかわかったものではない。おじいちゃんは認知症なのだ。 急いで追いかけ、敷居でつまずいてあやうく転びそうになった。なんとか体