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撮影と設定を分離する。新しいデジカメUIの方向性

最高な写真は撮影者と被写体の時間と空間が一致した瞬間に生まれます。モデルをスタジオに呼んで完璧なセッティングをしたとしても気持ちの波が一致しなければ何かを伝えるような写真は撮れないということでもあります。

それは偶然であったり引き出されるもので、一瞬の出来事でありその瞬間にシャッターを切ることが大切になります。

デジカメでは「撮影→確認→設定」というサイクルを短時間に回すことで失敗を防止したり、思い通りの写真を手に入れる易くなりましたが、このサイクルの確認(再生モードに切り替え)、設定(メニュー操作)が撮影行為に入ることで、観察や撮影への集中が阻害されているのではないかという意見がでてきました。

つまりそれらを排除し「観察→撮影→観察→撮影」というサイクルへ変えることで撮影チャンスを倍増することができるという訳です。

さらに設定を追い込まないことによって、変化する状況との微妙なズレが発生し偶然性による作品につながるという意見もでてきました。

この2つの文脈は現在のカタチのデジカメが世に出てから20年が経過しその作法がスマホに引き継がれる中で「カメラとは何か?」という問いの中から出てきたものです。たぶん私たちに何らかの変化を求める空気があるのだと思います。

背面モニターを隠す

富士フイルムのX-Pro3は背面モニターを隠してしまうことで、撮影設定だけでなく画像確認も撮影中にやりにくくして被写体に集中できるようにしようとしています。

想定した作法以外のことが起き、それに対応しようとするとUIが破綻して操作が煩雑になるという課題を内在させていますが、対応しないことで起きる「偶然性」の価値においてはフイルムに近づいているため、人間の意識を超えた表現が生まれる可能性があります。

撮影体験が後悔ではなく「納得」になるのかは、実際に自分で使って見なければ分かりませんので、長期に試す機会ができればぜひ使って見たいと考えています。

設定をスマホでおこなう

上のX-Pro3と対極にあるキヤノンが提案する新スタイルのデジカメが「inspic rec」です。

カメラ単体では細かな設定を確認することも変更することもできませんが、スマホとペアリングすることで設定を変えることができるようになっています。

子供などがターゲットであり、何かを設定すること自体の必要性が少ないこともありますが、このような構成によって大人が外部から設定を変えるという使い方もできるため一種のチームUIになっているという見方もできます。

この機種としては多くの設定ができる訳ではありませんが、もしこの上位機種が出てきたとしたらUIの考え方として面白いものになるような気がします。

「全部撮り」から「瞬間撮り」へ

ライトフィールドカメラやライフログカメラのように空間や時間を丸撮りする方向のカメラがデジカメの進むべき方向だと考えられ、360度カメラや自動撮影カメラ(ドローンカメラ)の普及してきました。ところがそれに相対するように人間の行為によって瞬間を切り取るということが価値を持つようになったと考えることができます。

私が考えているデジカメUIでは、再生確認する行為や設定する行為をもっと撮影と一体化したものにすることで、フィルム時代に先祖帰りしなくても撮影するという体験を統合化できると考えており、それはVR/MR技術をデジカメUIに応用することによって実現するものです。

さあ、来年はオリンピックイヤーで、デジカメ20年の集大成の年。そして新しいデジカメの始まりの年になるはずです。

メーカーでは既に2020年に発売される機種の仕様は決定してしまっていますが、私たち消費者がどんなデジカメに興味を持ち購入するのかはまだ様々な可能性が残されています。どんなカメラが生き残っていくのか怖くもあり楽しみでもあります。

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