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プリウスの正しさとミステイク

半年ほどnoteを放置しておりました。その間にTwitterがXになったりと世の中は激動しており、私も趣味が写真から釣りに変わったり、仕事ではUXを実現するデザインシステム(行為のアトミックデザインとか)に取り組んでいたりと大きく変化していました。

久々の記事は、先日信号待ちをしていたときにプリウスが信号無視をし、その運転手の顔が自信満々だったのを見て感じたことを書いてみようと思います。


プリウスは正しさの象徴

ニュースでは気象変動や環境問題が取り上げられない日が無いほど日常的なテーマになっています。その中で環境に配慮したプリウスは社会性のある大人の「正しさ」の象徴のような存在です。

これまでもカローラのような正しさもありましたが、家族を大切する身近で少し消極的な視点でした。それに対してプリウスは「家族よりも地球環境」って感じで正しさのスケールが大きく感じられます。

先にあげた信号無視のプリウスでは、信号が変わるタイミングで交差点からかなり離れたところにいましたが「青(黄色)だ、行って良い」と運転手は考えましたが、実際に交差点に差し掛かった時には信号は赤になっていました。
一度自分がGOと判断したことを運転手は否定することができず、自信満々で通過していきました。(私にはそのように見えました)

この現象の中に「プリウスの持つ正しさ」が、マイナスの効果を持ってるのではないかと考えました。つまりプリウスに乗っていることによって運転手の正しさが補強され、一度決定した自分の判断を修正することが出来なかったのではないか。さらに赤信号で行ってしまっても何秒か前に確認した青信号しかイメージになかったのではないかと思うのです。

補足:
実際にはプリウスは「ヤンキー車」になっていて、堂々と信号無視するようなワルい人が乗っていた可能性はあります。その場合にはプリウスを正しさの象徴と考えている私の感覚がズレていることになります。

思い込みが生み出すミステイク

失敗にはスリップとミステイクの2つのパターンがあると言われてイいます。スリップは頭では正しく理解(判断)できているのに操作を間違えてしまう状態です。一方ミステイクは理解を間違える「誤解」によって引き起こされるものです。

スリップは頭では正解を分かっているため間違いに気づきやすく重大化しにくいのに対して、ミステイクは問題が発覚するまで本人が気づけず重大化する可能性が大きいと言えます。

プリウスの例では、あるタイミングでは正解(青信号でGO)でしたが、時間がたつことで不正解(赤信号)になりました。これは思い込みによるミステイクの一種です。

知識や認識レベルの低さから最初から誤解してしまう場合もありますが、最初は正しかったのに状況の変化で誤解に変わる場合に、その変化に気づける人とそうでない人に分かれるのではないかと考えています。

自分が正しいと自信がある人は、間違いに気づける情報がいくつもあるにも関わらず、それを受け入れられない(認識できない)傾向がありそうです。


正しい人がミスに気付きにくい

自分が正しいと自信がある人は、多くの場合は正しい行動をしていますが、何かの原因で間違った認識をしてしまうと、そのことに気づきにくいという話を書きました。

正しいことをして生きてきた人は、歳をとって認知機能やテクノロジーに対する知識という面で弱くなってきても、それを受け入れる気持ちを持ちにくいのかもしれません。

プリウスによる暴走事故のいくつかは、このことが影響していないでしょうか。たまたま思い込みしやすい(自分が正しいと思っている)人が選びやすいクルマであることから、結果的にニュースになるような大きな事故が多くなっているという仮説です。


心理的安全性とエラー

心理的安全性という言葉を聞いたことがあると思います。これは会社などの組織において多様な意見を活用するために上司一人の意見にならないように設けた経営テクニックの一つです。もちろん人権問題として使われる場面もありますが、それよりも組織が正しい行動をとることで大きな事故や事件をおこさせない効果に着目します。

以前NHKで放送された「エラー 失敗の法則 真相 ハドソン川の奇跡」では、機長が自分の思い込みに対して副機長の意見をどのように扱うかによって事故の結末が大きく違うことを示しています。

航空機の機長だけでなく、医療でもトップドクターがいかにチームと関わっていくかが医療事故に対して重要な鍵を握るはずです。


AIとの対話でミスに気付く

クルマの運転のように一人で重大な操作をおこなう分野も沢山あります。最近では「ワンマン」バスだけでなく電車にも広がってきています。これは監視カメラや様々なセンサーや自動化があってのことですが、どれだけ情報が豊かになったとしても判断する人間が一人ではやはり思い込みによる問題は避けられません。

そこで期待されるのがAIによるアシストです。従来の道具や機械は人間の操作通りに動くことが良いことだとしてきました。それに対して十分に成熟したAIでは、人間の期待や目的を理解してその達成のためには、人間の操作に介入したり、意見を言ったりするようなアシストがおこなえるようになります。

私は長年UIデザインをおこなっていますが、普通のUIをデザインしながらも、いつの日か人間と対等な人格をもったAIを含む「iUI(インテリジェントUI)」に取り組めるように準備を進めているところです。

・・・

みなさんはこの記事を読んでどんなことを感じましたか。実際にプリウスに乗っていて気分を害した人がいたらごめんなさい。
環境問題と信号無視という、一見関係なさそうなことも「人」を通して考えることで何かが見えてくるかもしれません。今回はそんなお話でした。

また気が向いたら、書いてみようと思います。



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