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今年のGOOD DESIGNからカメラ業界の変動を考える

去年に引き続きGOOD DESIGN賞の受賞製品の中からカメラ関係を抽出し、カメラ業界で何が起きているのかを考えてみたいと思います。

去年もベタ褒めしましたが、GOOD DESIGN関連の情報提供が素晴らしく、日本のデザインのレベルを上げることに貢献しています。シェアや売り上げではなく良い製品やデザインを実現する努力について評価が得られることはとても重要なことだと思います。

ではさっそくカメラ業界関連を見ていきましょう。


今年のトップはSIGMAの「Iシリーズ」

GOOD DESIGNは優れた製品に与えられるだけでなく、その年を代表するような製品を特別に選んで表彰しています。一番上は「大賞」で1製品のみが受賞できます。今年の大賞選考は11/2におこなわれるので楽しみに待ちましょう。

その下が「ファイナリスト(5製品)」「金賞(20製品)」があります。残念ながらカメラ関連では受賞はありませんでした。


その下にあるのが「グッドフォーカス賞」で4つのテーマで3製品づつ選ばれます。SIGMAの「Iシリーズ」はこちらの技術・伝承デザイン部門を受賞しました。(おめでとうございます!)

このIシリーズにはレンズに魅入られてカメラを買うという現象も起こり得ると思えてしまう魅力がある。・・・カメラが先かレンズが先か、そのような議論を聞いたことはないが、さもありなんと思わせる。
(審査員の評価から一部引用)

審査員のコメントはレンズがカメラを周辺機器としていくような新しい世界への予言になっています。オール金属の真面目なモノ作りにマグネット式のレンズキャップというギミックを組み合わせ、その動作が撮影のON/OFFの所作としてレンズへのいたわりにもなっているように感じます。

真面目に写りの良いレンズを作っても撮影時にそれを感じることはほとんどできません。撮影時のワクワクをレンズが盛り上げるために必要な体験要素が金属外観とレンズキャップだったわけです。


プロ・シフトが進んでいる

上位の特別賞の下に「ベスト100(100製品)」があり、それ以外が通常の「グッドデザイン」受賞となります。今年は1608件の受賞でした。

ベスト100には、カメラボディとして「CANON EOS R3」や「FUJIFILM GFX100S / GFX50sⅡ」が入ってきています。


他にも映像制作用カメラの「SONY  Cinema Line VENICE/FX9/FX6/FX3」、ベンチャーが開発した「Kandao Obsidian Pro」というパノラマカメラが入っているもの一時期の素人的な存在としての映像配信ではなく、プロとしてしっかりとした映像を製作する方向へシフトしてる様に見ることができます。


さまざまな状況でプロフェッショナル・クオリティの映像を撮影するためには、それぞれに特化したカメラが必要になってきます。つまりまだ手が付けられていない状況を見つけ出し、特別なカメラを開発できればベンチャーであってもしっかりと存在感を示すことができるということです。

逆にこれまでのカメラのイメージを引きずっている製品は、なかなか特別賞まで届かないというのが今回の結果です。SNSなどで話題になった「NIKON  Z fc」や「OLYMPUS PEN E-P7」のようなクラッシックなテイストというものがチャレンジングなデザインでは無いと受け取られているということです。

CANONに対してNIKONは、またFUJIFILMに対してOLYMPUSは、新しいカメラのスタイリングを作り出せていないように思います。そういう意味でカメラメーカーの中でもデザインへの取り組みの差が大きく分かれてきたのかもしれません。

・・・

レンズメーカーがカメラメーカーの上を行き撮影体験の主要な所作を生み出すようになり、またカメラメーカーの中でも新しいことにチャレンジしているところとそうでないところが可視化された受賞発表となりました。


追伸:
受賞企業の中で3年連続で富士フイルムが最多受賞になったみたいです。医療機器から放送レンズ、一眼カメラまでハード/ソフトの両方で取り組んでおり本当に凄いことですね。

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